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黒歴史バトル 〜お前なかなかの中二病患者だな〜  作者: 平ミノル


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第7話 黒瀬カイ……ドンマイ。

観客席からの投げ銭が止まらない。


歓声がリングを包み込んでいる。


それに気分を良くしたトランプマンは、拳を振り上げながらしゃべり出した。


「みろ、この歓声を!観客は分かっている。誰が勝つか、もう知っているんだ」


ワーワーと、悪魔たちがエールを送る。トランプマンは、カイを指差した。


「あの男は弱い。とても弱い。見ていれば分かる」


これまで黙って聞いていたカイだったが、この一連の煽りに激怒した。


「黙って聞いてりゃいい気になりやがって! おい、オッサン! ぶん殴ってやる!」


カイは拳を握りしめて殴りかかった。だが、意外なことにトランプマンは軽やかにカイの攻撃を躱した。


それどころか、カイの腕を掴んで投げ飛ばしたのだ。


「ああっ、そういえばこいつ、超人だったんだ!」


投げ飛ばされたカイは、リングの上で仰向けに倒れた。


そこへトランプマンの、フライングボディアタックが炸裂する!


「食らえ!メキシコの高い壁!」


「ぐはぁっ!」


カイの顔が苦痛に歪んだ。


するとトランプマンは得意げにカイの髪の毛を掴んで持ち上げた。


「アメリカに、そしてこのリングに――再び偉大さを取り戻す!」


トランプマンはそう言うと、もう一度飛び上がってフライングボディアタックをする。


「食らえ! ホルムズ海峡の狭間!」


「グホーッ!」


それを見て、アナウンサーが叫んだ。


「おーっと! トランプマン!同じ技なのに、技名を変えて来たーっ!」


観客席からどよめきが走った。


お笑いの悪魔と、偽りの悪魔から投げ銭が入った。


「くっそう、調子に乗りやがって!」


カイは苦しげな顔をしながら、コーナーポストへ顔を向けた。


「おい、ベルゼ!」


カイがベルゼの名を呼ぶと、彼はセコンドの脇から姿を現した。


「どうしましたか? カ、カ……」


「カラノスメラだ」


「カラノスメラ!」


ベルゼ課長は笑顔を見せた。


「ベルゼ……俺は奴に勝ちたい。なにか切り札はないのか!」


するとベルゼ課長はニヤリと笑った。


「今の状況を覆すのはかなり厳しいです……ですが……逆転できないというわけはありません」


「どうすればいいんだ?」


「借金ですよ」


「借金??」


ベルゼは頷く。


「とりあえず、トランプマンに負けないだけの投げ銭を私が用意しましょう。あなたはそれを魔力変換し、奴らを打ち破るのです」


「しかし、お前に借りた投げ銭はどうやって返済するんだ?」


「そこはあなたの腕にかかっていますよ。リングであなたが派手なパフォーマンスをする……。それを見た観客から大量の投げ銭が入れば、それで返済すればいいわけです」


「じゃあ、もし客受けしなかったらどうするんだ」


「そうなれば、借金は決勝戦に持ち越しですな」


カイは唸った。


「くそう……しょうがねえ……ベルゼ! 投げ銭を融通しやがれ」


「はい、毎度あり!」


すると、たちまちモニター上に投げ銭の残高がはねあがった。


カイはそれをすべて魔力に注ぎ込む。すると正面の大きなモニターに、謎の紋章が浮かび上がった。それは直線と曲線を組み合わせた図形のような印。


「あれは、伝説巨人兵イオデンの紋章!」


すると、悪魔の中から動揺が走った。


動揺の悪魔から投げ銭が入った。


カイの体が輝き始めた。


「おお、無限のエネルギーが俺の体に流れ込んで来る!!」


するとベルゼ課長が大声を上げた。


「何をのんびりしているんですか!カ、カ……」


「カラノスメラだ! いい加減に覚えろよ!」


「カ、カラノスメラ!」


ベルゼ課長は真剣な顔つきでカイを見た。


「今のうちに、いつもの必殺技を喰らわすのです!」


「おお、合わせ技というわけだな!!」


カイは目をギラつかせた。そして顔を覆うように手のひらで隠すと、ニヤリと笑った。


「イオデンの無限エネルギーを糧として……俺の異能が進化を遂げた……!』


カイは大きく股を開いて半身になると、両腕を左右に開いた。そして、激しく腕を交差させた!


「虚空断裂斬・超ッ!!」


虚空断裂斬とは……カイが考えた必殺技で、どんな物理的に不可能なものでも切断してしまうという技だ。超というのはそのイオデンエネルギーによる強化版である。


凄まじい閃光が、トランプマンへ飛んだ。


その直後、リングが崩壊した。


気がつけば、虚空断裂斬・超によって会場が真っ二つになっていた。


「おお?」


桃瀬も床に倒れて気絶している。


俺は拳を構えて周囲を見渡したが、悪魔たちも逃げ出して、投げ銭は入って来なかった。観客のいないリングの上で、レフェリーが、静かにカイの勝利宣言をした。



次の日。


昼休みに、カイは桃瀬から屋上へ呼び出しを受けた。


カイが屋上へ上がると、なぜかベルゼがフェンスにもたれて待っていた。


「なんでお前がいるんだよ」


「野暮用です」


カイはベルゼをキッと睨みつけた。


「カイ君……」


呼ばれたカイが桃瀬に顔を向けると、彼女は涙を流しながら頭を下げた。


「カイ君……ありがとう。私にエリクサーをくれて……。私ビックリしたわ。学校に来たら、机の中にエリクサーがあるんだもの……」


カイは髪を掻き上げながら、桃瀬に背を向けて、遠くの雲を見つめた。


「別に大したことじゃねえよ。俺の目的はあくまで優勝だからな。俺にはエリクサーが必要なかっただけさ」


カイはそう言うと、フッと顔を伏せながら微笑む。そしてチラリと桃瀬を見た。彼女は目をうるませながら、カイを見つめている。カイ心臓が大きく鼓動しはじめた。


(あ、あれ? もしかしてこの展開って!?)


カイは人生で未知の状況に直面していた。


「それにしてもどうして……どうして私がエリクサーを必要としているとわかったの?」


「そりゃ……見ていればわかるさ。桃瀬の必死さ……お前はこのエリクサーを求めているって一発でわかったぜ」


「そうだったんだ……私、そんなに態度に出てたのね……」


そういうと桃瀬は顔を上げてカイの顔をジッと見つめた。カイが振り返ると、桃瀬の瞳には涙が溜まっていた。


「良かったな……それで……身内の方なのか? その、エリクサーを必要としている人は」


すると桃瀬は笑顔を見せた。


「ううん、身内じゃないんだけど……私の大切な人。まあ、カイ君だから言っちゃうけど、私の彼氏なの」


「えっ?」


「えっ?」


俺たち2人は見つめ合った。


桃瀬は微笑んだ。


「ありがとう……私、今回のことは一生忘れないわ」


屋上に、冷たい風が通り過ぎた。


その時ベルゼが、カイの肩へそっと手を置いた。


「ドンマイ……」




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