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黒歴史バトル 〜お前なかなかの中二病患者だな〜  作者: 平ミノル


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第6話 アメリカン・フィニッシュ!

「赤コーナー! 99パウンド! 必殺技の名前が長すぎる! ももせーーひかーーりーー!!」


「青コーナー! 魔女っ子に脳をやられたオトコォ! くろせーーかーーーいーーー!!」


俺は大声でセコンドに抗議した。


「誰が脳をやられてんだよ!」


因縁の対決ということもあって、俺たちはマント姿で登場させられた。


お互いの、最後の切り札が、コスチュームでネタバレしないように、という主催者側の配慮である。


「なお、この第二戦に勝ち抜いた勝者には、運営よりエリクサーが送られます」


主催者側のアナウンスにより、観客席が盛り上がった。それを聞いて俺は思い出した。


「そうか……桃瀬は2回勝ってエリクサーを手にいれたかったんだな」


俺は桃瀬をチラ見した。


桃瀬はコーナーポストに両肘を乗せて、不敵な笑みを浮かべながら笑った。


「昨日は昼からどこへ行っていたのかしら?学校をサボって特訓? その努力が無駄にならなきゃいいけど」


それを聞いてカイは、ハマグリのように大きな口を開けた。


思わず真実を語りそうになったが、かろうじて言葉を飲み込んだ。


「うるせえ、後でボコボコにされて、泣くんじゃねえぞ!」


カイはそう言うと、身に纏っていたマントを投げ捨てた。


それを見た桃瀬は驚いた顔を見せた。


「あなたその恰好!」


カイはフフフと笑った。


「どうだ驚いたか」


カイは鞄からマスクとヘルメットを取ると、頭に装着した。


それは、起動兵士ガンダルフの主要キャラ、シャー・アズナブルズの衣装だった。


「フフフ、雑魚とは違うのだよ、雑魚とは……」


それを見た桃瀬がキッと睨んで来る。


「あんた、安全パイを狙ってきたわね!」


「へへん、悪いか?」


俺は腕を組んでフンと鼻を鳴らした。


「黒歴史という観点から言えば、機動武闘伝EFGガンダルフの方が適しているような気はしたのだが、やはりここはファースト・ガンダルフで勝負させてもらった!」


「そんなこと言って、EFGガンダルフのこと知らないんでしょ?」


「ばぁか、そんなことあるか」


カイは両手両足を広げてポーズを取った。



「俺の拳が真っ赤に燃える!勝利を掴めと、泣き叫ぶ!ばぁく熱!ゴールドォ、フィンガァァァーッ!・・・・・バットォ、エンドォッ!」


カイは決めポーズをする。


「鳴りやがったッ!鳴りやがったぜ!!待ちに待ったガンダルフ・ファイトのゴングがよぉ!!」


「まだ、ゴングは鳴ってないけど」


桃瀬は鼻で笑った。


「カイ……あなたまだ気付いてないのね? 見てごらんなさい。会場の冷ややかな空気を」


「何?」


会場にいる悪魔たちを見回すと、そこそこ良い感触はあるものの、盛り上がりに欠けるような気がした。


「ハッ! 投げ銭もない……これは一体……?」


すると桃瀬がカイに向かって指を差した。


「あなたね、ガンダルフのコスプレをしても、羞恥の悪魔の心は動かせないわ」


「ああっ、そういうことか!」


「支持率の高いアニメはもはや、黒歴史ではない!」


「ううう、認めたくないものだな……」


カイは桃瀬を睨んだ。


「あなたもよくよく運のない男ね」


すると桃瀬が腕を組みながら鼻で笑った。


「カイ……あなたには覚悟が足りなかったのよ。あなたは私に負けたんじゃない。羞恥心に負けたのよ」


「ううっ、偉そうに!そういうお前は何を見せてくれるんだ! さぞかし立派な黒歴史を見せてくれるんだろうな!」


「ふふふ、当たり前でしょ……私はこの戦いに命を賭けている」


桃瀬はそう言うと、右腕を上げた。


「始めて……」


桃瀬の合図で、スクリーンの放映がスタートした。


するとそこには、小学5年生の桃瀬ひかりが、ダンベル片手に筋肉を鍛えている映像が流れてきた。そして、ダンベルを上げ下げしながら、こう言っていたんだ。


「屁のツッパリはいらんですよ! 屁のツッパリはいらんですよ!」と。


「ああっ!これは筋肉MANか?!何やってんだお前!」


俺が叫び声をあげると、桃瀬は血を吐いて倒れた。


「いやっ!見ないで!」


羞恥の悪魔から大量の投げ銭が入った。みるみるうちに、桃瀬の投げ銭がたまっていく。


すると桃瀬はコーナーポストへ腕を伸ばして、モニターの「魔力購入」ボタンをタップした。


「うおおっ!」


桃瀬は血反吐を吐きながらマントを取った。


するとそこには筋肉をかたどった肉襦袢、マッスルスーツを身につけていたのだ。


桃瀬は荒く息を吐いていた。


「はあ、はあ……いくぞカイ!」


桃瀬はそう言うと、全身に力を込め始めた。すると、桃瀬の脇の下から腕が左右に2本づつ生えて来たのだ。それを見たカイは青ざめた。


「う、腕が六本になったぞ!」


すると桃瀬は目をギラリと輝かせた。


「カーカカカ!」


桃瀬が 不気味な笑い声を上げると、道化の悪魔から投げ銭が入った。


そしてカイはさらなる桃瀬の変化を目にすることとなった。なんと阿修羅のように、顔も3つに増えているのだ。


「桃瀬……おまえ、それ、修羅場マンか!」


「カーカカ! 行くぞカイ!」


修羅場マンと化した桃瀬は、リングを駆けてカイに飛びかかると、そのまま担ぎ上げて宙を飛んだ!


「くらえ!38の殺人技! 修羅場バスター!」


「ぐはあ!」


それは凄まじい、破壊力だった。


カイはリングに倒れ伏した。


「カーカカ! まだまだ続くぞ!」


桃瀬はそう言うと、一枚のハガキを取り出した。カイは苦しそうに起き上がって、桃瀬を睨んだ。


「なんだそのハガキは……」


すると桃瀬はニヤリと笑った。


「これは私が考えたオリジナル超人よ!」


「お、お前、超人の投稿もやっていたのかよ!」


カイは桃瀬の筋肉MAN愛に驚いていた。


「カーカカ!この子があなたにトドメを刺してくれるわよ! ……さあ! 出よ! オリジナル超人! トランプマン!」


「トランプマン?」


カイが首を傾げて見ていると、桃瀬が持っていたハガキをリングへ投げた。するとハガキはそこで光輝き、リングの上で具現化していく。


「一体、何が出てくるんだっ!」


カイは冷や汗を流した。


するとそこに現れたのは、上半身裸の金髪で大柄な男だった。彼の両肩には星の印がついている。


「テリーマン?」


俺がそう呟いた時、その金髪の超人が立ち上がった。


そして、俺の方へ振り返った。


「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン」


その超人はオッサンだった。


そして、裸に赤いネクタイ、髪の毛はどれも不可解な方向へ寝ぐせがついていて、スネ夫のように跳ね上がっていた。


「テリーマンじゃなかったのかよ!」


「カーカカ! 何馬鹿なこといってるのよ!それじゃ、オリジナル超人にならないわ!」


桃瀬は六本の腕でカイを指差す。


「やっておしまい! トランプマン!」


するとトランプマンは大袈裟なジェスチャーで観客席を煽った。


「これが“アメリカン・フィニッシュ”だ!見逃すな、すぐ終わるぞ!」


トランプマンがそう言うと、観客席の悪魔たちから投げ銭が入った。


「嫌な予感しかしない……」


俺は冷や汗を流した。

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