第4話 魔法少女シャランラ
魔法少女シャランラ。
そのテーマソングが流れた時、カイの精神は崩壊した。
その様子を見た羞恥の悪魔が投げ銭をする。
カイが悶える様子を見て、桃瀬が嬉しそうに笑った。
「あなた魔法少女ものまで手を出していたのね? てっきり異世界ものばっかりだと思っていたわ!」
するとカイは苦しそうに心臓を掻きむしった。
「魔法少女シャランラはな、異世界ものなんだ」
「ええ?本当なの?」
カイは頷く。
「ああ、元祖、異世界ものと言っても過言ではない。主人公megとnonは魔界のプリンセス。どちらが後継者としてふさわしいか決めるために、この世界へ転移してきたんだ」
「そんな話だったんだ」
「作品のなかでは、主人公のmegは、魔界と人間界の間で葛藤するシーンが描かれていたりするんだ」
「でも、昭和の古い作品なんでしょ?」
「否定はしないが、“古い”と“今見ても面白い”は両立する」
すると、観客席の悪魔から、公開質問状が届いた。
「お前はmeg派なのか、non派なのか、どっちなんだ?」
カイは桃瀬の方へ振り返った。
「おい、なんだこの公開質問状ってやつは!」
「それは観客席の悪魔たちが、高額の投げ銭を支払ってあなたに質問しているのよ。それに答えるだけで大金が入ってくるわ」
「答えなければどうなるんだ?」
「そりゃ、お金は入らないし、観客席が盛り下がって投げ銭も減るわね」
「何だそれ……ちくしょう」
カイはnon派を選択した。
すると観客席からmeg派の悪魔からブーイングが出た。カイはレフェリーからマイクを奪い取った。
「俺がnon派で悪いか!」
すると、賛成と反対が二分されたように、声援とブーイングが巻き起こった。
「この公開質問状を作った奴は間違っている。正解は、megとnonの二股推しだ」
カイがそう言うと、観客席がザワつき始めた。
「いいか、良く聞け。お前たちは、megとnonの関係に百合を感じないか!」
観客席の悪魔たちがどよめき始めた。百合好きの悪魔から投げ銭が入った。
「もっというと、nonとkuroの関係はどうだ」
観客席に動揺が走った。
「お前らの中にも、nonとkuroの関係性でCP厨に目覚めた奴が一定数いるはずだ!」
観客席がザワザワし始めた。
動揺の悪魔が投げ銭する。
「おお、なんか投げ銭が結構溜まってるぜ」
カイは笑顔で桃瀬を見た。
「喜んでいる場合じゃないわよ!リングの隅をよく見て」
桃瀬はそう言うと、コーナーポストを指差した。
カイが桃瀬の指さす方へ顔を向けると、リングのコーナーポストの上に見慣れないパネルが設置されていた。画面には「魔力購入」「投げ銭変換」などのボタンが並んでいる。
「早くその「魔力購入」ボタンを押して、さっさと魔法を放つのよ」
「ああ、投げ銭が溜まったら魔力に変換できるシステムか」
カイはボタンを押した。すると、カイの体が輝き始めた。
「おお、なんだか漲ってきたわ!」
「何のんびりしているの! 今のうちに、あのロボット野郎をぶちのめすのよ!」
カイは目をギラつかせた。そして顔を覆うように手のひらで隠すと、ニヤリと笑った。
「どうやら俺の本気を見せる時が来たようだ。俺の異能……虚空断裂斬・改をな!」
カイは大きく股を開いて半身になると、両腕を左右に開いた。そして、激しく腕を交差させた!
「俺の左手に宿りし黒炎の……虚空に眠る断絶の刃よ……我が意志に従い、その理を改変せよ!」
左手が、自然と前に伸びていた。
「虚空断裂斬・改ッ!!」
虚空断裂斬とは……カイが考えた必殺技で、どんな物理的に不可能なものでも切断してしまうという技だ。改というのはその強化版である。
凄まじい閃光が、キリトの乗るASへと飛んだ。
キリトはそれを、アームパンチで迎え撃ったが、その腕はスッパリと切り落とされた。
「うおっ!」
キリトはハッチを開くと、そのまま外へ脱出する。
その瞬間、キリトのASは真っ二つに切断され、そのまま爆発した。
そして爆炎の中から、ゆっくりとキリトが現れた。
そして、カイの方をジッと見つめると小さくコホッと咳をした。
「むせる」
キリトは倒れた。
カイはキリトを凝視した。
「か、勝ったのか?」
すると桃瀬はカイに笑顔を見せた。
「ええ……おめでとう、カイ……あなたは勝ったのよ」
カイは桃瀬の顔をじっと見つめた。
「桃瀬お前……いつの間にか俺のことを名前呼びして……やっぱり俺のこと好き……」
その時、桃瀬のスターロッドがカイの顔面を叩いた。
「ううっ!」
「馬鹿なこと言ってるんじゃないわよ!」
「痛ててて……」
桃瀬は振り返った。
「わからないの? この勝負で勝利したあなたは、明日、私と戦うことになるのよ!」
「なんだって!」
「ふふふ、あなたには悪いけど、明日の試合……私が勝利させてもらうわ」
俺は冷や汗を流した。
「そんなのやってみなければわからないだろ!」
「そうかしら?魔法少女・シャランラを出したあなたに……明日、私に勝つための秘策はあるかしら?」
「秘策だって?」
カイは冷や汗を流した。
「お前……まさか、まだ他にも闇を抱えているのか!」
すると、桃瀬は微笑みながら、カイに背を向けて去っていった。
カイが桃瀬の背中を見送っていると、カイの肩に手が置かれた。
振り返ると、そこにはキリトが立っていた。
「キリト!」
キリトは無言で頷く。
カイは彼の顔をジッと見つめながら、口を開いた。
「お前……なんで俺がしゃべっている間……攻撃して来なかったんだ?」
するとキリトは頷いた。
「魔法少女・シャランラ……」
キリトはそう言うと、口をへの字に曲げた。
「お前も見ていたのか」
するとキリトは頷いた。
「……オープニングの歌詞には少しドキドキした……「二つの胸のふくらみは、無限の可能性のしるしなの」とあるだろう。子供ながらに「ん?」ってなったことがある」
それを聞いたカイは大きく頷いた。
「それに関しては完全に同意だ」
カイは話を続けた。
「megが寝るとき、白い下着が透けるネグリジェ姿。弟のrabiやtyoにイタズラされてパンチラ・セミヌード連発……」
するとキリトは目を輝かせる。
「今の魔法少女モノにある「ライバルとの対立」「シリアスな設定」「少し大人びたエロス」のすべての源流がここにある」
「お前、わかってるな!」
二人は固い握手を交わした。
「ところでお前、どっちなんだ?」
「ん?何が?」
「meg派かnon派かどっちなんだ?」
すると、キリトはジッとカイを見つめた。
「俺はmeg派だ」
その時、カイはキリトの頭をひっ叩いた。キリトはカイを睨みつけた。
「なぜ叩く! お前はmegとnonの二股推しじゃなかったのか!」
「うるせー!俺は生粋のnon派だ!」
この後、カイはキリトと掴みあいの喧嘩になるのだった。




