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黒歴史バトル 〜お前なかなかの中二病患者だな〜  作者: 平ミノル


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第3話 パーフェクト・ファイター(PF)


カイがあの懐かしいロボを凝視していると、コーナーポストに桃瀬が現れた。


カイが振り返って彼女を見ると、まだ魔法少女の恰好をしていた。


「何あれ? ロボットの持込なんてアリなの?」


「ロボットじゃなくて、ASな」


「AS?」


「あれはな、アーマードシェル(Armored Shell)と言って、100年戦争における主力兵器なんだ。無骨でリアルな兵器描写と消耗品のように扱われる兵士の非情さがなんともリアルで男心をくすぐるんだよな。それでね……」


すると桃瀬は両手を振って制止した。


「興味ない」


カイは真顔になりながら、コホンとひとつ咳払いをした。


「とにかく、心配はいらない。あいつのマシンは手強いが、所詮、物理的な攻撃しか出来ない。俺の深淵魔法の敵ではないさ」


すると桃瀬は腕を組みながらフーンと鼻を鳴らした。


「まあ、あんたが勝てるっていうなら、それでいいんだけどね」


「フフフ、任せておけ、異世界アースガルド一番の大魔法使いといわれた俺の魔法で、一瞬で倒してみせるぞ」


「だといいけど」


その時、アナウンサーがマイクを掴んだ。


「対しまして……青コーナー、元・ギルガメッシュ軍・特殊部隊レッドソルジャー所属……キリトー、キューピィー!」


するとキリトは無愛想に立ち上がって、手に持っているコーヒーカップに口を付けた。


「ウチのコーヒーは苦い……」


「お子ちゃまか!」


カイはすぐさまツッコミを入れた。


だが、観客席の悪魔たちの声援は大きい。


ワーワーワー


「なんだ、意外とファンが多いのか?」


カイがキョロキョロと周囲を見回していると、リング上の巨大モニターに何かが映し出された。


「桐原霧人、19歳。大学1年生。彼が中学二年生の時の様子がこちらです……」


爆音のBGMと共に公開される。


音楽はレッド・ソルジャーのテーマ。トランペットの音が軽やかに鳴り、オーケストラの音色が低音で響く。


それを聞いた霧人は絶叫した!


「うゃああああ! やめろ!やめてくれ!マジでやめて!!」


カイはキョトンとしてしまった。


「あいつ一人で何やってんだ?」


「過去のトラウマを直視して、憤死しているに決まってるじゃない。言わせんな恥ずかしい!」


桃瀬はそう言って顔を赤らめた。


パーパーパパッパー! 


レッド・ソルジャーのテーマソングに乗って、キリトの過去がスクリーンに放映される。


キュイーンといいながら、小走りする姿。


ガシャーンと言いながらパンチする姿。


「ねえ、黒瀬君……あの子、何やってるの?」


「あれは、ローラーダッシュという、マシンが走行モードになっているのを表現しているんだ。パンチの方は、アーム・パンチと言って、火薬の爆発力を使って拳を射出し、敵を殴る様子を再現しているんだ」


「ふーん、よくわかんないけど」


しばらくすると、映像は終了した。


キリトは肩で息をしながら、カイを睨みつけた。


その時、ゴングが鳴った。アナウンサーはマイクを握って叫んだ。


「さあ、キリト選手。早くASに乗らないと! 生身のままで魔法使いと戦うのか!」


するとキリトは空気を読まないでゆっくりと準備した。


「トウッ!」


地面から跳躍すると、コクピットまで一気に飛び上がった。キリトはそこへ着席すると、キャノピーを閉じた。


望遠レンズのような目が光って、ASが動き始める。そして、両手に握りしめられたアサルトライフルをカイに向けた。


ダダダダダ!


リングの上を銃弾が飛ぶ。


カイは飛び上がって逃げ回った。


観客席では、殺戮の悪魔がキリトに投げ銭を送った。


「ひいいっ!実弾じゃねえか、冗談だろ!」


カイは無様に逃げ回る。その情けない姿に、羞恥心の悪魔が投げ銭を送った。


「冗談はナッシングだ、俺は大まじめな男だ」


キリトは銃撃を続けながら、独り言のように呟いた。


「悪魔に呼ばれてやってきた、キリトを待っていたのは、また地獄だった。

記憶の奥底に封印した黒歴史の数々。

妄想が生み出したソドムとゴモラの街。

屁理屈と妄想、現実と幻想とをコンクリートミキサーにかけてブチまけた、

ここは黒歴史が渦巻く地獄の三丁目。


次回「キリト圧勝」。

来週もキリトと地獄に付き合ってもらう。」


カイは逃げ回りながら、歯ぎしりした。


「くそ、よくしゃべる男だぜ」


カイは目をギラつかせた。そして顔を覆うように手のひらで隠すと、ニヤリと笑った。


「どうやら俺の本気を見せる時が来たようだ。俺の異能……虚空断裂斬・改をな!」


カイは大きく股を開いて半身になると、両腕を左右に開いた。そして、激しく腕を交差させる!


「俺の左手に宿りし黒炎の……虚空に眠る断絶の刃よ……我が意志に従い、その理を——」


左手が、自然と前に伸びていた。


「——改変せよ! 虚空断裂斬・改ッ!!」


虚空断裂斬とは……カイが考えた必殺技で、どんな物理的に不可能なものでも切断してしまうという技だ。改というのはその強化版である。


凄まじい閃光が、キリトの乗るASへと飛んだ。


誰もが真っ二つになると確信したその時、キリトの乗るアーマード・シェルの腕が動いた。


「あっ! アームパンチが!」


ロボの腕が、火薬の爆発力によって2メートルほど前へ伸びていく。そしてそれは、カイが放った「虚空断裂斬・改」を弾き飛ばしたのだ。


「ああっ!そんなバカな!」


ASの腕から薬きょうが射出され、リングにコロンと落ちた。


「虚空断裂斬・改が効かない? なぜだ……」


カイは青ざめながらASを睨みつけた。するとセコンドについていた桃瀬が叫んだ。


「黒瀬君! あなた、まだ自分を解放しきれてないのよ!」


「解放だって?」


桃瀬は頷いた。


「だって、あなた、まだ悶えてないもの」


「わざわざ悶える必要があんのかよ!」


「当たり前でしょ!」


「ここは悪魔のスタジアム。あなたが羞恥に悶える姿を見るから、羞恥の悪魔が投げ銭をするのよ」


それを聞いたカイは天を仰いだ。


カイは悩んだ末に、誰にも知られたくない黒歴史をさらけ出すことにしたのだ。


「べ、ベルゼ!」


カイがベルゼの名を呼ぶと、彼はセコンドの脇から姿を現した。


「どうしましたか? カ、カ……」


「カラノスメラだ」


「カラノスメラ!」


ベルゼ課長は笑顔を見せた。


「ベルゼ……俺は奴に勝ちたい。俺の黒歴史を……俺の黒歴史を公開してくれ!」


するとベルゼ課長はニヤリと笑った。


「いいんですね……それではとっておきの、黒歴史を公開させてもらいますよ」


「ああ、頼む……俺は奴に勝ちたい」


ベルゼはそれを聞くと、微笑みながら消えていった。その様子を見た桃瀬は、不安そうにカイを見た。


「大丈夫なの? ベルゼ……なんだかうれしそうだったわ」


「ああ、大丈夫だ……俺は俺自身の黒歴史はすべて理解している。あの机に封印してあるノートの中身はすべて暗記しているし、公開されても心のダメージは少ない」


そんな話をしていると、リング上の巨大モニターに何かが映し出された。


「黒瀬カイ、16歳。清真高校1年生。彼が小学6年生の時の様子がこちらです……」


爆音のBGMと共に公開される。


♪シャランラ、シャランラ、ヘイへヘイヘヘイ、シャランラ!♪


音楽は魔法少女・シャランラのテーマ。


それを聞いたカイは絶叫した!


「うゃああああ! やめろ!やめてくれ!マジでやめて!!」




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