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part 22

推理


「少し時間よろしいですか」

私達がいるのは当然、例の高校、私達が話しかけているのは当然、石上拓真である。

彼は無表情でポーカーフェイスが上手だが、今のはまたかと面倒くさそうな顔をしたな。

ここまで接すれば彼の表情もほんの少しは分かってきた。

「ついてきてもらってもよろしいですか?」

彼は不平、不満を言いはしないが、渋々嫌々といった感じでついてくる。

向かった先は図書館。

既に人払いは済ませてある。もともと、本の趣味などあまりない連中だから、人払いも簡単であった。

振り向いて石上の表情を見やる。

今度は何だといった顔かな。いいや、今度は少し怯えもあるかな。

鷹見らに殴る蹴るの暴行を受けたときには決して見せなかった怯えが彼の瞳の奥深くに見えた気がした。

ずうっと、表情の乏しい青年だと思っていたが、意外にそんなこともないのかもしれない。

少なくとも、友人である荒波晴馬には過不足なく伝わっていたのだろうなということが伺えた。

「少し天啓がありましてね。最初の疑問に戻ったんです」

彼の瞳に怯えが増した。

「最初の疑問というのはですね。殺害現場の話です。あなたは別に被害者と休日に一緒に遊ぶ仲でもないですし、一緒にトイレに入るような仲でももちろんないですよね。だから、一緒に用を足す仲であろう鷹見らにも容疑が及んだんですよね」

彼の肩が上下に震える。

「もう一つ、よしんばトイレ内に引きずり込めたとしてもどう見ても非力そうなあなたがどうやって殺せましょうか?」

彼は苦しそうに胸を押さえた。

「正解を教えましょう」

私は図書室の椅子を持ってきて、葵を座らせ、その彼の膝の上に腰を下ろす。

本来であれば、もっと深く被害者に跨がっていたのだろうが、それは少々恥ずかしいので、私は体を横に向け、石上を見れるようにする。

「ここまで来れたらあとは体重を移動して、裏に回り隠し持ったしめ縄で首を絞める。そうすれば力なんて必要ないですよね。非力なあなたでも」

狭い個室内、かつ便座に座る彼をマウンティング姿勢まで整えることが出来たのなら、誰にだって殺害できるだろう。

彼は崩れ落ち、立てなくなる。

「私のような女性も関係ない」

項垂れる彼を通り過ぎて、受付の図書員の手を取る。


「犯人は女性かもしれない?」

案の定、部室にいた真昼と合流して私の推理、犯人は女性かもしれない旨を伝えた。

「どうしてなの?」

葵と真昼が当然の疑問を口にする。

「少し天啓を得まして」

「天啓?」

「どうしてそう思い立たのかは秘密なのですが、最初の疑問に原点回帰しました」

私が最初の疑問として述べることは二つ。

「一つ、死体を運んで見つかる可能性が高い以上、同様にトイレ内で殺された可能性が高いこと。これやっぱりおかしいですね。二つ、トイレ内も狭いわけじゃない、石上のようないじめられっ子の非力な青年がそのような場所で取っ組み合いになって勝てるでしょうか?」

「だから、個室内? そういう意味で女性ということね!」

やはり、真昼は頭がキレる。

少し情報を渡せば、即座に言いたいことを理解してくれる。

「つまり、ハニートラップで男はラブホ代をケチった?」

そそ。

「そういうことです。つまり、石上の役目は限りなく彼自身に注目を集めてこの疑問に触れさせないようにしたんです」

それを私たちに気取らせることなく、一片のミスもなく、極めて冷静にやり切った石上には感嘆しかない。

「とはいっても女性、範囲は未だ膨大。恐らく動機から考えて、荒波の彼女だった人物でしょうが、故に荒波は彼女を巻き込まないようにその存在を隠していたのでしょう。だから捜査線上にも浮かんでこなかった」

やっぱり、共犯は間違っていなかった。

「凶器も見つかった。あまりにも時間が無い。地道で膨大な作業量になるでしょうが、二人とも協力してください」

「了解したわ」

快い返事をくれた真昼とは裏腹に葵は何か考え込む。

「犯人は女性……。そういわれると心当たりがあるかもしれない」


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