part21
「ちょっと、席を離れますね」
ダンスが終わって次のプログラムまで10分の休憩が設けれた。
「いっといれ」
「うるさいですね」
まあ、おトイレなんですがね。
本舎のトイレ、特に女子トイレははなかなかに来賓で混んでいる。
トイレでメイク直ししてる輩が多すぎるのだ。
別舎のトイレまで行くことにした。
流石に別舎のトイレまでは来賓は来ないだろうから、空いているだろう。
予想通り、別舎のトイレには一人も来ていなかったようで待ち時間もなく、トイレを使用できた。
そうして、出ようとしたときに、声が聞こえてきて出るタイミングを逃す。
別にただ声が聞こえてきただけなら、すぐに出たのだが。
(男の声……)
恐怖が体の芯までやってきて、体が棒のように動かなくなったが、その心配は杞憂? に終わる。
「大丈夫だって。誰もいないって」
「そういう問題じゃないんだけど」
この声はクラス委員の二人の黛と江藤?
知人の声だと判明し、体のこわばりが溶解する。
というか、黛はともかく、なぜに江藤が?
少し考えを巡らせて完全に出るタイミングを逃していると、入り口側、左隣の個室に二人は入っていた。
ちょっと待って、ちょっと待って。
そういうこと?
今日のことを思い出すと、黛は彼氏がいると言っていた。まあ、つまるところ、その相手が同じクラス委員の江藤だったということだ。
それはいい。本当にどうでもいい。
だから、つまり、故に、今から……。
出るならおっぱじまっていないこの瞬間しかないが。
(出れるわけないよお)
「やっぱり、学校でこういうのはダメじゃない?」
「塔ちゃん、ビビってんの?」
「がちビビりだよ」
うっそん。
少しちゃらんぽらんな江藤の方が迫るんじゃなくて、規律、ルールの記号のような彼女の方から迫るのか!
苦しそうな声と少し液体がくちゃっとする音が聞こえる。
黛の方からキスで口をふさいだ!?
「ねえ、父ちゃん」
えぐすぎ……。
顔の火照りが止められないし、正直言って体の方もちょっと変な気分にさせられたぞ!
二人はそこまで長居したわけじゃないが、20分くらいで個室から出ていった。
当然、すぐに出て鉢合わせるわけにもいかなく、火照りを収めるために10分少し吸ってはいて~の深呼吸を繰り返していた。
ごめん、葵。心配してるよね。
黛、もとい黛様大胆過ぎないですかね。
塔ちゃんもとい、父ちゃん、弱すぎませんかね。
茹蛸の頭を落ち着け、思考を落ち着けると、人るの可能性が浮かんでくる。
これはもしかして天啓か?
(遅いなあ。ウンチか?)
なんて呑気に失礼なことを考えていた葵。
「あ、やっと帰ってきた」
「葵、今すぐ部室に行って真昼のとこに行きましょう。あんまり、時間はないでしょうから」
「何か閃いたね?」
「もしかしたらというだけのものですが」




