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part20

小腹も満たしたところで、教室を移動した。

パサついていてあんまり美味しくなかったよなあ。

ちなみに待たせた詫びとして葵が奢ってくれた。

申し訳ないと一度断ったのだが、あんな飯に金を払わせられないとぷりぷりしていた。

価格設定も強気、味も微妙、なのに客足が途絶えないというのは執事喫茶。破壊力抜群であるな。

確かに葵筆頭に外見の整っている男性は多かった気がするが、それでも繁盛しすぎだ。

「これから、どうします?」

「確か、ダンス部とか演劇部の発表がホールであったろ。玖音の友達の日笠さんも出るはずだし、見に行くか」

「良いんですか?」

それは願ったり、叶ったりといったところだが、貴重な高校の文化祭の一回を私に合わせて費やしてよいのか。

「座りたい」

「さいで」


望月学園には体育館とは別に学年集会に使用される座席のついた中央ホールが存在する。

ちなみに体育館は3階に一つ。

普通に広い体育館が外にひとつに。

もう一つ、部活動に使うセミナーと呼ばれている体育館が存在する。

「やあっと落ち着ける」

「ご苦労様です」

本当に忙しそうだったからな。

ちょうど、ダンスが始まる。

右翼後方に陽子の姿が確認できる。

「ちなみに、前に石上に会いに行ったけど、何か分かったことか、進展はあった?」

「葵も確信したかと思いますが、あれは百二十パーセント、あの事件の真相を知っていると思います」

「僕もそう思った。途中、めっちゃキレてなかった? 殺されるかと思ったよ」

「私もです」

やはり、葵も同じように思ったか。

あんな鋭利なキレようは心に闇のある人間にしかできない。

「というか、どうやったかは知らないけど、そもそも彼を怒らせようっていうのが、あの日の目的だったんでしょ?」

「取ったリスクに見合う情報は得られませんでしたがね」

ハイリスク、ローリターンであった。

彼にアプローチをかけて、情報を引き出すことは不可能だと、ここ数週間の結果からそう結論付ける。

ああいう高校生が近辺にいたのが、驚きだ。

私や警察をも騙しとおす計画力に、私や警察だけじゃない、いじめっ子の奴らにも当然、疑われて殴る蹴るはされていただろう。精神、身体両方をこれ以上ないほどに責められて、なにも気取らせない精神力。

「そういう目的があるって真昼は分かってたから、初っ端からぶっこんだんだろうな」

「おそらくそうでしょうね。あの人、私が必要ないくらい頭キレますよね」

「大体、僕らの中じゃ、僕がポンコツ枠だ」

そんなことはあるかもしれない。

「私も葵に負けず劣らずのポンコツですよ。あと進展ありましたよ。これは私ではなく、兄から聞いた情報なんですがね」

「どうせ、バットニュースだろ」

「ご明察」


「鷹見瑛人知ってるよな」

「……」

目前の青年は鷹見瑛人という人物を確実に知っている。同じクラスである。

しかしながら、だんまり。

「その彼の自宅倉庫から犯行に使用されたと思われるしめ縄が発見された」

彼は「そうなんですか」と相槌を打つこともなく、涼しい顔して目を閉じるだけ。

「何か知っていることは無いか?」

「……」

また、だんまり。

彼が普段より失語していることは妹の玖音からも聞いている。

しかし、今は失語がどうとかそいうのは全く関係ない。

彼はこの状況では黙ることが正解。雄弁は銀沈黙は金ということをよく理解している。

「お前は囮で、鷹見瑛人が実行犯なんだよな?」

これは餌だ。

彼が鷹見瑛人らに強い憎しみを抱き、あわよくば罪を擦り付ける気なのだとは玖音からの考察だ。

賢い魚だ。食いつかないか。

「沈黙は肯定という言葉もあるが?」

「……」

それでもやはりだんまり。

直前に鷹見瑛人の尋問も行っている。

彼は普段の粗雑で尊大な態度と違って、俺はやってない、信じてくれと。

可哀想なくらい泣きついてきた。

目前の彼の精神性は、鷹見と同い年のものとはとても思えなかった。

そりゃあ、玖音がてこずるわけだ。

「いじめグループの一人、鷹見瑛人の自宅倉庫から犯行に使用されたと思われるしめ縄が発見されました」

「そうか。玖音はこれをどう見る?」

「十中八九、石上の仕込みでしょうね。完璧な証拠隠滅です」

そんなことだろうとは思っていた。

凶器の処理の仕方は頭を悩ませる問題の一つだろうが、ポピュラーに擦り付けが一番楽だ。

「これから、どうする?」

「どうするも何も、白旗ですよ。言っていたタイムリミットが来たんですよ」

「そうか」

私達の間に重たい沈黙が流れる。

「ま、気持ちを切り替えてダンスを見ましょう」

「そうだね」


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