裏稼業の纏め役
お読み頂き有難う御座います。
裏稼業ネットワークの首領、間が悪くも帰還です。
「殿下は美丈夫ですからな。心配ないでしょう」
「お好みは万人によってそれぞれですが、そうですわね」
遥か昔のゴードンの小さい頃は……やんちゃで尻尾はモフモフで可愛かったけど、今はアレルギー持ちの我が儘迷惑なオッサンだものね!うん、やっぱり願い下げ!フリックの可愛さと真摯さには大負けだわ!今度、小さい頃の写真とか無いか聞いてみようかしら!と口で同意しつつもミューンは心の中でゴードンを謗ってフリックを思い出し心を癒しておいた。
「所でミューン嬢は何故此処にいらしたのですかな?此方は少しご婦人には危険でしょうに」
「おほほ、ここの主のジュラン・リオネス……殿と旧知でして、少しご依頼に」
滅茶苦茶文句を言いに来たとは言えず、ミューンは誤魔化して一応敬称も付けておいた。
後ろの方から、ソーが植木の土を元に戻しながらも拒否のリアクションをしているのが鏡越しに見えたが、綺麗に微笑んで無視しておく。
「はは、そうでしたか。奇遇ですな、吾輩もです」
「まあ、有能な閣下が此方にご依頼を?」
「人を探しております」
「まあ」
軍将のコネを持ってしても探せない人探しとはどんな凶悪犯だろうか。街中を彷徨かれたらどうしましょう!?今すぐにフリックへ護衛を倍にするわ!!あー編成は……とミューンが頭を捻った途端、ポロポロと可愛らしい音を立ててドアベルが鳴った。
「うわー、ダブルで厄介なのが未だ居る」
凄く聞き慣れた、失礼かつ嫌そうな声がミューンの耳に届いた。
「あっジュラン……!!ジュラン!?」
「う、はーい、ジュラン君ですよー。ミューンちゃーん?」
ジュラン・リオネスはミューンより2歳下である。
モッサリ髭まみれの小汚なさ全開の時もあれば、王宮で出会う時はビシッと装っている。
兄と一緒でそんなに背は高くないが、似たような意地悪い怜悧な美形だ。性格は悪いが顔だけはいい。
会う場所ごとに服や身嗜みに一貫性が無いが、ミューンはジュランに興味がないので気にならなかった。
だが、今の姿は。
ミューンはアイメイクを気にせず目を擦ったが、違和感は消えなかった。
薄い金色の髪に、濃紺の瞳が煌めくのは何時も通り。
ただ……アラサーの癖に、その姿は……いやに若く、どう見ても十代にしか見えない。
おかしい。
この前までは、普通に大人だったのに何故か未成年になっている。その意味不明さに、ミューンは混乱した。
「いやっ!訳が分からないわ。まさかジュラン、歳を減らせるの!?気持ち悪いし怖っ!」
「気持ち悪いぃ!?酷えなミューンちゃん、怖くねーよ!嗜みだよ」
「何の!?また変なこと言い出した!!これだから嫌なのよ!!」
ミューンは胡散臭い気持ちを視線に乗せてヘラヘラ笑うジュランを睨んだ。目を擦ったせいで手にマスカラが付いたが、思ったより少ないようだ。
「ほう、幻獣人は年齢操作が可能と聞きましたぞ。目の当たりにするのは初めてですな」
「常識ですよね。体積は変えらんないから、精々十代後半迄ですけどね」
何でもないことのように言うジュランにイラッとしつつも、スオリジェが感心しているので黙っておいた。しかしミューンにはもうひとつ許せないことが有った。
「何でメメル校の制服着てんのよ!大体あんた、ジワル校出身でしょ!?詐称よ!!」
「えー頭固いなー。裏稼業の人間に詐称を咎めんなよー」
卒業したら王宮勤めが厳命のメメル校。ではなく、王宮勤めは可能だが他の分野に行っても良い。そういう校風なのが、シャーゴン郊外に有るジワル校である。彼は兄と違って此処を卒業した筈だ。
「んもー、声でかいなー。仕事で色々有るんだって。それで、貴方様は」
「貴方がジュラン・リオネス殿ですな。吾輩は」
「どーも、海軍将スオリジェ・オン・フォールーズ閣下。ご依頼はマイルドにお断りさせて頂いた筈ですが」
「まあ!!断ってばかりなのね。
王様商売し過ぎよ!じきに干して捻るわよ!!」
「後でお相手すっからね、ミューンちゃん黙っててくんない?」
失礼極まりないわ!!とミューンは憤慨したが、軍将の前なので一応抑えて睨むだけにしておいた。
彼は言わないだろうが、王宮に出入りする者を前にして居る以上、お淑やかにするに限る。ミューンは彼女なりに世間を気にしているつもりだった。
幼馴染みで家族関係は知ってるのに、種族には全く興味なくて詳しくないのがミューンで御座います。




