意外な方との再会
お読み頂き有難う御座います。
裏稼業ネットワークで意外な人物と再会です。
「昔ーむかしー魔王様ー。なんとかかんとかふふふふふーん。
はー、らららー。らんらんららんとモブの肝に住みー尻尾踏まれて目を覚ますぇーえっしょい!」
裏通りらしく調子外れな大声もよく聞こえてくる。どうやら歌詞が無茶苦茶だが、人気吟遊詩人が巷で流行らせたシャーゴンの昔話を混ぜた童謡のようだ。
「どっかの酔っぱらいが歌ってるわね。ジュランは何処?」
「飲み屋近いっすからね。
だからー、首領は今日は不在ですってば。お引き取りを」
「油の塔に浸けられてー……100年越しに煙幕にーばらばら咲いてーがはははー!何だオッサン!?ぐほっ!?」
急に表が煩くなってきたと思ったらが、調子外れな歌が止み、何かがぶつかる鈍い音がする。何度かゴンガンと響き、静かになる。
「失礼するぞ。表の酔っぱらいが貴店の鉢植えを害そうとしていたので、僭越ながら吾輩が転がしておいた」
ドアを丁寧に開けて、のそりと入ってきたの見上げるような巨体にミューンは目を見張った。
「何故此方に!?」
「うむ?」
その風体を見たことがあるどころではない。と言うか、インパクトが有りすぎて誰もが知っているその巨体。巷の少年達のヒーロー扱いされているらしいとミューンは最近知った。
フリックが居たらさぞ喜んだことだろう。しかし、残念ながら彼は学校である。
「はあっ!?マジっすか有難う御座います!!首領のお気に入りの星巻き薔薇なんですよ!!
うわ信じらんねコイツ、植木コカしたな!?極刑!!」
外でバシバシ暴力的な音が聞こえてくるが、気にせずミューンは素直に目の前の人物に驚いた。
「スオリジェ軍将閣下!!」
「は?……お嬢さん、何処かでお会いしたかな?」
どうやら相手はミューンを覚えていないらしい。
何せ多分一度しか会ったことがないのだからそれも仕方の無いことだが。
「法務大臣ドレッダの娘、ミューンですわ」
「おお!ギョーム卿の!!……いや、前にお会いしましたかな。ああ、殿下に絡まれていた……幼馴染みのレディ」
やはりゴードンとセットで覚えられていたらしいのは気に入らない。だが、流石に助けてもらったのに嫌味や異議申し立てをする気は無いので、丁寧に上品に頭を下げる。
爬虫類で無いと分かったので、恐怖は完全に失せており、地味にミューンも単純な質なのであった。
「そうなんですの。その節は危ないところを有難う御座いました」
「殿下はレディ・アルルローラ・オン・スカットの婿になられたとか。いや、姪婿か?」
「あら、現空軍将はスティーヴ・マイヤー様の御籍では無いんですのね。失礼ながら間違えて覚えておりましたわ」
「スティーヴ卿は度を越した艶福家で有った故、ご家族が難儀されてな。柵を切った上で栄転、事実上も法律上も完璧な婿入りをされたと」
「まあ、そうなんですの」
意外な内情を雑談として漏らしてくれた。どうやら軍ではそんなに機密でも無いようだ。
「体調を崩して……喉を痛めたんだったか?細君に使命を譲られたと聞く。
まあ、細君がご存命の内は会うことは叶わぬだろうが……男同士で飲む分には快活な男でありましてな」
つまり、女関係が派手すぎて、家族から切られて飛ばされて女の戦いに放り込まれた生け贄……か。あの顔色の悪い壮年男性が女好きだったとは信じられない。人格って変わるものなのねー、とミューンは感心した。
ゴードンもあんな風にゲッソリするのだろうか。心折られて痛め付けられた頃に見物に行こうかしら?と頭の片隅に留めておく。
「ゴードン殿下は空軍将様のお嬢様がたのお気に召すのかしら……。
いえ、きっと殿下のお目に掛かれるお嬢様がたはおられますわよね。心配になりますわ」
歳を喰って見目もウザくなってきたし、返品されたらどうしよう。空軍将の娘と姪には未だ十代のピチピチな乙女も多数居る筈だ。三十路のオッサン狼王子(中身はガキ)がウケるとはとても思えない。
返品されたら今度こそ撃ち殺すしかないな、裏稼業ネットワークに予約しようとミューンは思っていた。
裏稼業ネットワークは裏稼業の職安みたいな感じですが、押しの強い堅気の人は入ってきてしまいます。




