↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初恋を踏みにじられたので、可愛い番を作ります  作者: 宇和マチカ
忍び寄る者達

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/164

婚約者を信じ、慕え。彼らを割くべからず。さもなくば全ては無駄と帰すだろう

お読み頂き有り難う御座います。

朝の時間は何故あんなに貴重なんでしょうね。

 次の日。

 ミューンが裏稼業ネットワークに怒鳴り込みつつ、王宮で第二王子を探しながらコンラッドに怒鳴り散らすと言うので、朝からひと悶着有った。


「危ないことをしないでください!! ミューン様あ!」

「護衛をしこたま張り付けるとは言え、フリックの方が心配だわ……。やっぱりメメル校に狙撃兵を追加配備した方が!!」

「ぼ、僕ではなく、ミューン様の方です!!ゴードン殿下にもし引きずり込まれたら!」

「鼻を殴って兵器を擦り込むわ!」

「ミューン様に何かあったら僕、生きていけません!!」

「フリック! ああ、このダイニングテーブル無茶苦茶邪魔!! 長いわ!! 今まで何の気にもならなかったけど、邪魔!!」


 ドレッダ侯爵家の朝食のダイニングテーブルは、かなりの大騒ぎに包まれていた。


「はっはっは! ミューンと婿殿は仲が良いなっげふっ!」

「こここここんな豪華な場に私みたいなのがいて良いの……? せ、せめて床で……でも、あわわ、フリックもう慣れて……! 姉さんは嬉しいわ!!」


 侯爵が豪快に咳き込みながら笑い、姉は泣き笑いする。使用人は静かに控えながら料理の皿を持って行き来する。そして、やはり突っ込みは居ない。カオスだった。


 そして、アタフタしている内に時間は過ぎる。朝の時間は貴重で高速なのだ。


「あ、あのフリック。その、学校は?」


 オズオズと姉に突っ込まれて、フリックとミューンは固まった。


「ああっ⁉」

「こ、こんな時間!!」


 別に皆勤賞を狙っている訳ではないが!連絡する休む理由が困る。バカ正直に、婚約者が王宮に怒鳴り込もうとしているので止めようと努力しています。だから休みますしか思い付かない。流石にその理由では怒られまくるだろう。


「あう、えと! ミューン様、危ない真似をしちゃ駄目ですからね!!」

「安心して頂戴フリック!

 私は今日も明日もフリックとの未来の為に、滅茶苦茶安全で元気よ!!」


 侯爵が手配してくれた馬車の窓から見えるミューンが滅茶苦茶気になりながらも、間一髪間に合った。

 ただ、入学当初から徒歩組のフリックが侯爵家の馬車から降り立つ時には滅茶苦茶目立ってしまったが。



 そして午後。フリックが移動教室を終え、渡り廊下を移動していると、珍しく人だかりが出来ていた。

 廊下で転んでいる女生徒を、最近人気の最高学年の男子生徒が助けたらしい。


「あれ、女官クラスの子だよね。イトケウ先輩に助けられるとかマジ羨ましいー」

「でも、女官クラスって実質花嫁修業じゃん? てことは、あの地味な子、婚約者持ちなんだー」

「ヒトは見かけによらないねー。あんな地味で貧相なのにー」


 やっかみと勝手な言い分でザワザワとする中、何処かで嗅いだことのある匂いがフリックの鼻をくすぐった。

 この前からこの匂いは何なのだろうか。キョロキョロ、と辺りを見回しても特に変わったところは無い。


「婚約者持ちなら、襟に証のピンブローチを装着しなきゃね」

「あ」


 誰かの言葉がふっと耳に入る。

 思わず襟を探るも、この頃アカギレが治ってきた手には古びた制服の感触しかしない。

 そう言えば、婚約者の証をフリックは申請するのを忘れていた。


 メメル校は学内恋愛が禁止されている。

 以前、学校や王家までを巻き込んだ醜聞により、校則がより厳しくなったそうだ。高位貴族が廃嫡やお取り潰しに合うような有名な事件だったらしいが、フリックは日々の勉強と生活に精一杯で、ゴシップに興味がないので知らなかった。


 中でも学校に籍を置く婚約者持ちは、特に厳しい目で見られる。貴族だろうが平民だろうが関係なくだ。婚約者がいるのに恋人を漁る者は退校処分となる。勿論、言い寄る方も同等だ。

 だから、それを回避する為のピンブローチ着用が義務付けられる。どうしても恋愛沙汰がやりたければ校外で、身内の監督のもと行うよう指導されているのだ。


 十代の子供が多く集まる中、古くさく窮屈な校則では有るが、仕方がない。我慢と引き換えに齏される物が大きいのだ。嫌ならば退校するかルールを守る他無い。


「……申請しなきゃ」


 フリックはその足で教員室へと向かう。後ろの方で、更にどよめきが聞こえた気がしたが、休み時間も残り少ないので野次馬をしている時間は無かった。何だかドシンバタンと音がしていたが、その内噂になるに違いない。


「ドレッダ侯爵家のね。噂になっていたが、もう少し早く来るのだね。特待生としての自覚が足りない」

「すみません」


 多少の小言は教師から貰ったものの、ピンブローチはフリックへ即交付となった。

 古びた制服の襟元に、年季の入った、七宝細工の花縮砂(はなしゅくしゃ)のピンブローチが鈍く光る。花には詳しくないフリックだが、生姜の仲間の花らしいと聞いていた。


 公的にもミューン様の婚約者なんだなあ。と、フリックは込み上げてくる笑みを押さえきれなかった。


「フリック・レストヴァ!! わたくしの話を聞きなさいよ!」


 しかし、転入生シュラヴィは懲りなかったようだ。クラスも違うのに、何故フリックのクラス前に居るのだろうか。

 怪我をしているだろうに、手を振り回して迫ってくる。


「フリック・レストヴァ!! 聞けってのですのよ!!」

「可愛い子が呼んでるぞ、レストヴァ」


 同級生が、教室の中からからかうような目でフリックを見ている。面白がっているような雰囲気が見てとれた。


「……この前喧嘩を売られたから、関わりたくないんだ」

「喧嘩か……。時間の無駄だな」


 メメル校では学問や武術に重きを置いており、個人意識が強い。特別クラスは特に勉強が大変だから、クラス外での交流は殆ど無い。

 だから、クラスを越えて仲良くツルむ者は殆ど居ない。恋愛禁止を同意の上で入学している生徒達は、窮屈だと騒ぐこともない。あくまで野次馬根性の興味は有るようだが。

 此処は、あくまで王宮に仕える為の学校なのだ。

 そして……学ぶことに特化しているという事は、規律にも厳しい訳で。


「歩兵クラスのシュラヴィ・キャリエル。教員室へ来なさい」

「うえっ⁉」

「君の行いに付いて話し合おう」


 騒ぎを起こすと、直ぐに教師が飛んでくる。


「えええええ⁉ こ、これだけで⁉ わ、わたくし特に何もしてないのに⁉」

「此処は勉学に励むところだ。大声をあげて同級生を怒鳴る所ではない」


 軽口や悪口にしても、騒ぎ立てる者などこの学校には居ない。

 大声を出すシュラヴィはあっという間に、教師に引きずられていった。


「静かになったね」

「何しに来たんだあの人」

「……偶に居るよね。高位貴族にすり寄る人。そのパターン?」

「……ああ、まあ、レストヴァ君はアレだよね。ラッキーだったから」


 フリックが起こした訳でもない騒ぎを、咎めるような目に、暫く晒された。居心地が悪い。


 そして放課後。フリックは昨日の轍を踏まない為に裏門から帰ることにした。


「何でなのよ!! 同年代の男の子に話しかけるってどうしたら良いの⁉

 拐われて監禁されてたわたくしに分かる訳ないじゃない!!

 ああああああーーー!!

 コレでまた『ド下手か』ってジュラン様に怒られるううううう!!!! くけーーーー!」


 何故此処に居るのだろう。もう、裏門から出ずに正門を利用すべきだったとフリックは遠い目になった。

 しかも、迂闊が過ぎることに彼女は『ジュラン』と叫んでいる。間違いなく、『裏社会ネットワーク』関係者だ。そうとしか思えない。いや、返って怪しすぎるから罠なのだろうか。

 この科白を何とか記録出来ないだろうか。


 フリックは目の前の光景に、グルグルと混乱する頭を抱えた。


翼竜シュラヴィは世間知らずみたいですね。

花縮砂の別名はジンジャーリリー。花言葉は信頼、豊かな心、慕われる愛、無駄なこと、を採用させて頂いております。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
登場人物紹介
キャラクターが多くなって来たので、確認にどうぞ。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。