第23wwwタウノリマジーハー生活基盤崩壊危機
いつ来るかわからない第三度目の襲撃を警戒しつつ俺はそれ以外の災厄にも対処しなくてはいけない。
だって俺はこの町の町長だからな。
例え、大元である国家アジルタスノがシアイエンティアのものになったとしても、
この町、タウノリマジーハーを消滅させたりはしない。
国が墜ちた時点で時間の猶予はない。
だが、それでも俺はこの町の最高権力者だ。
――――――――――――――――なんだか俺、主人公見たいだろ?
そんな緊張の中、余計な事というのは呼んでなくても向こうの方からやってくるものだ。
『天枯花の発生』
冒険者達の報告にあったのは町のインフラを破壊する長期的には最悪の存在。
天枯花。
それは周囲の水を全て地下へと流してしまう悪魔の花。
それも必ずしも地下水に流すと言う訳でなく、
地下水の水も堰き止めて吸い取り、活用可能地下水層の更に下の層や他のところへ流してしまうこともある。
他のところとは即ち天枯花の球根である。
既に井戸は水が少しずつ少なくなってきている。
天枯花のせいだったか。
もっと早く気が付くべきだった。
今はまだ何とかなる。進化して大天枯花になったら町が終わる。
「パパ、どうするの?」
「大丈夫だ。考えてある。」
ヒャクは頭がいいが、天枯花の事を知っていない。
対策ができるのは知識と頭脳がある俺だけだ。
アレは強いからと言って見逃していいモンスターではない。
向こうが存在するだけでこちらに致命的な被害を与え続けるのだ。
その特性は地下水の真上に存在して水を占拠する。そして今回の地下水はタウノリマジーハーの生命線だった。
だからこちらも容赦はしない。
以前、未成熟な個体と遭遇したことがある。
その個体はタウノリマジーハーとは無関係な水脈にいたが今回は違う。
「地下水があと少し引いたら井戸に人を潜らせて水の調査をする。
同時に冒険者を緊急で町へ呼び込む。
そこから一気に人海戦術で天枯花を排除する。
それまでの間は水の確保だ。」
かくして天枯花排除作戦は幕を開けた。
そして一週間後。
「気を付けてくださいね。」
レンフィールドは新妻の如く俺を心配するが、俺としては結婚したつもりも結婚する気もないんだよね~。
「パパ、行こう。」
「そうしようか。」
俺は一度目視したモンスターの特徴を理解できる。
そういう『スキル』がある。
奴の弱点は理解している。
土属性の魔法使いと、スコップとツルハシを持たせた人間を大量に連れて行く。
知ってるか? スコップは近接戦闘に最後の手段としては十分有効程度だという結果は出ている。
つまり、土方達は無力じゃないんだよ。
おおよその方向性は水の調査で見当を付けた。
もしかしたら岩盤の関係で水が回りこんで流れてきているかもしれないが、
それで計算違いだったときはその時だ。
貯蓄した水が無くなるまでに見つけ出してやる。
町民は不満なんて言わない傀儡だし、
水の調査員だってある意味傀儡だから、調査結果が違ったって調査員に責任を押し付ける意味がない。
不満逸らしなんて必要ないし、どいつもこいつも俺の支配下で起こった話だしな。
それに、責任の押し付け合いをしている暇なんかないし。
取り敢えずとっとと天枯花を見つける所から始めないとな。
その為には―――――――――――――
「邪魔だぁッッ!!」
途中で遭遇するお呼びでない御客様を打ち倒す。
イケル氏の身体は馴染む。実に馴染むぞォォッ!!。
やはり、タウノリマジーハーに帰るときにオッスバイトから体を入れ替えたが、
その時にも思っていたが、殊更戦闘となると実に馴染む。
「エルボースマッシュッッ!!」
「イケルスペシャルッッ!!」
「エルボースマッシュッッ!!」
「イケルスペシャルッッ!!」
ロック&ポーズ(強制慣性消滅、標準姿勢化)を挟みつつ、発動と発揮の早い技で、
錐鼠や鼠鬼、忙滑空鼠等を叩きのめしては進む。
ヒャクも魔法や蹴りを叩き込んでいる。時折咽こんでいるが大丈夫だろう。多分。
この森にはダニやクモのモンスターが多くて厄介だが、
そういう奴らは倒せなさそうなのは無視して押し進む。
だがそれでも水分に飢えているのか、俺達の体液を吸おうとしてくる。
誰か一人を犠牲にしてもいいが、あっという間に吸い尽くされて次の標的を探してくるだろう。
費用対効果が少ない。
俺は誰一人犠牲にしないなんて慈善家では当然ないが、
それでも無駄な犠牲を楽しむ気はない。
だって、こいつらの生存は俺の町の復興進度に直結するんだからな。
天枯花の特徴は地下だけでなく空気中の水分も葉から吸い尽くす。
空気が乾燥している方を探しながら俺達は駆け続けた。
そうやって駆け抜けて運よく俺の連れてきた冒険者の一人が天枯花を発見した。
「町長ッ、こっちです。」
そこへ向かった時に確かにそこに天枯花は居た。
その成長具合は予想以上だ。進化も、近いか?
何故今まで、気が付けなかったのか、いや、コイツ自身がそこまで目立つ行動をとらなかったのか、
それは解らない。
「喰らえッ!!」
冒険者の一人がその地面を覆う広い二枚葉に剣を振るうが、
本当に植物に鋼を当てたのか疑わしいほど軽い音で軽く弾き返される。
「下がれッ。」
無駄なことはさせない。
恐らくコイツは涸れた土地で唯一自分だけが供給できる水分を武器にモンスターを呼び寄せるはずだ。
水分を自分で独占して、持てない分は処分しておきながら、その水を高値で払わせる。
ソレがコイツの生存戦略だ。
実にゲスい奴だ。俺が言うんだからよっぽどだって思うけどな。
「魔法使い諸君、一斉に土を掘り起こしてくれ。
とにかく深くだ。
このモンスターから離れたところでいい。
とにかく深く掘り続けてくれ。
それ以外のものは肉体労働だ。頑張ってくれ。」
ナナシの冒険者も多いので町長らしく喋っておく。
一見、天枯花には何の影響もない行動だ。
しかししわしわの葉をピンと伸ばして俺達が掘る穴を塞ごうとしてくるあたり、
天枯花も自分のピンチが解っているようだ。
剣士の冒険者たちがそれを止めようとして弾き飛ばされる。
しかも紙鰐や光沢蟹、血吸駱駝、竹矢兎等が寄ってくる。
こいつら、自分たちが貰える水の為に天枯花を守りに来たのか。
魔法使いは動かすことはできないので、それ以外の人員をその対処に向かわせる。
竹の矢による遠距離攻撃を持つ竹矢兎の攻撃が痛いので、こちらの弓兵で優先的に狙わせる。
ヒャクにはその合間に遊撃が無いか警戒させる。忙しい時にこそそういう要員が必要だからな。
そうやって、互いに消耗を出しながら天枯花だけが無事なこの状況についに決着点が訪れた。
「町長、根っこが見えました。
ブクブクと肥え太った根っこです。」
そうか。よくやった。
形勢逆転だ。
「弓兵と魔法使いは行動を中止。
穴の向こうの根っこにしっかりお見舞いしてやれ。」
地下に潜む根っこというには太りすぎた貯水タンクに降り注ぐ、
矢、火、風。
あっという間にその根には深い傷が入り、
ビューッと噴水のように穴から吹き出す洪水。
しかしそれは一瞬の事で、血が滲む程度に収まりながらその後は流れていた。
それに気が付いたのか周囲のモンスター達は天枯花に一斉に群がり始めた。
「良い様だ。」
当然、それは天枯花を守るためではない。
その根をより傷つけて水を啜り、自分の喉の渇きを癒すためだ。
シワシワの葉を振り回しながら抗議するように暴れる天枯花。
しかし、その声を聞き届けるものはいない。
そう、何処にもだ。
天枯花の進化前のモンスターは、永寿二葉。
数千年は生きられ、
地下深く、それこそ最大記録は1km以上深く根を張り、
其処から汲み上げた水を葉の表面から滲み出させる天使のようなモンスター。
雨が暫く降らなくても大丈夫らしい。
成長した個体は地下水にまで根を届かせている。
形体は二葉のままどんどん横に広がる。本当に天使のようなモンスター、らしいな。
だが、こうなるなら以前見かけたときに全滅させてればよかった。
天枯花に進化することをその時は知らなかったから仕方ないかもしれないけどな。
見返りもなく利用されるだけの生態に疲れて、他者を利用する生態に変わったはいいものの、
所詮お前は搾取されるだけの種族だったんだよ。
可哀想なモンスターだな、お前。




