天を討つ者
少年のような少女のような者がどんどんと机をたたいて怒り狂っていた
「くそ! くそぉおお!! 僕のエンシェントドラゴンが! 劣化版とはいえ、あんなただのビーストに!!」
この子供の名はケリル
稚戯を持って生物を操る
その気になればヒトすら操るが、ケリル自身はヒト種をひどく嫌っている
それもそのはずで、ケリルはかつてヒトに裏切られ、家族も、友人も、大切なものをすべて失っていた
ケリルの信じられるものはヒト以外の生物のみだった
「ケリル、やかましいぞ」
「ああ!? ボクの、ボクの大事な竜たちを殺されたんだぞ!」
「それはお前が弱いからだろうが。ガキがよ!」
「な!?ボクはお前より年上だぞ! ていうか、ボクが最年長なんだからもっと敬えよ!」
「そう言うこと言ってるからガキなんだよガキ」
「く、この、言わせておけば! フェンリル!あいつ殺して!」
ケリルの呼びかけに陰から美しい大上が飛び出してきた
「フン、犬で俺をどうにかできるって思ってるからガキなんだよな」
男はフェンリルという狼の首根っこを捕まえる
「く、離せ! 主、こやつなかなかやります!」
「うぐ、フェンリルはまだ力が戻ってないんだ。ごめんよ」
ケリルはフェンリルを引っ込める
「ケリル、作戦は失敗したそうだな」
「う、ラルズラール・・・」
「まあいい、こちらは順調だ。偽りの王は落ちたが、神墜としの準備は整った。間もなく祝福は呪いに反転し、信仰は神を殺す毒となる」
元勇者ラルズラール
異世界から召喚され、この世界を変えた
妖怪族王女クレナイの夫にして、奴隷制度を撤廃した者
その実力は歴代の勇者でも最強とされ、大英雄ですら相手にならないと言われていた
そして、全ての戦いを終えた彼は必ず戻るとクレナイに約束し、この世界を去った
それから数千年
もはや彼は元の世界で亡くなったのだろうと言う話になっていた
だが今現在、彼はこの世界に戻っていた
その理由は分からない
そしてクレナイの元に戻らない理由も分からず、何をしているのかもわからない
「ガブリエーラはどこへ行った?」
「知らない」
「俺も知らん。あいつのことだからどっかで人でも攫って趣味に興じてんだろうよ」
「はあ、全く」
ラルズラールは頭を抱える
「俺はまだやることがある。アルスランドに戻る」
「おう、詞天ももうすぐ戻るはずだ。こっちは任せろ。それとだ、トウゲンのあの姫が探ってるぞ。気を付けとけ」
「大英雄か。阻むなら排除するのみだ」
「お前なら万が一にも負けねえか」
個々がぶつかりはすれど、彼らの関係は一応信頼で成り立っている
天を墜とす者達
それが彼ら天死同盟だった




