鬼の姫様と敵2
アマノはハクラとクロハを宿に残し、二人をコミネに頼んでからギルドに来た
依頼内容は妖魔楔呪女郎の退治
この妖魔は恨みを残して死んだ女性の霊、一般的にゴーストと呼ばれる魔物の集合体だが、この辺りの土地は妖力が強いため、特殊な個体、妖魔となってしまったようだ
Bランクの魔物であるリッチなどと違い、周囲に呪いを振りまく厄介な存在で、相対しただけでも弱いものなら取り殺されてしまう
危険な魔物であるため、通常はAランク以上の冒険者数名で対処する存在だが、今ここには大英雄たるアマノがいる
ギルドの要請も当然だろう
「では依頼承りました。幾度か倒したことのある魔物です。時間はさしてかからないでしょう」
楔呪女郎はかつて大戦のあったこの土地に湧きやすい
そのためアマノも何度も戦った相手である
それがいるのは街から少し離れた戦場跡地、サカギの古戦場という場所
たくさんの人が死したこの場所だが、敗戦国の人々が一族郎党、女子供まで殺害された場所でもある
それほどに遥か昔の戦争はむごたらしかった
だからこそそこは恨みつらみの吹き溜まりとなっているのだろう
街を出てしばらく歩くと、石碑の立つ古戦場へとやって来た
別に夜にだけ霊が出るわけではない
こういった場所には昼夜問わず霊は出るのだ
「さて、視えていますよ」
アマノがそう声をかけると、周囲の空気が震え始めた
「オオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
奇声のような、悲鳴のような声が響く
「呪女郎、恨みは分かりますが、安生成仏いたしてください」
彼女は自身の力を使わず、神刀の一斬りを呪女郎に与える
ただそれだけ、それだけでAランクの冒険者数人でも倒すのに苦労する呪女郎は消滅した
それは優しい剣
彼女たちの苦しみを取り除き、天へと魂を還すもの
アマノは手を合わせ、彼女たちの来世に幸福多からんことを祈った
「南無」
そう一言言って、アマノは街へと戻った
依頼を受けてたった三十分
それで戻って来たアマノに、依頼は達成していないのではないか?という疑問を持つ者は誰一人としていない
彼女なれば至極当然である
受付のエリアは頭を下げ、彼女の依頼達成の速さに感謝する
「アマノ様、本当にありがとうございました。こちら依頼達成の報酬でございます」
「いりません。彼女たちに安寧を与えるのは鬼人として、聖女としては当然のことですから」
「しかし、それではギルドとしても」
「そうですね、ではそれは孤児院にでも寄付してください。聖女名義の私として。たまには聖女らしいこともしなければなりませんからね」
「はい! 本当にありがとうございましたアマノ様!」
アマノはうなづき、ギルドを出てから宿に戻った
「ふぅ、いい子にしていましたか?」
「うん!」
「はい姉様」
双子は笑顔でアマノを出迎える
その笑顔だけでアマノは疲れなど吹き飛んだ
妹こそ、彼女の癒し、そしてすべてだった
「さて、ご飯でも食べに行きましょうか。一応この宿にも食事が出るようですが、外で美味しいものを探すのもまた一興です」
アマノの提案に双子は嬉しそうに飛び跳ねた
「コミネ、お財布を持って外に行きましょう」
「はい、姫様」
一応食費は彼女に管理されている
なにせこの三姉妹はよく食べる
そのための財布管理だ
自分達の小遣いは別途もってはいるが、食費だけは三姉妹は歯止めが効かなくなる
コミネは財布をしっかりと懐にしまって、三姉妹のあとをついて街へと繰り出した




