58 メスケモ、蛇迷宮へ1
長年開いていなかった迷宮の扉がゆっくりと、埃を立てて開いていく
そして一気に流れ出て来る魔力の流れ
「うう、なんか気持ち悪い」
「大丈夫ネネコー?」
「サクラは平気なの? あれ? リーリーも大丈夫そうだね」
「まあ私達は元々魔力が高いから抵抗力もあるのよ」
魔法の使える二人はこの魔力の流れの中でも全く問題なさそう
僕とフェディはそこまで魔力が高いわけじゃないから少し気分が悪くなる
「さあ諸君! 行こうではないか!」
我先にとベルが走って行く
ただぬいぐるみの体なので走っても恐ろしく遅かった
「駄目だよベル。サクラが抱っこして運ぶから行かないで」
トテトテ走るベルを捕まえサクラが満足そうに抱っこする
何この可愛い生き物
と、なごんでもいられなかった
内部はいきなり毒沼になっていて、踏んだらアウトだとありありと分かった
リーリーが直ぐに結界を張ってくれた
普通に歩けるようになったから進んでいくけど、毒沼の中には大量の毒蛇がうねっていた
「うわぁこれはちょっと、さすがに気味が悪いな」
「姫、私が背負いますが?」
「いやいいよ」
フェディの手つきが少しやらしかったから断った
僕より小さいフェディだけど、僕を背負えるくらの胆力はある
「蛇どうしよう? 歩いたら噛まれて終わりっぽいけど」
「ここの蛇毒なら大体は解毒できるけど、私が知らないのも混ざってるわね。うわぁなにこの紫色の毒々しい蛇は」
入っていきなりこれなんだもん、そりゃ閉鎖されるよ
「とりあえず、サクラ、焼き払ってくれる?」
「え、ダメだよリーリー、蛇さん可哀そうだよ」
あだめだこれ、こんなキラキラした目で見られたらやってなんて言えない
だけどどうしたものか、これじゃあ先に進めないし
「ネネコー、この魔法は?」
いつの間にか本を取り出しページをめくっている
サクラが開いたページには睡眠魔法のことが書かれていた
「なるほど、眠らせて通ればいいのか」
「やってみるね。ヒュプノス」
ふわりと泡のようなものがサクラの手から出ると、それが弾けてうねくりのたうっていた蛇たちがスヤスヤと眠り始めた
「すごいねサクラ、ありがとう。それじゃあサクラは僕の肩に乗って、蛇たちを踏まないよう気を付けて行こう」
「ネネコちゃん、私も背負ってほしいなぁ」
「リーリーは大人でしょ、頑張って」
「最近私に当たりが強い気がする」
グチグチと文句を言いつつも僕のあとをついてくる
蛇をゆっくりとどかしつつ、足の踏み場を作って進む
「サクラ、この魔法どのくらいもつの?」
「30分くらいー」
かなり長い時間大丈夫そうだ。でも先が見えないから緊張しながら進んでる
「リーリー、魔物の気配はある? 蛇の匂いが強くて分からなくて」
「あるけどもう少し先。あ、蛇の群れが途切れてるわ」
眠る蛇たちの先には変な模様のソファが置いてある
それもかなり長いソファ・・・
「ねぇリーリー、このソファっぽいのって」
「ネネコちゃん、それソファじゃないわ。滅茶苦茶大きな蛇の胴体よ!」
よく見るとズルズルと動いている
これ一体どれほど大きな蛇なの?
故郷にいた蛇でもここまで大きくはなかった
胴回りだけで六メートルはありそう
「姫、扉がありますよ」
蛇の胴の先に扉がある
「よじ登っても大丈夫かな? 襲われない?」
「顔が見えないもの、もし気づかれたとしてもこっちまで顔を出すのにかなり時間がかかりそうよ」
ひとまず蛇の胴を登る
なんかすべすべで冷たくて気持ちいい感触
何とかよじ登って扉の前に立った
「ネネコー! おっきい蛇動いてる!」
這うスピードが速くなってるってことは、顔が出て来るかも
急いで扉を開いて中に入った
「ふぅ、ドキドキした。あんなのどう戦ったらいいんだよ」
「落ち着いてられないかも、あれ見て」
リーリーの指さす方を恐る恐る見ると、真っ赤な蛇が舌をチロチロと出してこっちを見ていた
大きさは全長十五メートルはあると思う
口から覗く牙はまるでサーベルタイガーのような大きな牙で、一噛みで僕の体もくし刺しにできそうだ
「これはいきなりすごいのが出たわね。アシッドレッドパイソン、Bランクの魔物で、あの大きな牙で獲物をくし刺しにして喰らうの。でも本当に怖いのはその名の通り、酸を吐き出して溶かすことにあるわ」
こいつの酸はかなり強力で、鉄でも溶かすわらしい
まあでもあの大きな蛇を見た後じゃあ怖くないかも
「よし、やるか!」
さっき眠らせた蛇たちは動物、こっちは魔物
魔物と動物の違いは魔石を持っているか持っていないかの違いで、魔物の方は人に危害を加えることがまるで使命かのように行動する
まあ中には変わった魔物もいて、人に飼われている魔物もいるみたい
で、目の前の魔物はしっかりと僕らを敵視している
涎まで垂らして、獲物が来たことを喜んでいるようだ
「フェディ」
「はい、姫」
僕とフェディは他二人を守るように前に出てレッドパイソンとの戦闘を開始した




