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大好きなメスケモになりました  作者: 香草(かおりぐさ)
1章

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45/94

45 メスケモ、教団と戦う18

 僕は小さなころ母を魔物に襲われて亡くした

 父はそれは神による試練だと言った。確かにそう言ったんだ

 こんなに悲しいことが試練なら、こんなに苦しいことが試練なら

 そうだ、幸せを手に入れるために必要なことなら、僕が母を失ったことにも納得がいく

 苦しい。けれど父も同じ苦しみを味わっている

 乗り越えていかなきゃいけない試練なんだ

 

 数年後

 この数年で僕も父と共に信者たちの悩みを聞いていた

 将来僕は教団を継ぎ彼らの心を救わなくちゃいけない

 未だ癒えないこの悲しみも、信者たちの苦しみも抱えて生きて・・・

 生きてどうする?

 神が課す試練が苦しくて辛いものならば、その先に進むことに本当に意味はあるのだろうか?

 そう思い始めた頃に僕は神の声を聴いた

 その威厳に満ちて心を揺さぶる包み込まれるような声は、まごうことなき神の声だ

 僕はその声に耳を傾ける

「試練を、全ての者に試練を与えよ。死の試練を、死を持って世界の人々を救え」

「ああ、ああああ、ありがとうございますヴァシュルア様! 必ずや、必ずや」

 神の声は僕に様々なことを教え、父が間違っていることに気づいた

 だからまず父を殺した

 間違った教えだけれど、これで先ず一人、ヴァシュルア様の元へいざなわれたんだ

 母もきっとそこにいる


 声はいつでもそばにあった

 だがたまに僕は間違えていると止める声もした

 恐らく与える死のやり方を間違っていたのだろう

 だから僕はヴァシュルア様の声を忠実に聞く肉人形、ジュアコザの制作に取り掛かった

 神が教えてくれた人と魔物を繋げる秘術

 教団の信徒も役に立てることを喜んでいた


 記憶を見た

 ワズムの記憶だ

 最初の悲しみは理解できる

 大切な人との別れってやっぱり辛いだろうから

 でもおかしいのは、そこでは彼は歪んでいなかった

 おかしくなったのはヴァシュルア様の声を聞いてからだ

 いやあれは多分ヴァシュルア様の声じゃない

 かの神の声は恐らくワズムの凶行を止めていた方

 じゃあ、あの声は、誰だ・・・?


 フラッシュバックのような記憶の流れは消え、僕は眼を見開いてワズムを見る

 いつの間にか彼の動きも止まっている

 そして彼の体からまるで憑き物が落ちたように力が抜けていって、元の青年に戻った

「僕は、この力で、ただ苦しむ人々を救いたかっただけなんだ」

 彼の誰かを救いたいという思いは本物だろうね

 ただやり方は大きく間違っていた

 記憶では親身になって人々に寄り添っている彼の姿が見えた

 それが本来の彼の姿なんだと思う

 誰かに変えられてしまったんだ

「やっぱすごいなネネコ。まさかあの状態の教団員たちを元に戻せるなんて。よし、お前はあたしの権限でランクアップさせてやる!」

 戦いは終わったんだ

 教団も狂った教祖がいなければまともに活動してくれると思う

 こんどこそ、本当に人々を救う宗教に

「それで、被害者たちはニャード教が何とかすると思うけど、こいつはどうするんです?」

 リーリーの質問も最もだ

 こうして被害者たちも助かったことだし、ワズムの今後だ

 被害者が多いことだし、もう外には出れないだろう

「ワズムはこちらで預かる。ここの調査もしないとだし、それに・・・」

 アビィーさんが被害者たちの方を見る

 彼らはどう見ても一般信徒たちだ

 ここには、暗殺者らしき人も、研究者らしき人もいない

 ここに来る道中に研究室のような場所があった

 ワズム一人で魔物と人間を合成するなんて研究が出来たとは思えない

 つまり研究者や、クラウベルさんを襲った暗殺一味がいないんだ

 分からないことは考えても仕方がない

 あとはギルドに任せることにしよう

 そう思っていると突然扉がバーーンと激しく開いて、というより扉が吹っ飛ばされて、大きな人影が飛び込んできた

「大丈夫ですか皆さん! 助けに来ましたよセヤアアアア!!!!」

 剣と盾を構えて僕に突撃してくるその人影

 よく見ると狼種のビーストの女性だった

 背は僕より低いけど2メートルはある

 そんな彼女の攻撃を大剣で防ぐと、アビィーさんが慌てて割って入った

「待て待てフェディ。こいつは味方でお前の後輩だ! 早とちりで攻撃するな!」

「あ、アビィーちゃん」

「アビィーちゃんじゃないよ! 将来のSランク候補を殺そうとするんじゃない!」

 このあわてんぼうの狼お姉さん

 どうやらアビィーさんが応援で読んでいたSランク冒険者、王天獣のフェディ・ハートレッドさんらしい

 明らかに他の冒険者から五つ頭ほど抜きんでている

 今の受けた一撃がアビィーさんの声で止まってなかったら、僕は大剣ごと真っ二つになっていたかもしれない

 ひとまず被害者たちも連れて、ワズムが吐いた外への転移紋のある部屋へ向かう

 十人ずつしか外に出れないため、時間をかけてゆっくりと全員外へ連れ出すことができた

 さて、帰ったら今日はゆっくり休もう

 神獣の力って使うととんでもなく疲れるし、お腹が減るんだよね

 で、リーリーたちと帰ろうとすると、僕はフェディさんに腕を掴まれたのだった

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