36 メスケモ、教団と戦う10
この世界には数ある伝承や絵物語がある
その中でも一番人気で一番信ぴょう性が高い神話
それが神獣キャトラニェリアの伝説
豊穣と光をつかさどるニャードリーア様が遣わした神獣は白い猫の姿をしている
その猫が現れたとき、世界が救済されると伝わっていた
しかし今そこまでの乱世はない
かつての勇者が世界から差別をほぼ取り去ってからほとんど問題は起きていない
それなのに突然現れたあの白猫のビースト
その姿はどこか神々しくもあり、本当に神話が体現されたかのような思いだった
そして彼女は私を救ってくれた
命ついえようとした私を
「聖女様、ご報告です」
ギルドからの定期報告が来た
それはヴァシュルア教団の動向を探るものと、私を守るためにこの街にとどまってくれているあの子のこと
今回は後者だった
ギルドマスターからの報告で、彼女はビーストらしい怪力も持ち合わせているほか、今まで見たことないような力も発揮していたらしい
彼女が口にしたその力は、神獣
やはり間違いない。あの子は女神ニャードリーア様が遣わした、伝承の白い猫様、キャトラニェリア様だ
でもあの子は恐らく自分がそうであることは知らない
それに今の暮らしを守りたそうにも見えた
聖女認定はきっと受けてはくれないでしょう
だから、この事はそっと胸の内にしまうのです
数日後、エルフの少女が目覚めたと報告があった
僕とリーリーはすぐにその子に会いたいと申し出た
「こちらですぅ」
エルリィさんが案内してくれたのはギルドの客室だ
本来はギルドに来た客人が泊まるための部屋らしい
僕は扉をノックして開いた
中にはベッドに腰かけているエルフの少女
よく顔を見ずにつれて帰って来たけど、かなりの美少女だ
その子は僕を見ると直ぐに立ち上がって駆けだし抱き着いた
「猫さん!」
見た目通りまだ幼いみたい
多分8歳くらい?
その子は僕の毛に顔を埋めてぐりぐりと顔を押し付けて来る
「あの、えと」
「その子は名前すら覚えてないようだぞ。完全に記憶がない。あたいの部下に記憶を戻すことのできる魔導士がいるんだけど、そいつでもダメだった。記憶喪失なんかじゃない。完全に記憶が消えているんだ」
「そんな事例聞いたことありません! 一体どうして」
リーリーでも知らない事象?ってことか
これはかなり骨が折れそうだ
「この子はどうするんです?」
「一応全てのメディカルチェックはクリアしてるよ。うちの魔導士を総動員しておいたからね。健康そのものだけどさ、記憶がないから名前もない。誰かつけてあげなよ」
名前、名前か
エルフの少女だしなぁ、可愛い名前がいいなぁ
彼女は神の色が薄紅色で、まるで桜の花びらのようだ
「サクラ、はどうかな?」
安直かもしれないけれど
「サクラっていうのは花の名前で」
「ああ、鬼人たちが住む島国にだけ咲く花の名前ね」
どうやらこの世界にもサクラはあるらしい
「サクラ? なにそれ?」
エルフの少女はふしぎそうに尋ねる
「君の名前だよ、サクラ」
「サクラ、私の名前? 私が、サクラ・・・? 分かった! 私サクラ!」
凄く喜んでくれてる
この子は記憶がないことが怖くないんだろうか?
言葉は覚えているけれど、自分のことが何もわからないなんて・・・
サクラは笑顔で僕をよじ登って肩に座ると、猫耳をモフモフし始めた
「ちょ、そこ弱いから、らめえ」
この子すごいテクニシャン・・・
「なんだか懐いてるし、お前が面倒見たらいいんじゃないか?」
「い、いやいやいや無理ですよ! 僕故郷のこの中で最年少だから子供の面倒なんて見たことないですよ!」
有無は言わされなかった
とんとん拍子に僕がサクラの面倒を見ることが決まった
どうするのよ、依頼とか受けないといけないし
そう思っていると
「依頼の間はギルドで預かるよ。あたいが面倒見とくから大丈夫」
確かにそれなら大丈夫かも
アビィーさんにも懐いてるっぽいし
「分かりました。大人になって独り立ちするまではしっかり面倒見ますよ」
こうなったからには責任はしっかり果たさないと
成り行きだけど僕には子供を育てるという責任が・・・
今のこの体の年齢で言うと僕とサクラってそんなに年齢変わらないんだけどね
いやビーストは10歳で成人だから、おかしくは、ない?のかな?




