31 メスケモ、教団と戦う5
さて、ジャビの目撃された街道から外れた森に来てみたけど、たしかにこれはヤバイ
報告されていた数の倍、いや三倍はいそうだ
このままだと街道まで溢れてきて旅人や商人が危険だよ
「リーリー、やろう」
「ええ、私が魔法で援護するから引き付けて」
「オッケー」
蛇の群れに飛び込んで直剣で斬りさいていく
大剣だと小回りが利かなくてこっちの方がいいからね
「毒に気を付けて!」
「うん!」
まずは力を試してみようとしたけれど、使い方が分からない
「力、力出て!」
だめだ、魔法みたいな感じかと思ったけどどうも違うみたい
仕方ない、力の使い方はあとでクラウベルさんに聞いてみよう
会いに来てもいいって言ってくれたしね
毒液を吐いてくるのを避けて剣で斬って斬ってとにかく斬る
「ネネコちゃん!」
「よしきた!」
大きく飛び上がって蛇の群れから逃げると、そこに大きな火炎球が撃ち込まれる
「どう? 特大のフレアボムよ!」
「どうじゃないよ! 周りの木まで燃えてるじゃん!!」
「しまった! アクアウェーブ!」
大量の水が燃える木々を飲み込みいっきに沈下した
蛇の群れも大幅に減っている。これならいける
「この! えい!」
残った蛇は十数匹ほど
簡単に剣で対処できた
Dランクだけど、それは毒に対処できない場合だ
僕なら吐き出してからでも余裕で避けられるから大丈夫
「これで最後っと」
残った一匹は必死で逃げようとしていたけど、そこを剣で突いて倒した
「ふぅ、これで終わりかな? クンクン」
匂いを嗅いで周囲に敵がいないことを確認して討伐証明部位の牙を集めて行く
毒腺があるから気を付けながらね
「こっちは終わったわ。ネネコちゃんは?」
「もう少しー」
牙の数は56個か
結構な数のジャビだったな
あとは戻って報告するだけ
だけれども
「リーリー、何か来る」
「え!?」
危険な匂いが迫ってきているのを感じた
「この感じ、あの悪魔みたいな」
蛇の死体の山の上にドスンと何かが落ちて来た
その姿はヤギ頭の黒い人型の何か
いやこれは多分あの悪魔と同じ
「ネネコちゃん。これ悪魔よ。しかも公爵クラスの!」
前の悪魔は子爵クラスというやつだった
待って僕その階級知らない
どっちが上!?
「来るわネネコちゃん!」
なんでこんなとこに悪魔が来るのか知らないけれど、これもまたあのマジックアイテムみたいなので呼び出されたのかな?
ともかくなんかヤバイ
絶対ヤバイこいつ
「ビーストか?」
「ひぃっ喋ってる!」
「いや喋るが? 悪魔だって喋る」
「あ、それはどうもすみません」
悪魔はなんだかばつの悪そうな顔をしている
「そのなんだ、こっちで強い力を感じたから見に来たのだが、お前、聖女か?」
「いえ僕は違いますね」
「ではお前が?」
「いえ私も違います」
首をかしげる悪魔
彼?なのか彼女?なのか分からないけど、あの時の悪魔とはまるで違う
確かにかなりの力を感じるけど、そもそも敵意がなかった
「ふーむ、いややっぱりお前から感じるぞ。我が愛しの女神の気配を」
「へ?」
「あの方と交信できないか!? 我の愛を伝えたいのだ!」
「あ、悪魔が女神様に愛を?」
「いいかビーストの少女よ。愛は種族を超えるのだ!」
悪魔なのになんかすごいなこの人?
「やれるか分からないですけど一応ちょっとやってみます」
「おお、助かる!」
悪魔はワクワクとした顔で僕を見てる
やめて、ごつい顔なのにそんなつぶらで純粋な瞳で見ないで
頭の中で一応ニャードリーア様に声をかけてみる
すると
(おお我が信徒よ。何用なのです?)
(あ、その口調なのですね?)
(あそっか、あなたならいっか。どうしたの?)
(それが悪魔さんが、あなたに愛を伝えたいと申しておりまして)
(え? あ、そいつか。うん、まあ顕現して数百年経ってるけど、悪さはしないし、なぜか私に忠誠を誓ってくれてるし、この辺りの警備を任せてたのよ)
どうやらこの悪魔に危険はなさそうだ
女神が認めてるんだからね
「悪魔さん、交信できたよ」
「おおおお! ありがたいありがたい。ビーストの少女よ、繋いでくれ」
「はいはい」
悪魔さんと女神様の交信を繋げた
なんかできた
何やら悪魔さんは頬を赤らめ、恥ずかしがりながら愛を伝えているように見える
そしてしばらくすると悪魔さんが交信を終えた
「ありがとうビーストの少女」
「あの、僕ネネコって言います」
「おお、そうか恩人のネネコ殿。我はこの王都を守護する悪魔メリー。これでも公爵の悪魔である」
エヘンってしててなんかかわいいなこの悪魔
その後メリーさんが色々と話をしてくれたけど、九割ニャードリーア様への愛の言葉だったから要約すると
数百年前に他の公爵クラスの悪魔にやられて怪我をしていたところを、たまたま何かの用事で降臨していたニャードリーア様に助けてもらったらしい
この世界、別に悪魔と神は対立しているわけではないけれど、一応悪魔は人間に危害を加える魔物の一種で、しかも軒並み強いと言われている
で、助けられたメリーさんは女神様に一目惚れして忠誠を誓ったらしい
うんまあ危険がないなら悪魔さんには引き続きここを守ってもらおっかな
あ、そう言えばこの事って街に伝わってるのかな?
(心配ないよ。お告げでその子のことは伝わってるから)
知らないのは他の街から来た僕らだけか
「ではビーストの少女よ、ありがとう、機会があればまた会おう」
メリーさんはそう言うと翼をはためかせて去って行った
「うう、怖かったよネネコちゃん!」
リーリーは僕に抱き着いてまた匂いをクンクンと嗅いでいる
取りあえずまあ無事終わったから帰ろうか




