27 メスケモ、教団と戦う1
暗闇の中男は目を閉じ交信する
相手は自らが崇める神
だが男は神の告げる言葉を聞くことはない
「ああ、我が神よ、大丈夫です、大丈夫なのです。これはあなたが与えたもうた試練。世界中の者に試練を与え、あなたの元へと送ります」
男の祈りは神にと届いているが、神はその言葉を拒絶し怒りをあらわにしている
だがその怒りすら男は試練と考えた
「聖女をあなたの元へ送るのには失敗しましたが、まだ手はあります」
神の言葉が男の心に響くことはなかった
王都に来てから二日が経った
その間街は平和だった
僕とリーリーは街に宿を取り、王都ギルドで依頼を選んでいた
さすが王都だけあって依頼の数も半端じゃない
でも教団に関すると思われる依頼はなかった
ギルドで情報を聞いてみても、他の街で被害があったくらいしか情報がない
その犯人も捕まえると呪いで死んでしまい、情報が得れない
「八方ふさがりってこの事なのかな?」
「そう決めつけるのはまだ早いわよ。ほらこれ見て」
リーリーが指さす依頼書には行方不明者の捜索と会った
昨日はなかったものだ
「えっと、昨日から行方不明の子供の捜索をしてほしい。性別は男、年頃は10歳、僕と同い年か」
「え!? ネネコちゃん10歳だったの!?」
「ビーストは成長早いんだよ。一応もう大人だよ。赤ちゃんだってできるんだから。そんなことより、子供が行方不明って一大事じゃない。なんで誰も受けないの?」
「たぶん報酬ね。銀貨一枚じゃよっぽどの聖人じゃないと受けないわよ」
宿に一日泊まれるかどうかって値段か
僕はその依頼書を持って受付へ向かった
「あのこれ受けたいんですけど」
「はいー、えっとぉ、これ受けるんですかぁ?」
何だか聞き覚えのある声だ
受付嬢の顔を見ると、メメリィさんだった
「え!? メメリィさん!?」
「あらぁ? お姉ちゃんの知り合いぃ?」
どうやらここの受付嬢にはメメリィさんの妹がいたみたいだ
それにしてもあまりにもそっくりで、違いと言えば髪の分け目と色くらい
メメリィさんは金色、彼女は赤色なんだよね
「私はエルリィ。お姉ちゃんとは双子なのぉ」
話し方までそっくりだ
「で、この依頼なんですけどぉ、本当にお受けになるんですかぁ? そのぉ、正直報酬があまりぃ」
「いいんです。子供が攫われてるんでしょう? この鼻で見つけ出してみせますよ」
僕は依頼を受けて依頼主の所へ向かった
場所は街の平民区で、そこのさびれた場所にある小さな家だった
扉をノックして声をかける
「すみません、依頼を見てきたのですが」
扉がゆっくりと開いて、まだあどけなさの残る女性が現れた
「ああ、依頼を受けてくださるなんてありがとうございます!」
その女性がどうやら依頼をくれた人みたいだ
「私はレアナ。息子が昨日ディルクの森に行ったきり帰ってこないの。あの森には特に危険な魔物も出ないから、安心して送り出したのに・・・。ああ、ついて行ってれば」
息子さんの名前はトール
母親想いのいい子で、レアナさんが働きに出てる間は家での家事を全てしてくれて、たまに森に花を摘みに行ってプレゼントしてくれる
父親は既に病気で他界していて、二人暮らしだったそうだ
「何かトール君の匂いがついたものってあります?」
「これを」
レアナさんが持ってきたのはトール君の服だった
その匂いを嗅いで追跡を始めた
「ねぇネネコちゃん。私の魔法で追跡できるんだけど・・・」
「早く言ってよ! そう言えばチェイサーの魔法あったね! 忘れてました!」
すでに四つん這いになって匂いを辿ろうとした僕はすぐ立ち上がってリーリーに文句を言った
リーリーはトールの服を持ってチェイスと唱えた
蝶が舞い上がって僕らを案内するように飛ぶ
「追おう。レオナさんはここで待っていてください。必ず見つけて連れて帰ります」
「よろしくお願いします」
僕が必ず連れて帰ると言えたのは、トールが死んでいないからだ
リーリーの使うチェイスという魔法は対象が生きていないと発動できないらしく、これが上手く発動したってことは彼は生きている
発動しなかったら、残念だけど、僕の鼻で匂いを辿って・・・
蝶のあとを追っていくとやはり森の中へと入って行った
レオナさんが言っていたディルクの森だ
この森は出てくるとしても角兎やスライムと言った一般人でも倒せるような魔物くらい
子供でも倒し方さえわかっていれば危険はない
蝶はしばらく森の中を進んでいき、森の中の道を逸れて森の奥へと飛んでいく
「ねぇリーリー、なんか変な匂いが混じってる。トールと一緒に奥へ行ってるみたい」
「どんな匂い?」
「たぶん人間の匂いだけど、香水?みたいな匂い」
蝶はひらひらと舞って森の奥へ奥へと僕らを導いていった




