21 メスケモ護衛になる9
二軒隣の店だって言ってたっけ
確かに武具屋って書かれた看板が出てる
扉を開いて中に入ると、気の良さそうなおじさんが出迎えてくれた
「お、冒険者だね。どうぞ見てってくれ、剣も防具も、お嬢さんが使えそうな杖もそろっているよ」
確かに品ぞろえがすごくいい
おお、ミスリル製の剣まである
でも今は見ている場合じゃない
「あの、お聞きしたいことがあるんです。ここ数日で矢を買った人っています?」
「ああ、二人いるね。一人はエルフの冒険者で、もう一人はローブを深くかぶった男だったかな。多分人間だと思うけど。でもそれが何か?」
「実は」
僕は経緯を店主であるベックさんに話した
「なんてこった、聖女様が・・・。できうる限りの協力をさせてもらうよ。実はエルフの冒険者は知り合いでね。彼は絶対にそんなことはしないと言い切れるよ。ただ、もう一人の男は、明らかに怪しかったと思う」
「どんな顔だったの? 私これでも似顔絵くらいは描けるから、特徴を教えてくれたら人相描きを描くわ」
「それが、不思議なことに顔が思い出せないんだ。確かにローブで顔を隠してはいたが、顔は見たはずなんだ。それなのに靄がかかって思い出せない・・・」
「あーそれは多分認識阻害の魔法だね。記憶に影響するタイプだと結構高度よ」
リーリーは流石にこういったことには詳しい
「手掛かり途絶えちゃった」
「いや待ってくれ、そう言えばゴミ捨て場はどこか聞いてきたぞ。なぜ行きたいのかは分からなかったけど、何か手掛かりにならないか?」
「なるほど、確かに向かった場所が分かれば何か痕跡があるかも。ありがとうございますベックさん」
一応有益そうな情報は得れた
普通の買い物なら別に認識阻害の魔法を使うことはないはず。後ろめたいことがあるから使ったんだろう
「リーリー、行こう」
「ええ」
ゴミ捨て場は街の外れにある
街中にも一応あるけど、それらを集めた大きなゴミ捨て場があるみたい
そこに向かったという謎の男
急げば何か情報が得られるかもしれない
駆け足になってゴミ捨て場に急ぐと、ごみを捨てる業者さんらしき人達が作業をしていた
「そっち消臭魔法お願い。あ、ディード、燃えるのはこっちだって言ったでしょ!」
現場監督風の褐色の女性が指示をしている
「あの」
「なに? 忙しいから用件は手短にお願い」
「ここにローブを被った変な男来ませんでした?」
「うーん・・・、あ、昨日ゴミを捨てに来てたわ。折れた木の棒だったかな? 怪しかったから覚えてるよ」
その男は燃えるゴミの方に折れた木の棒と、ひものようなものを捨てて足早に去って行ったらしい
話をしてくれた監督官のロシュさんは、もし何か犯罪に関係している物を捨てていてはいけないと思い、なんとその木の棒を拾って保管しておいてくれたのだった
「はいこれ、本当は衛兵に渡そうと思ってたんだけど、聖女様の護衛だって? あたしの父さんさ、聖女様に病気を治してもらったんだ、あんなすごい方、中々いないよ。それを命を狙うなんて・・・。どうかその犯人捕まえてよ!」
棒はうまく削ったりして分かりにくくしてあるけど、明らかに弓だ
「ありがとうロシュさん」
「いい手がかりを見つけたわね。これさえあれば私が追跡できる」
「え? 匂いを嗅いで追跡とか?」
「私を何だと思ってるのよ! ビーストじゃないんだからそんなことできないわよ!」
「だっていっつも僕の匂い嗅いでるから、てっきり得意なのかと」
「いいから見てて、チェイサー!」
リーリーが指を弓の残骸に向けると、そこから光る蝶が現れてふわりふわりと飛び始めた
「追うわよ!」
これは追跡魔法のチェイサーというものらしい
補助魔法では中級の魔法だけど、精度が難しいらしくて、熟練の魔法使いじゃないとちゃんと追跡できないらしい
まあリーリーなら精度は折り紙付きだと思う
優雅に舞う蝶を追っていくと、街の中に入って行った
「まさかまだ街にいるなんてね。いえ、失敗したからまた狙ってるのかも・・・。ネネコちゃん急ぐわよ!」
狙いは十中八九クラウベルさんだ
蝶は明らかに治療院の方へと向かっている
僕らははやる気持ちを抑え、出来るだけ急ぐ
「リーリー、ちょっとごめん」
僕はリーリーを抱えてさらに速度を上げた
「あふぅ、これは役得役得すぅううはああああ」
「投げるよ」
走って走って、治療院へと戻って来た
一応護衛で冒険者がついているけどなんだか胸騒ぎがする
出入口の扉を勢いよく開いてクラウベルさんが眠っている部屋へと駆け込む
そこでは今まさに剣を振り下ろそうとしている・・・
「あなたは・・・、理解したよ。まさか護衛に紛れていたなんて」
クラウベルさんを手にかけようとしていたのは、ここまで一緒に護衛をしてきたソロ冒険者のルケラという男だった
「ちっ、もう嗅ぎつけたか! だがもう遅い!」
剣先がクラウベルさんの胸に刺されそうになる寸前
「フレアバレッド!」
僕らの後ろから声がして炎の弾丸が撃ちだされ、ルケラは吹っ飛ばされて壁にたたきつけられた
「はぁはぁ、クラウベル様!!」
そこに立っていたのはクラウベルさんお付きのシスターであるシェリーさんだった
中級魔法をこれほどの精度で操れるって、この人クラウベルさんの護衛も兼ねてたのか
「シェリーさん大丈夫、クラウベルさんは無事だよ」
「ああ、良かった・・・。本当に良かった」
シェリーさんは彼女に駆け寄って抱きしめた
するとクラウベルさんはゆっくりと目を開いた
「シェ、リー・・・」
「クラウベル様、意識が戻ったのですね!」
シェリーさんは大粒の涙を流して泣き始めた
無事クラウベルさんの意識も戻ったし、後はこいつからいきさつや理由を聞きだすだけだね
今度は呪いが発動しないようリーリーが呪いを解いた
これで死なれる心配はない




