2 メスケモ旅立つ1
平和な生活が続き、やがて僕は成人した
いっぱしのビーストになったんだ
年齢は10歳
人間で言えばまだほんの子供だけど、ビーストは10歳で充分に大人だ
当然子供もできるわけで、うんまあ、それなりの準備もできている
そこはまあ置いておいて、僕は集落から旅立つことになった
別に成人の儀とかじゃなくて、僕が世界を旅してみたいと思ったんだ
何せこの世界のことはほぼ分からない
この開拓地だった集落はかなり昔に他の国と隔離されている
なぜここを開拓して隔絶した生活をしているのかは、父さんも母さんも知らなかった
それに、集落の外のことはほとんど何もわかっていない
現に僕はこの集落と、種族のことくらいしかわかっていない
国があることは分かっているけど、どんな国があるかもどこにあるかもわからない
分からないことだらけだ
それなら見て回るのが一番早い
「う、ぐすっ、頼むから行かないでくれネネコ~」
「父さん、僕はもう成人したんだ。これからは自分の力で生きて行ってみるよ」
「気を付けるのよネネコ。悪い男に引っかからないように。父さんみたいなイケメンを捕まえて来るのよ」
「母さん、僕は別に婿探しに行くわけじゃないから」
「なんだと! 父さんそんな男認めんぞ! 少なくともネネコを倒せる相手じゃないと!」
「父さん、そこは父さんを倒せる相手じゃないの?」
「いや、お前は俺より強い!」
情けないことを堂々と・・・
でも、この両親の元に生まれれて良かった
もちろん旅に出てもちゃんとここには帰ってくるつもりだ
故郷だしね
翌朝になって準備を終え、父さんと母さん、そして集落の人達に別れを済ませる
まあ取りあえず一か月ほど旅をしたら戻って来よう
「あの父さん、旅立てないんですけど」
「やだあああ、父さんを置いて行かないでくれえええ」
ガツン
父さんは母さんに殴られてそのまま引きずられて行った
「ネネコ、本当に、くれぐれも、男選びは慎重に、お父さんみたいな誠実でかっこいい人を連れて来るのよ」
「だから無辜探しじゃないんだってば」
まあ愛の深い両親で本当に良かった
みんなに見送られ、僕は旅立った
まず目指すは、どこかわかんないけどとりあえず近くの街か村だ
当てもない旅になるかも
街道も見当たらないし、本当に、全然何処に行けばいいのか分からないやハハハハ
ふぅ、といあえずまっすぐ進むしかないか
この大剣なら大抵どんな魔物だろうと倒せるし、大丈夫
しばらく進んでみたが、本当に一向に森が終わらない
森が、ずっと森なんだ
森森森、どこまで行っても森森森
果てしない緑
道中魔物がたくさん出て来るけど、大剣で難なく倒せた
そう言えばこの大剣、名前があるそうだ
その名もビーストテイル
獣の尻尾って意味なんだとか
父さん曰くまだ真の力は発揮できていない
ビーストテイルの力が完全開放できれば、その力は神に匹敵する、と、伝わってるんだとか
あまりにも過剰な気がする
取りあえずは今、持ち前の身体能力と大剣の切れ味で何とかなってるけど、もしかしたらこの先もっと強い魔物も出るかもしれないし、この世界を知らないから、対人戦もあるかもしれない
情報がない分いつ何が起こるかもわからない
それでも僕のこのワクワクが収まらないのは、この体になったせいかな?
ビーストという種族は勇気とその体の強さにある
でもこの世界にいるという種族を僕は人間、ビースト、エルフ、ドワーフ、オルグしか知らない
他にもいるとの話で、父さんも母さんもよく知らないとか
本当に、外界との接点が何もない集落だった
僕が暮らした10年で一切他の場所の誰かと接点がなかったんだから、世界から僕ら以外の人がいなくなったのでは無ければ、集落が本当に、世界の果てだったのかな
数日歩いたり休んだり寝たり起きたりして、ようやく人の痕跡を見つけた
痕跡って言うか、切り開かれた道を見つけた
木々が切られて草や藪も刈られてる
これなら道に沿って行けば街ないし村があるはず
そこまで行けばきっといろいろと情報が入る
とにかく情報、情報が欲しい
ウキウキと、スキップを交えながら街道を進んでいく
その途中で車輪跡を見つけた
これはもう確実に人がいる
それにこの車輪跡、そこまで古くない
雨が三日前にふってたし、少しぬかるんでいることから、その三日の間に通ったんだと思う
いやぁ僕そこまでの知識がないからこれが正しいとか正直分かんないやハハ
まあそのうちどっかにはつくでしょ
そうしてとにかく歩いてやがて、村に着いた
恐らく人間の住む村だ
匂いが僕達ビーストと違うし多分人間
てかエルフとか他の種族の匂い知らないし、希望的観測としてなんとなく人間で!
突然ビーストとか人間みたいな知ってる種族以外に会うの、怖い
ともかく村に入ってみよう
村には人が結構いる
やっぱり人間ばかりだ
「あの」
声をかけてみる
「お、なんだビーストのお姉ちゃん。旅してるのかい?」
「え、えと、僕・・・」
「宿なら一応あるけど、それにしてもお姉ちゃんおっきいなぁ。宿のベッド使えるかな?」
最初に話しかけたおじさんはかなり気さくな人だったけど、集落以外の人に話しかけるのはなかなか、元々人見知りの僕には難しい
「ほらこっちこっち、宿はこっちだよ」
おじさんに手を引かれ、宿に連れてこられた
宿はこじんまりとしていて、確かに身長が3メートルに近くなってる僕じゃ狭い、なこれ。無理だこれ
「うーむ、さすがに無理だったか。だったらあっちの馬小屋で良ければ、柔らかい干し草もあるから」
おじさんすごく優しい
馬小屋に案内される頃には、僕の元に村人たちが集まって来ていた
「ビーストの旅人さんなんて珍しい。旅の話を聞かせてください」
「まぁなんてきれいなビーストさんなんでしょう。どこから来たの?」
みんな大きな僕を怖がるどころか、なんだかすごく人気者に
ご飯も用意してくれて、その日はお腹いっぱいでほくほくと眠れた
でもこの世界が差別とかなさそうで良かった




