1 メスケモ好き、メスケモになる
僕はメスケモが大好きだった
メスケモってのは、その名の通り、メスの獣、人によって違うけど、動物型から人型と幅広く、今では性癖の一つと言っていい
僕は人型で、顔も獣っぽいのが好きだったんだ
何故過去形で語るのかって?
それはもう僕が人じゃなくなったからかな
感覚で数時間前、いや、数分前かも
僕は野良猫に気を取られ、信号が赤なのを気づかずにわたり、車に轢かれてしまった
完全に僕が悪いけど、頭を思いっきり打ったのが分かり、そこで僕の意識は途切れた
そして目が覚めると、見知らぬ植物が生い茂る山の中にいたんだ
辺りを見渡すと、猫や犬の顔、鹿や熊の顔をした人型の何かが跋扈し、僕はその中の猫顔の女性に抱えられていた
「あら、目を開けたわ」
日本語か? いや全然違うな。全く未知の言語なのになぜだか理解できた
「おお、なんて愛らしいんだ」
そう言ってのぞき込んだのは犬顔の男だ
「あなたに似てるわ」
「でも猫種だからお前の方に似てるよ」
どうやら二人は夫婦らしい
そして、多分僕を見ている
死んだってのは分かったけど、こんなすぐに転生するものなのかな?
それもどうやら人じゃない種族に
「名前はそうだな、ネネコなんてどうだ?」
「私の、お母様の名前・・・。ありがとうあなた。ネネコ、ネネコ、お母さんよ」
「お父さんだぞネネコ」
そのケモノ夫婦からは僕に対する愛が溢れていた
なんだろう、前世の両親も愛してくれていたけど、僕が中学を卒業してすぐに二人共病気で亡くなった
だからこの感じ、すごく、懐かしい
二人の愛に包み込まれ、僕は目を閉じ眠りについた
そして朝起きたとき、僕は前世にあって今世にないものに気づいた
ものっていうかモノに気づいた
僕の青春、なくなっちゃった・・・
でも全然悪くない
だって僕は、前世大好きだったメスケモになれたんだから
それからは両親が話しているのを聞いたり、周りの大人ケモの話を聞いたりして少しずつこの世界の情勢を学んだ
まあこの村というか集落は、街からかなり離れていて、そこまで大した情報じゃなかったけどね
取りあえず分かったことをまとめると、僕らのようなケモの種族名はビースト
他には人間、エルフ、ドワーフ、オルグ? など、いろんな種族がいるみたいだ
オルグってのはよくわからないけど、角の生えた種族って言うから、多分鬼みたいな感じかな
それからビーストは一応ビーストだけの国があるみたいで、この集落はどうやらどこの国にも属していない辺境にあるっぽい
なんでそんなところに住んでるのかは分からないけど、特に問題もなく幸せそうだ
みんな協力し合って生きていて、僕の父は狩りをして村での食料品を賄っているみたい
結構大きな得物を狩って帰ることもあるから、多分うまいんだと思う
両親にしっかり甘え、段々とやれることも多くなっていった
てかこの体成長早くない?
おそらく生まれて二週間くらいで歩けるようになったんだけど
まあ人間と違ってケモたちは生まれてすぐの危険があったからそう進化したのかも
そこは前世と同じかな
とりあえず歩けるようになってからは同じくらいに喋れるようになって、両親とのコミュニケーションもとれるようになってきた
「お前は虎のビーストみたいだな。母さんは黒猫のビースト、父さんは白狼のビーストだぞ」
「僕の白い毛、父さんの毛の色と、同じ!」
「そうだぞネネコ! 父さんと一緒だ!」
僕のフワフワの毛は母さん譲り、白い毛は父さん譲り
二人の愛の結晶が僕だ
生まれてから一か月たった
あの、何か僕の体変なんですが
でかい、かなりでかい
父さんは2メートルほど、母さんは150センチくらい
僕は多分すでに2メートルはある
「すっかり大きくなったなネネコ」
「ちょっと大きくなりすぎな気もするけどね」
僕はまだ成人じゃないけど、集落の子では一番大きく育った
ちなみに成人は生まれて1年たったらだ
大きな僕はもう大人に混じって狩りに行くことになった
狩りに行くことが決まった翌日、父さんは僕に巨大な剣をくれた
なんでもこの集落を開拓したご先祖様が持っていた武器らしい
「何で僕にこれを?」
「これはな、父さんの家に代々受け継がれてきた剣だ。父さんじゃあ使えなかったけど、ネネコならもしかしてって思ってな」
その大剣を手に持つとなんだかしっくりきた
一度振ってみると、剣撃のような変なものが出て、前方の大木を十本ほどなぎ倒した
「な、に、これ」
「おおお、やっぱり使えたなネネコ! 父さんの見立て通りだ、ハハハハハハ」
大剣はかなり重いんだろうけど、僕には軽々と扱えた
父さんは剣に選ばれたんだって言われたけど、よくわかんない
でもこれで僕も狩りにいける
初日での成果
鹿みたいな動物五頭、兎っぽい動物十頭を獲った
僕も鹿を狩れたけど、やっぱり父さんはかなりうまかった
大収穫で狩りは大成功
帰ってからさっそくパーティとなった
この辺りはかなり豊かな土地で、獲物も作物もたくさんある
開拓はかなりの苦労があったと伝わっているんだって
「今日はネネコも頑張ってくれたからな」
「さすがミアとウォルの娘だな。もうそこまでの力を付けているなんて」
ミアが母さんで、ウォルが父さんの名前
実は母さんも僕が生まれる前はかなりの狩人だったんだとか
僕もこの調子で狩りの名手を目指すかな
平和で、本当にこの世界で生まれることができてよかった




