勇者の旅10
勇者一行は憂鬱な顔をしてトウゲンへの道を歩く
ワイルドハートからトウゲンへの転移門はなく、歩いて港町まで行き、船に乗るしかない
しかし彼らが憂鬱そうなのはそのためではなかった
「ネネコちゃん可愛かったなー」
「モフモフでフワフワで、すごくいい臭いでした。また思いっきり吸いたいです」
「そうですね~、すっごく大きな猫ちゃんで、余すところなく吸わせてもらいました~」
「なんかこう、変態チックじゃないか?」
「ふむ、それならオセルも堪能させてもらえばよかったのでありますよ。ネネコ殿、誘っていたではないですか」
「いや、男が女性にあんなことしたらセクハラだろうが。あんな可憐な女性なんだぞ! できるわけない!」
「ははーん、さてはオセル、ほれたなー」
「いや、そんなことは、ない・・・」
顔が真っ赤なためバレバレである
一行はオセルをからかいつつも港町に向かって歩を進め、速足でかけたため夕方にはもう到着した
その日はこの潮風の香りの濃い街で一泊し、海鮮料理を堪能した勇者たち
原も膨れ幸せの内に就寝した
翌朝、街が騒がしくなっていることに気づいたナナミは皆を起こしてまわり、宿の外から出た
「何が起きているんでしょう?」
「ちょっと聞いて来るよ」
ミリが宙を舞い、その辺りにいる獣人たちに聞いて回った
「お待たせ―、どうやら街近くに妖魔が出たみたい。猿の妖魔だって」
「猿の妖魔、確かこの辺りにはショウジョウという魔物が出ると聞きました。元が強いため、妖魔となるとその強さはAランクか、それ以上かなと」
冷静に分析するエアル
彼女は本好きで魔物の知識にもたけているため生き字引のようになっていた
「それは聞けんそうでありますな。勇者として対峙しなければなりますまい」
トアの言う通りとばかりに全員がうなづく
妖魔の出た街近くの森まで走った
すでに冒険者十数名が戦っているのが見える
ショウジョウは通常一体で群れることはないが、その一体だけでも危険な魔物である
腕の力が強く、ヒトの腕など簡単に引きちぎれる
そして今そのショウジョウが数十匹群れを成していた
冒険者たちは苦戦しており、中には手足を引きちぎられて倒れている者もいた
「すぐ回復します~。皆さんその間敵を引き付けておいてください~」
アリアの聖の力により全て手足をもがれた冒険者が傷一つなく回復した
そんな彼らを連れてアリアとエアルが離脱した
エアルの植物に運ばれて行く怪我人たち
彼女の力によってさらに植物のドームを作って敵から守る
その強度はAランクの魔物でもなかなか打ち破れないだろう
「なぜショウジョウが群れてるんだ?」
「あ、あの、あれ見てください」
ナナミの指す方向には妖魔化したショウジョウがいる
それが指令を出しているようだった
「なるほど、あの妖魔化したショウジョウが配下の通常のショウジョウを操っているのか。それなら」
オセルは巨大化し、驚く妖魔ショウジョウを掴んで握りつぶした
それによりほかのショウジョウはハッとしたかのようにうろたえ始め、続々と森の中に逃げていった
「あ、ありがとうございます。助かりました。それに仲間達の怪我まで。もう助からないかと・・・」
涙ながらに訴える冒険者たち
「勇者として当然のことをしたまでだよー!」
ミリの言葉に冒険者一同湧きたった
「勇者様だ! 勇者様に助けられたなんて俺たち幸運だぞ!」
「サインください!」
「うぉおお!いい土産話が出来た!」
冒険者たちはまるでアイドルにあったかのように喜んでいた
妖魔ショウジョウを倒した事を街に報告し、少し遅れたが船に乗った勇者一行
「この海域には特定危険魔物の妖魔アヤカシが出るみたいです。非常に危険で、トウゲンの鬼人たちによって抑えられていると聞いています」
「じゃあもしかして船が襲われるかもしれないってこと?」
「はい。その時は勇者として、船のみんなを守りましょう」
「そうだな」
全員一致でアヤカシと戦うことを決意
しかしその決意は空振りに終わるのだった




