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15 メスケモ護衛になる2

 護衛する商隊に会いに街の出入り口へ

 そう、この依頼、今日すぐ出立で、一人しか護衛依頼を受けた者がいなかったため、もう一人前衛ができる護衛を急募していたのだ

 もう一人受けてる人は神聖魔法の使い手で、回復やサポートと言った魔法は得意だけど、戦闘面はからっきしらしい

 確かに、前衛が得意な僕と相性がよさそうだ


 出入口の門の前に到着すると、商隊の人達と護衛の神聖魔法使いが準備万端で立っていた

「あの、護衛依頼を受けて来たのですが」

「おおお! ビーストの方が受けてくださるとは心強い。私はこの商隊のリーダーを務めております、カートと申します。エルロー商会会長、アット・エルローの息子です」

 おお、結構なイケメンだ

 商隊は馬車四つという規模で、人間族が7人、ドワーフ族が3人、リザードマンが2人の計12人

 それと神聖魔法使いの護衛の人間が1人・・・。どっかで見おぼえあるなこの人

「ふひ、ヒヒヒヒヒ」

「ああああああ!! お風呂場の変態!」

 思わず大声で言ってしまった

「変態? この方はリーリー・リュライト様、Bランク冒険者で、凄腕の神聖魔法使い様ですよ? あのニャード教会からもお声がかかっているという由緒ある・・・」

「ひへへへへ、ま、また会ったねネネコちゃん。フフ、運命」

「い、いや、来ないで」

「だ、大丈夫、もうあんなことしないから」

 確かに必死で自制してる感じ

 僕の方へ伸びる右手を必死で左手で抑えている

「は、早く出発しよ。私が正気でいられるうちに」

「はぁ、少しならいいですから、行きましょう」

「いいの!?」

 途端に抱き着き僕のお腹を吸うリーリー

「ふひぃ、でへへへへへへへ。いい匂い、もう放せないかも」

「はっなっれってっ!くださいね!」

 頭にげんこつして離れてもらう

 まあ悪い人ではないのは確かだ

 あの事件のあとリコさんに聞いた話によると、神聖魔法の使い手にして、まもなくAランク昇格と呼び声高く、ビーストに関わること以外では非常に人格者

 孤児院経営もしていて、子供人気も高いんだとか

 ビーストに関して以外は、本当にすごい人らしい

「ではよろしくお願いします」

 リーリーと一緒なのは少し不安だけど、これが初の護衛依頼だ

 まあリーリーもすごい人みたいだし、多分大丈夫、大丈夫でしょう

 う、この人いつの間にかまた僕に抱き着いてるんだけど


 こうして護衛任務が始まった

 街を出て、僕とリーリーは二台目の馬車に乗せられた

 リーリーは相変わらず僕にべったり引っ付いて今度は脇の匂いを嗅いでいた

「あの、さすがにそこは恥ずかしいんですけど」

「ああ、いいわぁいいわぁ、ネネコちゃんの匂い最高」

 聞いちゃいない

「はあまったく、盗賊が出たらちゃんとお願いしますよ」

「そこは大丈夫。任せてネネコちゃん」

 馬車に揺られること一時間と少し

 突然馬車が止まって外が騒がしくなった

「来た」

 リーリーが僕の尻尾の匂いを嗅ぐのをやめて立ち上がり、馬車を飛び出す

「あ、リーリー!」

 僕も続いて馬車を降りる

 うわぁ、いかにも盗賊って感じの男たちが馬車を取り囲んでる

「大人しく積み荷と女を差し出せ! そうすれば命は助けてやる」

 盗賊の頭らしき男がそう告げる

 女と言うと、僕とリーリーしかいないな

 まあ簡単に連れていかれるわけにはいかないけど

「見ろよ、ビーストの女がいるぞ。しかも猫種だ。それにあの大きさは高く売れる。あまり傷を付けずに捕まえろ」

 へぇ、猫種のビーストって高いんだ・・・。じゃなくて、どう見てもなんかいやらしい目で見てるなあいつ

 そう言えばいまだにビーストや魔族と言った種族を奴隷として扱う国もあるらしい

 そんな国とかに売るのかも

 こいつらは人を殺してるし、恐らく奴隷として売られた人もいるはず

 そんなやつらに慈悲をかける意味ってないよね?

「グルルルル」

 思わずうなり声が口から洩れる

「見ろよ威嚇してるぞあの猫。でかいからって俺たちに勝てると思ってんのか?」

 大笑いする盗賊団

 何だろうこの自信。何かおかしい

「うちのかわいいネネコちゃんを笑いものにするなんて許せない」

「へ? リーリー?」

 リーリーから何か神聖な気配が漏れ出る

 これは、光の魔法?

「アルライトジャベリン」

 杖を地面にコツンと付けて魔法を放つリーリー

 光の槍が空から降り注ぎ、正確に盗賊を貫いた

「うお、なかなかやるじゃねぇか」

 自分の仲間がやられているのに笑ってる

「おい、あれを出せ」

「ヘイお頭」

 男の部下が懐から手のひらほどある玉を取り出して、地面にたたきつけて割った

「な! あれは、召喚の宝玉!? 禁止指定のマジックアイテムを何故盗賊が!」

「俺にはいろいろ伝手があるんだよ! お前はいらん。そっちのビーストだけ連れて行かせてもらう。白猫のビーストなんて珍しいからな」

 召喚の宝玉から煙が上がり、空中に魔方陣が描かれて行く

 そこから腕がゴボァと飛び出し、何かが現れようとしている

「離れてネネコちゃん。あれは、かつて世界を滅ぼそうとした闇の世界の者、悪魔」

「あ、悪魔!?」

 その悪魔は魔方陣から徐々に出てきている

「天にまします主よ、神の鉄槌を。エルリライト!」

 杖が光り、レーザーのようなものが悪魔を撃ち抜く

「グガアアア!!」

 姿を見せた悪魔はヤギのような顔のいかにも悪魔って顔のやつだけど、相当な魔力が込められたリーリーの攻撃を耐えてるあたり結構強い

 完全に出て来た悪魔は攻撃を受けた胸のあたりをポリポリとかいている

「どうだ! こいつは俺の言うことを何でも聞くんだぜ。そうだ、このまま街を滅ぼして俺の支配下に置いてもいいな。いくらでも金が入ってくるだろうよ」

「お金のために、たくさんの人を傷つけるの?」

「あたりめぇだろうが!」

「じゃあやっぱり手加減する意味ないよね」

 僕は静かに怒る

 勝手なことを、そんな身勝手で誰かが傷ついちゃいけないんだ

「ネネコちゃん、サポートする。いける?」

「うん、お願いリーリー」

 悪魔には魔法が効きにくいらしい

 神聖魔法なら対抗できるけど、どういうわけかこいつにはあまり効いてないみたいだし、それなら僕の剣で

「プロテクション、ヘイスト、ホーリーウエポン」

 いくつかの強化魔法をかけてもらい、僕は大剣を構える

「グルルル」

「ガアアアアアアア」

 お互いに唸りあい、激突する

 僕の剣が悪魔の腹部にまともに入り、悪魔の爪が僕の肩に食い込む

 痛い、それに悪魔のお腹にはあまり傷がついていない

「かったいなぁ」

 肩の傷はそこまで深くない

「猫撫で!」

 大剣を振るい、剣技を繰り出して悪魔の指を切り飛ばす

「グアアア!!」

 悪魔はその指を見て怒ったのか、激しく切り裂いてきた

「八割れ!」

 次々と剣技で悪魔を斬りつけて行く

 悪魔の方も爪や魔法で応戦してくる

 お互い一歩も引かない攻防だけど、このままじゃ魔法がない分僕のじり貧だ

 くっついて戦ってるからか、リーリーも攻めあぐねてるみたい

「く、仕方ない。リーリー、あとで馬車まで運んでくれるかな?」

「も、もちろんよ!」

 体にかなり負担はかかるけど、こうなればやるしかない

「チャージ!」

 僕の身体能力をさらに上げてくれるとっておき

 一段階上げると悪魔に攻撃がよくとおるようになった

 そのまま右手を斬り飛ばしたことで悪魔は激高した

「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 地面が揺れるほどの咆哮をあげ、攻撃の激しさが増した

 まさかクレナイさん以外にチャージについてこれるモノがいるなんて

 悪魔の魔法が僕の右足に直撃した

「ぐ、あ」

 右足の膝から下がなくなってる

「うあああ!!」

 痛みで地面に倒れる

「ネネコちゃん!」

「だ、大丈夫!」

 すぐに母さん特製ポーションを取り出して飲む

 右足はあっという間に再生し、僕は立ち上がって再び剣を構えた

「え、ネネコちゃんそれ」

「母さん特製ポーション! 体の半分が消し飛んでも生きてたら再生できるよ」

「え、えぇ、そんな・・・」

 リーリーはかなり驚いた顔をしてるけど、あれ? 僕の故郷では普通だったんだけどなぁ

 ともかく今は悪魔を倒すことに集中しよう

「ヒートアップ!」

 僕はさらにもう一段階力を上げた

 これをやると筋肉痛で数日苦しむことになる

瞬美(またたび)!」

 瞬間的に音速に近い速度を出し斬りつける剣技

 剣の重さもあり、悪魔の両腕を肩から斬り飛ばし、続けて翼も切り裂いた

「グアアアア!!」

 悪魔が地面に倒れる

「終わりだ!」

 そして僕は剣を振り下ろして首を撥ねた

「ふぅ、いてててて」

 尻もちをついて腕の痛むところを揉む

「す、すごいわネネコちゃん! 今の悪魔、子爵クラスはあったのに!」

「子爵クラス?」

 よくわからないけど、まだ盗賊が残ってる

 僕はもう一度、痛む体をひきずり大剣を構えた

「大丈夫よネネコちゃん。あとは任せて」

 盗賊たちは悪魔を倒したことでたじろいでいる

「う、嘘だ。あの悪魔を倒せるやつがいるなんて聞いてない!」

 逃げようとする盗賊たち

「逃がさないわよ」

 リーリーが杖を構えた

「バインド!」

 盗賊たちは一斉に動けなくなってその場に転がった

「リーリーさんすごい」

「ゲヘヘヘヘ、見直したネネコちゃん? まあ元々盗賊くらいなら私でも倒せたんだけど、まさか悪魔が出るなんてね。しかも私じゃまだ修行不足で倒せない子爵クラスだったわ」

 リーリーに聞いたところによると、悪魔にもクラスがあるらしく、子爵クラスはAランクに近いんだとか

 そもそも悪魔はあまりこの世界に現れない

 盗賊たちが持っていたアイテムもこの世界全体で禁止しているような代物だそうで、どこで手に入れたのか分からない

 そのためリーリーは殺さずひっ捕らえたわけだ。出所を探すためにも情報を引き出すのかな


 捕らえた盗賊たちは商隊のみんながふん縛って、最後尾のゴミを入れた馬車に押し込んでおいた

 村に連れて行ってもしょうがないので、商人さんたちの用事が終わったらそのまま街に戻っての引き渡しになるはず

 その間は僕とリーリーで交代で見張ることになった

「まあ私の魔法はかなり長持ちするから大丈夫です」

 バインドをかけた本人がそう言ってるんだから大丈夫だと、思いたい

 この人の僕への言動を思うとちょっと心配だけどね


 大した問題は起きなかったけど、盗賊たちが僕やリーリーに投げる下品な言葉の暴力は腹が立った、まあ殴ったら大人しくなったからよし

 こうして無事村での用事も終わって、僕達はそのまま街に戻ることになった

 取りあえず全員殴って気絶させておく

 下手に暴れられるとめんどくさいしね

 多少力を込めておいたから半日以上は目覚めないと思う

 帰り道には魔物が出た以外に問題なく帰れた

「さてと、こいつら連れてギルドに行きましょうかネネコちゃん。あとちょっとお尻の匂いを嗅がせてくれる?」

「何言ってんの嫌に決まってるでしょ殴りますよ」

「辛辣~」

 ほんと、悪い人じゃないけど気持ちわ・・・。変態め

 ギルドまで商隊の人の馬車に盗賊たちを乗せて報告へ

 リーリーさんが全ての報告を済ませてくれたおかげで、僕はただ見てるだけで済んだ

「終わったよネネコちゃん。あいつらは情報を聞きだした後適切な裁きがあると思う。犯罪奴隷に落ちて死ぬまで強制労働か、即刻死刑になると思うよ」

「うん、ありがとうリーリー」

 この人なんだかんだ頼りになるな

 魔法なんかの知識もすごいし、博識だ

 田舎出身で常識がない僕にも優しく教えてくれるし、何よりわかりやすい

「あ、これ報酬ね。盗賊団の討伐報酬も入ってるって」

「ありがとう」

 報酬を受け取り、宿に戻ろうとすると、ガシっと腰あたりの毛を掴まれた

「ちょ、離してよリーリー」

「あ、あの、ちょっと提案なんだけど。ゲヘヘ、私とパーティ組んでくれないかな?」

「えーやだー」

「即答! それもまたよし。いやね、別に私がビーストのこと、ひいてはあなたのことを好きだから言ってるんじゃなくて、私達結構戦いでの相性良いと思わない?」

「それは、確かに思いましたけど・・・」

 相性は、相性は確かにいい

 彼女の補助があれば僕はもっと戦いやすくなる

 でもなぁ、ずっと吸われ続けるのも・・・

 前世を思い出す

 猫や犬を吸いまくっていた前世を

「うーーーーん」

「大丈夫、大丈夫よ。吸ったりは少ししかしないからへへへ」

 今までの戦い。僕だけだと限界が確かにあった

 うーむ、確かに問題ありなお姉さんだけど、戦いやすかった

 それにいずれパーティを組もうとしてたし、案外いいパートナーになるかもしれない

「分かった。でも吸うのはあんましないでね」

「やったー!」

 とりあえず組むことを了承したけど、あまりにも変態的行動が多かったら解散させてもらうとしよう


 リーリーはネネコを見ながら思う

(了承してくれた。良かった。彼女はきっとあの伝承の・・・)

 かつて読んだ書物にあった伝承

 それを思い返すリーリー

 彼女にとってその伝承を解き明かすことは人生の道しるべとなっていた

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