14 メスケモ護衛になる1
街に帰ってからひとまず宿のお風呂に駆け込み、洗濯がてら体も洗う
ホントお風呂がある宿で良かった。洗濯も一緒にできるのも良し
「ふぅ、こんなところか」
裸で洗濯し終えて、体を洗っていると、お風呂の扉が開いて人が入って来た
「ぬあ! ご、ごめんなさい入ってると思わなくて」
この宿のお風呂は一応入ってますの看板が立てれるようになっている
おかしい、立てておいたはずだけど
入って来たのは女性だ
「ご、ごめんなさいねぇへへへへ」
何か目がいやらしい。滅茶苦茶胸を見て来る
「あ、あの、私リーリー。人間族でビースト大好きなの! でへへへへへ」
リーリーはゆっくりとこっちに近づいてくる
「へ、変態!」
思わず桶で思いっきり殴ってしまった
「ぐぇえ」
やばい、僕の力で殴っちゃったら・・・
リーリー倒れて動かない
「あ、あの」
ツンツンついてみる
そのとたんガバッと抱き着かれた
「ハァハァ、お願い、少し嗅がせて触らせて。大丈夫、怖くない、怖くないからぁ」
「ひぃいいいい」
クレナイさんのやってた幽霊より怖い!
水にぬれた髪が顔面に張り付いててとても怖い!!
「ああ、いい、ケモの匂い! いい! なんか臭いのもとてもいい!!」
まだ洗ってない下腹部あたりをこいつ!
もう一度桶で殴る
床に転がるリーリー
「ハアハア」
荒くなった呼吸を整え、取りあえず母さんが作ってくれた回復用のポーションをぶっかけて床に転がしておいた
さすが母さんのポーションだ
恐らく頭蓋が割れてたけど、すっかり戻ってる
起きてこないからしっかりと体を洗い、湯船につかってからまだ濡れた体でタオルを巻いたまま宿の看板娘リコの元へ走った
「リコさん! 変態が! 変態が出た!」
「え!?」
食堂で食事をとっていた冒険者たちが一斉にこっちを見て、食べていた、あるいは飲んでいたものを吹き出していたけど、そんなことよりあの変態だ
「すぐ行きます」
リコと一緒にお風呂場に戻る
一応縛っておいたから、そのまま目を回して転がっているリーリーがいた
「リーリーさん、またですか? ビーストと見るや飛びついて。もう出禁にしますね」
こいつ、他のビーストにもそんなことしてたのか
街の兵士に渡すべきじゃ?
「ごめんなさいねネネコさん。この人しょっちゅうビーストに絡んでて、ビースト好きなのはいいんだけど、いやこの人の限ってはよくないか。やっぱり兵士に突き出すべきかな?」
そうこうしているうちにリーリーが目を覚ました
「う、うう、おお、美しいビーストさん。ちょっと吸わせてもらってもいいですか?」
「よし突き出しましょうリコさん」
「うん」
「ままままままってください! ほんの、ほんの出来心なんです! そちらの猫さんがあまりにも美しく可愛かったものでつい!」
ついじゃないよついじゃ・・・
でもこの人からは悪意は感じないんだよね。純粋な好意しかない
ビーストはそう言った感情にも敏感だ。彼女に悪意がないのは間違いない
「まあいいよ、体を吸われた以外特に何かされたわけでもないし、頭蓋一回かち割っちゃったし、それに・・・」
「それに?」
「いえ何でもないです」
言えない。前世では僕も猫や犬に同じようなことしてたなんて
「あ、ありがとうございます猫のビーストさん! このリーリー、一生あなたの奴隷になります!」
「いえそれはいいです。これからはビーストたちに変な迷惑をかけなければそれで」
取りあえずリーリーに釘を刺しておいた
なんやかんやで毛も渇いてきたから、用意しておいた普段着を着てギルドに向かった
ギルドで報告すると、メメリィさんが僕の報告書をもって奥へと向かった
そしてしばらくしてごついおじさんと一緒に戻ってくる
「お、でっかい嬢ちゃん。あんたがメメリィの言う新人さんか。俺はゾック。オルグで、元Aランクの冒険者で、現このギルドのギルド長だ」
おお、僕に負けず劣らずでっかい
オルグってことは・・・、やっぱり角がある
うん、鬼だこれ
「なんだ? オルグが珍しいか?」
「あ、すいません。僕田舎から出てきて、ビースト以外の種族を初めて見たもので」
「今時オルグも見たことないなんて、よっぽどの田舎から出てきたんだな」
百年以上前、クレナイさんの旦那さんがのおかげで、世界にそこまでの差別はなくなっているらしい
だから人間族の国に他種族がいるのも今は当たり前だそうだ
まあこの国は差別を許さない、他種族国家らしいけどね
「さて、報告書にあった内容は本当か? クレナイ姫を見つけたとあるが?」
「はい、間違いないと思います」
「そうか、ようやく。キュウビ様からの捜索依頼、百年かけてようやく達成というわけだな。ご苦労だったな嬢ちゃん。国から報奨金が出るから、三日後にまた来てくれ」
「え、国から!?」
「おう、まあ事実確認とか色々あるからな、時間はかかるがかなり出るぞ。何せ一国の姫を見つけ出したんだからな」
うーむ、お金は何かと入用だ。僕のでっかい体に合う装備なんてオーダーメイドじゃないと作れないし。まあ僕自身で作れないこともないけど、母さんや、街の鍛冶師とかみたいなすごい防具みたいなのは僕には無理だ
「ありがとうございます。それで、昇格って」
「もちろんだ。迷宮の異変報告に姫の発見。十分な功績だろう。おいメメリィ、嬢ちゃんをEランクに昇格させてやってくれ」
「はいぃ」
ギルドカードを出して渡し、昇格をしてもらう
おお、なんかカードが光ってる
「これで出来ましたぁ。ネネコさん、依頼また受けて行きますぅ?」
どうしよう、三日後まで時間があるし、何か受けようかな? やることもないし
「受けるねぇ? だよねぇ。じゃあこれお願いしたいなぁ」
メメリィさんが提示してくれた依頼書。それは商人護衛の依頼だった
「この街からぁ、馬車で四時間ほどの場所にぃあるケトの村ぁまでのぉ、護衛なんですけどぉ、ここ最近その道中で盗賊がぁ、出るんですよねぇ。ぶっ殺してきてくださいぃ」
「ぶっ殺すって・・・」
「すでにぃ、人死にも出てるんですぅ、デッドオアアライブゥですからぁ、倒したって証明さえしてくれればぁ、良いですからぁねっ」
被害が出てる・・・。それなら
魔物を倒すのとはわけが違うけど、僕はためらわない
ビーストになったからなのか、それともこの世界に来た影響なのか
そのあたりのブレーキというか、理性がこう、消えてる気がする
ま、まあできるだけ殺しはしない
でももし、護るべきものを護れないというのなら、そんな理性はいらない
僕はその護衛の依頼を受け、さっそく護衛対象に会いに行くことになった




