勇者の旅3
教会内で色々な場所を調べるが、神の交信を切れるほどに強い力の流れなどどこにもなかった
教祖の方は姿を見ないが、この教会にいるのは間違いなかった
教会の人々が口々に教祖のすばらしさを語る
洗脳はされていない
彼らはこころから彼のことを慕っているようだ
「ラルズラールですか。よくある名前です。私達蟲人族の中にも何人かいますし」
かつての勇者の名にあやかってその名を付ける者は数多い
この世界でラルズラールという名は極々一般的なほどに浸透している
だから教祖の名前がラルズラールでも、彼が勇者ラルズラール本人だということは誰にもわからなかった
「すみませんそこの方、教祖様はどちらへ?」
「おお、新しく入信される方たちですかな? 教祖様なら奥の部屋で神に祈りをささげておられますよ」
「ありがとうございます」
五人はその部屋の前に立ち、コンコンとノックをした
「入りなさい」
まるで人が来ることが分かっていたかのようにすぐに返事が返って来た
中に入ると教祖ラルズラールが優しい微笑みを浮かべて立っていた
「勇者か。世界は今危機に瀕しているのだな。なれば我らヴァシュルア教団も協力しなければなるますまい」
「あの」
「ふむ、気づいているか・・・。取り繕う必要はないな。そちらも警戒する必要はない。こちらは味方だ」
「味方? ヴァシュルア様からの啓示を切っておいて何を言っているでありますか」
「この部屋では監視の目がない。外は違うがな」
「監視の目?」
「ああ、ここに戻った俺は世界の真実とやらを見せられ、とある組織に所属した」
「組織?」
「天死という神墜としを計画している組織だ。俺がこちらに戻ったのは三百年ほど前。どうやらすでにあちらで死んだ俺の魂をこちらに戻し、新たな器を作ったようだ」
「そんな、神でもないのにそんなこと」
「できたらしい。俺は今は人間ではない」
ラルズラールは頭にかぶった教祖の帽子を取る
その頭にある捻じれた角
「あなたは、魔人族だったのでありますか!?」
「ああ、体はな。だが心は昔のままだ。昔のまま、世界を救いたいただの勇者だ。今は俺は枷がある。お前たちには裏からしか協力はできないが、来るべき時が来れば必ずお前たちの力になると約束しよう。そして天死を壊滅させた暁には、彼女の元に俺は戻る」
「それって、妖怪族の姫、クレナイ様のことですか?」
「あ、ああ」
頬を赤くして照れるラルズラール
まだ婚約者であるクレナイには会えない
枷がある今では彼女まで危険にさらしそうだからだ
ラルズラールは何も変わっていなかった
今も昔も、彼は勇者として人々の支えになっていたのだった




