勇者の旅2
街並みは綺麗で一般的な生活水準
多くの人々が幸せそうに行き交っている
不満がありそうな者はどこにも見受けられなかった
食事も美味しく、特に宗教上の理由で食べれないなんてものもなかった
戒律はただ試練の時を受け入れ、それを乗り越えて幸せになろうというヴァシュルア教本来のあり方の戒律だ
「何処もおかしいところはないでありますな。ちゃんとヴァシュルア様の教えが行き届いているであります」
「悪意もそれほどない。一般的な街よりもむしろ少ないねよー。妖精は悪意に敏感なんだ。これはよくできた街だよ」
犯罪者はまずこの街には入れない
そう言う結界が張られているのだ
この街での犯罪もかなり起きにくい
そもそも幸せなこの街で犯罪を起こす理由がないからだ
「健康的な生活、健全な精神、働き口もたくさんあるようだし、俺の故郷より充実してるんじゃないか?」
ここには種族も多種多様住んでいる
その誰もが、生活も生き方もありようも違う誰しもが仲良く尊厳を守り合いながら暮らしている
「多種国国家は確かにたくさんありますが、ここはなんというか~、人がみんな同じ方向を向いてるような気がします~」
アリアの指摘も最もで、たとえ多種族国家だったとしても、尊重し合うことはあっても、同じ方向を向くわけではない
それぞれの生きる目的や目標があるからだ
その目的や目標ですら、皆が一直線に目指す方向となっているように感じられる
これが勇者たちの感じる違和感だ
「教会に行ってみませんか? あそこには神木があります。そこから私が情報を得れるかもしれません」
エアルのプラタニティの力は植物を自在に操る力
その心や記憶も読むことができる
幸いにも教会の神木はだれでも触れることができるため、五人は連れ立って教会に行くこととなった
教会には容易に入ることができた
彼らも一応冒険者として登録してあり、身分証明としてのギルド証を持っている
それを確認されただけで通された
「勇者って言うのは伏せておこう。もし向こうに悪意があるなら警戒されるからね」
「悪意かー、あたしが見たところ全然ないんだよねー。それも変だけど」
教会内は手入れが行き届いており、特に男神ヴァシュルアの御神体である像は丁寧に磨かれていた
日に照らされて光り輝いているように見える
「まずはあの像に祈ってみるであります。ヴァシュルア様と交信できるやもしれません」
五人は像の前に膝ま付いて祈り始めた
「ザ、ザザ・・・」
脳内で変なノイズが走り、頭痛がする一行
「う、何だ今の」
「頭痛いよー」
「これは、ヴァシュルア様との交信ができていないのであります」
「確かトアの故郷にも~、ヴァシュルア様と交信できる教会がありましたよね~」
「そうであります。あれ? そう言えば最近御神託がなかったような」
ヴァシュルア神と交信ができない
教団総本山であるここで交信ができないというのはかなりおかしいことである
勇者たちはますますここが不気味な場所であると理解した




