↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大好きなメスケモになりました  作者: 香草(かおりぐさ)
2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

131/162

勇者13

 とある国、とある場所

 美しい白い翼を持ち、頭の上に環を持った女性が一人の少年に剣を授けていた

「ああ、なんて可愛いのでしょうか。あなたは勇者、この世界を破壊するために生まれた勇者です」

 女性はその少年の頭を愛おしそうに撫でる

「僕は、勇者、世界を破壊するために生まれた、勇者」

「そう、そうですエンデ・フィーニス」

 エンデと呼ばれた少年はこの国の王の体を失った頭を掴み、持っていた真っ黒な剣で細切れにする

 一つの国が今ここで滅んだ

 世界がその事実を知るのは少し先だが、衝撃的な事件として世界中を駆け巡った

 彼は血まみれの服を脱ぎ、白い翼の女性に渡す

「ほら、着替えましょう」

 エンデを新しい装備に着替えさせる女性

 彼女は珍しい天使族という種族だった

 名はエデン

 ある組織に所属しており、その組織の計画のため勇者を一人作り出した

 彼は本来神から選ばれる勇者としての加護を持っていない

 だが、本物の勇者と同じように力を使える

 それは組織の幹部、彼女を含めた七人の幹部に力を与えられていたからだ

「僕は、勇者、世界を、平和に」

 その目には光はなく、ただ言われるがまま、されるがままのように感じる

 彼に明確な意思はなく、それもそのはずで、その体も魂も、組織によって作られたものだからだ

 人間ですらない

 ホムンクルスに近い生命体である

「さてエンデ、次は他の勇者を皆殺しにしましょうか」

「僕は、勇者、他の勇者も、皆殺し」

 エデンに連れられて彼はこの国から消えた

 エデンの力の一つ、転移

 任意の場所に一瞬で移動する力だ


 突如目の前に現れた天使と少年

 ナナミたちは驚きのあまり固まっていた

「え? だれ?」

 一番近くにいたミリが少年に掴まれ、グシャリと潰された

「ミリ!?」

 地面にボトリと落ちたミリはピクピクと辛うじて生きているようである

 そこを踏みつぶそうとする少年から間一髪でミリを救い出すアリア

 すぐに神聖魔法をかけて潰れた体を元に戻す

「あら、回復薬がいるのですね。ならあちらから殺しなさい」

「僕は、勇者、殺さなくちゃ」

「ゆ、勇者? 俺たち以外に? いったいお前たちは何なんだ!」

「あらあら、あなた達は偽り、この子こそ本当の勇者よ。そうよねエンデ」

「僕は勇者、皆殺さなくちゃ」

 ただ歩き、ただ剣を振り下ろす

「まずい!」

 斬られそうになったアリアをかばってオセルが巨鬼の力を使い手だけを大きくしてガードした

 しかしその腕ごとオセルは斬り伏せられ、内臓を深くえぐられて倒れた

「オ、オセル!」

 袈裟斬りにされたオセルは自らの血だまりに倒れて動かない

 目の前で起こったことに恐怖して震えるアリアに再び剣が振り下ろされた

 彼女の胸に剣がスーッと入って行き、血が噴き出した

「だめ! やらせない!」

 エアルがプラタニティの力で倒れた二人の傷口を植物でふさぐ

「他にも厄介そうなのがいるわね。エンデ」

「は、い、お母様」

 エンデはエアルの腕を掴むと引きちぎった

「ああああ!! 腕が!」

 さらにもう一方の腕、足を千切る

「あっ、あっ、う、あ」

 芋虫のようになったエアルの心臓を抉り出すエンデ

「あはぁ、お母様、これ、取れたぁ」

 にたりと笑い、嬉しそうに心臓をエデンに渡すとそのままトアにせまる

「よくもみんなを! 許さないでありま、す・・・。あ、れ?」

 トアはすでに上半身と下半身が分断され、そのままドチャリと地面に崩れた

「あ、ああ、な、んで・・・。みん、な」

「あと一人、最弱と呼ばれたあなただけですね。殺すほどの価値もありませんが、念のため殺しておきなさいエンデ」

「はい」

 ナナミは心臓が今までにないくらいに脈打つのを感じる

 仲間が目の前でやられ、世界が暗くなる

 自分の世界に光を指してくれた仲間が

「僕は、勇者、殺さなきゃ」

 ナナミはその言葉で心臓の鼓動をさらに速く高めていく

 心臓が痛いほどに、そして、止まった

「あ、ああ」

 そのままナナミは倒れて動かなくなる

「お母様、死んでます」

「あらあら、弱すぎて恐怖で死ぬとは、本当に勇者だったのかしら?」

 倒れて死んでいるナナミを蹴るエデン

「勇者も皆殺しにできました。よくできましたねエンデ、世界があなたの救済を待っていますよ」

「はいお母様」

 そして二人は来た時と同じように転移で消えた


 ドクン

(なんで私はこうなんだ)

 ドクン

(あれだけよくしてくれた皆を目の前で殺されたのに、それでも動けなくて)

 ドクン

(恐怖で心臓発作まで起こして死んで)

 ドクン

(情けない)

 ナナミは薄れて行く意識の中、考える

(違う、私は、もっと出来る。みんなが認めてくれたんだ)

 心臓が再び鼓動を再開する

(私は勇者)

 ドクン、ドクン、ドクン

 心臓の鼓動がエンジンの起動のようにどんどん速くなり、ナナミの体から煙が上がる

 ナナミは立ちあがった

「人々を守るのは勇者、その勇者のみんなを、私が守るんだ」

 ナナミの勇者としての力が覚醒する

「そっか、よくわかった。私はそういう勇者なんだ」

 カチリと、歯車のような音が聞こえる

 カチッ、カチッ、カチッ

 グルグルと歯車が回る。針が回る

 反時計回りにまわり、まわり、まわり

「やった、戻った」

 ナナミの後ろには驚愕の表情で自分達の体を見ている勇者たち

 そしてその目の前には同じく驚いている先ほどの二人

「まさか、時間を!? こいつは危険だわ。エンデ!」

「はいお母様」

 斬りかかるエンデ

 だがその行動は逆再生のように戻されて元の位置に戻った

「時空切断」

 ナナミの勇者の力がエンデを襲う

 斬られた箇所が戻り、戻り、戻り

 彼は消えた

「馬鹿な!? 私達が力を与え、概念すら越えるエンデが」

「あなたも、斬ります」

「ヒッ」

 今度は彼女が恐怖し、すんでのところでエデンは逃げる

「逃がさない」

 だが彼女の時間が強制的に戻され、再びナナミの前に立たされ、そして斬られた

「あ、そんな、嘘、私がこんな、申し訳、ありません・・・・さ、ま」

 彼女の声だけが空中に消えていった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。