勇者9
ナナミは自身の生まれ育った街を見る
この街を、人を、護るために自分は必死に研鑽を積んできた
それでも冒険者でのBランクが関の山だった
この国史上最速でBランクにまで上り詰めた自分だったが、それでも驕らずただ愚直に
Bランクになってからは一向に強くなれない自分が嫌だった
街の人々に見守られていたのは気づいていた
自分が弱いために守るべき存在に守られていたのだ
「何で私だけ、覚醒しないんだろう」
勇者の力は研鑽や心の成長で覚醒することがあるが、一概に確実とは言い難い
勇者の力は聖女と同じように女神からの授かりものだ
聖女の力を与えるのは女神ニャードリーア
そして勇者の力を与えるのは光と戦いの女神アイリシア
彼女がどのように勇者を選別しているのかは誰も分からず、生まれてすぐ天啓によって選ばれることのみが知られていた
そのため共通点が見られない
世界に仇なしていたころの魔族から勇者が出なかったことから、世界に危機をもたらすような種族からは選出されないことは分かっている
すでに世界の敵ではない魔族からも今回は勇者が選ばれた
つまり種族は関係してはいない
魔族もこの世界に住む一種族である
現に今の魔王は非常に温厚で優しい性格である
民にも好かれて外交にも優れている
世界の敵が何者なのか分からないが、歴代でも多くの勇者が生まれた今代
さらには聖女や聖人もいる
それほどまでに迫る厄災は厳しいモノなのだろう
その戦いに自分なんかが身を投じて、それで世界を守れるのだろうかと、彼女は不安になる
勇者たちのおかげで少しは自身を持てたが、それでも覚醒できていないという不安は常に付きまとっていた
この不安を解消するには自分が覚醒しなければならない
「いままで努力を重ねてきました。命を失うかもしれないと思ったことだって何度もあります。それでも、私は覚醒しないんです」
悩みを他の勇者に打ち明ける
今までの努力はまったくの無駄で、自分は勇者でも何でもなかったんじゃないだろうか?
その思いを全て、仲間たちにぶつける
同情されたいわけではない。ただ答えが欲しかった
自分は本当に勇者でいいのか? 勇者でいていいのか?
答えはすぐに帰って来た
「勇者とはその心に勇を持って人々を救い、導く者のことです。それはナナミも分かっていますよね? 私達は勇者、立ち止まらず前に進み、人々が生きる道を切り開く者です。あなたは何年もその志を持ち続け、研鑽を続けてきました。それだけで、あなたは勇者で間違いないと確証を得れるのです。きっと覚醒します」
ナナミは眼を見開く
この人達となら、自分はもっと強く、もっと高みに行けるかもしれない
勇者の強さは守るためのもの
自分だけが強くなるのではなく仲間と共に強くなるもの
それらを仲間の勇者に教えられた
ナナミは奮い立つ
「さぁ旅へ。世界を救う旅に出るのであります!」
トアの手を取り、ナナミは街から出て最初の一歩を踏み出した




