勇者8
ナナミは悩んでいた
一向に伸びない自身の勇者としての力
そもそも覚醒していないため伸びるも何もないのだが、それでも自己研鑽は毎日怠ることはない
剣を振り、得意の大盾で防ぐ
彼女のためにギルドマスターや元冒険者の職員が相手してくれる
彼女でも内心では理解していた
自分はこれ以上強くなれない。勇者としては欠陥品だ
他の勇者が、あの覚醒していなかったエアルまでもが覚醒したことを聞いた
覚醒したエアルは芋虫が蝶になったかのように美しくなっているという
自分にはそんな美貌も、今代最強と言われるオセルのような強さもない
「ハァ・・・」
自分が弱いことは一番わかってる
自分が弱いことなんてとっくにわかってる
そしてそんな彼女の元に、全ての勇者が終結した
彼らを見れば見るほど自分がどんどん無力に思えてしまう
自分がどんどんみじめになってくる
それでも決して折れることはない
彼女はやはり勇者なのだ
折れない不屈の心、闘志を秘めている
だが何故だか覚醒しない
危険に置かれる人を救い、その勇を示した
自らが死ぬかもしれないと思える体験もした
人を救いたいという優しい心を持ち合わせている
何が足りないのか?
間違いなく勇者として認定されているはずなのに力が覚醒しない
そのためもはや自分は神に見放されたのではないかと、そう考えてしまう瞬間がある
「ではそのように」
勇者たちが何かを自分に言っていたようだが、考え事が深すぎて聞いていなかった
「え?」
「聞いてなかったのー? 何してんのよ。ちゃんと聞いてて!」
悪戯の勇者、妖精ミリがプンスカ怒っている
「ご、ごめんなさい」
「まあ悩むのも分かるであります。勇者の力を覚醒するまではみな普通の子。吾輩もそうでありましたから。でも案ずることなかれでありますよナナミ殿! きっと覚醒させて見せるであります」
軍服を着た魔族の勇者がそう勇気づけてくれる
始めは魔族と言うことで警戒していたナナミだったが、彼女は非常に優しく、気配りのできるお姉さんのような女性だった
そのため勇者たちはみな彼女にすぐになついた
この中で一番年上というのもあるだろう
「それで、あなたの力を覚醒させようと思うんだ。俺たちが手伝うから」
「で、でも私、いくら鍛えても、全然で・・・」
「大丈夫です。きっと花は咲きますから!」
花の勇者エアルが励ましてくれた
自信を無くしかけていたナナミであったが、勇者たちの励ましによって奮い立っていく
こうしてこの国で守られる側だった勇者ナナミは、他の勇者とパーティーを組んで旅立つことになった
覚醒の時はいずれ必ずくるだろう
彼女こそ、今代最初に勇者としての神託を受けた、選ばれた勇者であるのだから




