91 メスケモ鬼姫たちに鍛えられる3
まさか小舟に乗って自分でアヤカシの元まで行くとは思わなかった
本来アヤカシがいる海域までのルートはハクラちゃんの凍らせる力で氷の道を作ってくれた
これなら遭難する心配もないね
カイを使ってゆっくりと漕ぎ出して、氷の道を進んで行く
少し肌寒いのはハクラちゃんの出した氷の冷気が潮風に乗って吹かれているからかな
これ毛皮のない種族だったら凍えてると思う
毛皮は熱い場所では本当に辛い特性だけど、こういう時には頼りになる
道中魚の魔物なんかが襲って来たけど、倒して美味しくいただきました
一時間と少し進んでいると島が見えて来た
聞いた話だとアヤカシがねぐらにしている島で、誰一人として人はすんでいない
「さて、上陸するかな・・・」
それにしてもこの島、全体的に真っ黒だ
船を着岸させて足を一歩踏み出す
何かつるつるしてて滑りそう
というか、これ、鱗・・・?
僕の足が地面に着くと案の定つるんと滑って僕は転んでしまった
「いててて、何この島、それにこの鱗って、もしかして」
僕は島に乗り込んだんじゃなかったんだ
この島が、とぐろを巻いたアヤカシだったんだ
鱗だけで広めの一部屋くらいの大きさがある
これを、倒せと?
幸いにも眠っているみたいでこちらに気づいていない
眠っているのもアマノさんにやられた時の傷を癒しているからかな
本当なら僕が近づいた気配で目を覚まして僕に襲い掛かっているはず
魔物ではなく妖魔
魔物が妖力を蓄えて化けたまさしく化け物で、強力な魔物が妖魔化すれば特定危険魔物に指定されることも多い
その一つがこのアヤカシというわけだ
元々はウミヘビ型の魔物だったのが、アヤカシになってからはエンシェントドラゴンに匹敵するかもしれないほどに危険な魔物になった
それをまあアマノさんは一撃で倒せるらしいけど
いやなにそれ怖い
「さて、どうしたものか。全体が見えないし、妖術を使っても一部が削れる程度じゃこの大きさには大したダメージは通らなさそうだし」
一人でブツブツと言っていると、巨体がズズズと動き始めた
その動きによって地震が起きて、さらには津波までが引き起こされた
「あああ、小舟がぁ!」
さようなら小舟、君との旅、忘れるまで忘れないよ
なんて冗談を考えれるほどに緊張していない
多分もっと強いアマノさんのあの力の一端を見たからかな
それに比べるとアヤカシは、まだ攻撃が通って倒せそうって思えるんだよね
「さて、うーん、妖術で削って行く? それともラストスパートで・・・、いやあの力は動けなくなるから駄目だ。神獣の力は、何をどうすれば発動するのかまだいまいちわかってないし、あ、そもそもこれ妖術のための修行だから妖術で倒さないとダメだった」
動く足場を足の爪でしっかりと掴んで、あれやこれやと考えていると、アヤカシが僕に気づいて鎌首をこちらに向けて睨みつけて来た
「うわ、おっきい」
顔だけで巨大ビルくらいある、いやそれ以上かも
しっかりとこっち見てる
怖さはないけど、あれに飲み込まれたら終わりそう
「さて、やってみるか!」
妖術を使う
「僕だって成長したんだ。いけるはず」
空間を圧縮し、圧縮し、圧縮し、解き放つ
圧縮された空間は一気に拡張され、それ自体が強力な攻撃手段になる
バギィとアヤカシの鱗がはじけ飛んで、肉が露わになった
まさかここまでの威力が出るなんて思わなかった
その傷口にさらに空間を圧縮する力を送り込む
それによって肉が潰れて血が噴き出した
「グルルルルルルルルルルルルルアアアアアアアアアアアア!!!」
痛みで悲鳴を上げ、僕を食べようとその巨大すぎる口で僕を飲み込もうと迫る
「よし、今だ!」
僕を食べようとその口に空間の力を放った
圧縮した空間を一気に拡張して口よりも大きな空間を口の中で広げた
それは口の中で爆発を起こしたように破裂し炸裂し、ボギャァという大きな音を立ててアヤカシの口を破壊せしめた
「よし!」
狙ったことが決まると気持ちいいよね
でもアヤカシの口は即座に再生して、ただただ怒らせてしまっただけだった
「あわわわ、ご、ごめんて・・・」
ブチギレアヤカシさんはその巨体を天高く伸ばし、僕に振り下ろした
「うわああああ!」
巨体でつぶしにかかったのか
でも問題ない
自分を空間で包んで、一切のダメージなしな上に、うねる荒波すらその空間の前には無力だった
「いやぁこの力、改めてチートだと、思う・・・。さて、アヤカシ、僕さ、この力の本質が分かった気がするんだ」
空間を圧縮したり拡張したりする力、そんな力じゃないんだこれ
今この力で防御したとき、不思議とその本質が分かった
これは空間じゃない。空の力なんだ
空にする力、それはエネルギーすら空にして、攻撃の力を無力にしてしまう
そう、これが僕の妖術、概念系の力、空だ




