87 メスケモ鬼姫と出会う1
先生の修行はかなり厳しいものだった
血反吐を吐かないうちは元気な証拠だとボッコボコにされるしまつ
「ほらまた妖術がちゃんと発動してねぇぞ! やる気あんのか!」
「は、はい!」
これだけ殴られてもちゃんと動けるあたりビーストの体で良かったよ
これ人間だったらなんども内臓破裂やら骨折やらしてたはずだもん
「はぁ!」
妖術を使って先生を狙うけど、先生の妖術はそれら一切を受け付けなかった
キンゲツ先生の能力、金月
夜の月が出ている間どんな攻撃も一切が効かなくなる
たとえ概念系のものだとしてもだ
それに加えて素の身体能力が高すぎる
フェディよりも強いかもしれない
まあ冒険者登録をしていなくても強い人とか結構いるからね
格闘技の世界チャンピオンもそうらしいし
Sランク相当の力を持つ人は案外多いのかも
「まだやれるな! どんどんかかって来い!」
「はい!」
先生に再び攻撃しようとしたところで、目の前に突然四人の美少女が現れた
転移魔法?
いやでも魔力を感じない、これは妖力で転移してきてるのかな?
一人、一番背の高い女性はかなり切迫した表情だ
「アマノ、いきなりどうした? お前が息を切らして戻ってくるなど、何があった?」
先生の言葉で彼女が、彼女たちがこの国の姫だと分かった
話を聞くに、アルスランド王国という国でヴァシュルア教団が新しい教祖の元再興されたらしい
でも今度はちゃんと民に寄り添った教団になっているらしい
怪しいところは一つもない
だけれど、その教祖が問題だった
勇者ラルズラール
数千年前世界を救った最強の勇者
そして以前出会った妖怪族王女クレナイさんの旦那さん
すでに元の世界に帰り、亡くなったと思われていたのが、なぜか今になって戻ってきて、問題のヴァシュルア教団の教祖になっていたという
意味が分からない
そもそもヴァシュルア教の教祖だったワズムは既に捕まっているし、新たな教祖も教団関係者から選ばれるはずって聞いてたのに、なんで数千年前の勇者ラルズラールが教祖になってるんだろう
まだまだ謎は多いらしくて、ラルズラールも強すぎて深くは調査できない
でも周りを固めていってるみたいだし、もしラルズラールと戦うとなると、世界最強と言われるアマノさんが戦いに赴くらしい
もしかするとアマノさんでも勝てないかもしれないというほど強いのがラルズラールだ
もし戦うとなったらその時は僕も
アマノさんとは出会ったばかりだ
どんな人なのかもわからないけれど、少なくとも人を守り、聖女として申し分がないほどの仁徳者
ただシスコンすぎる気があるかな
自己紹介だけでも少しは分かったけど、これからお互いを知り合えればいいかな
とりあえずアルスランドのラルズラールは現状特にあやしい所もなくて、裏から手を回して色々調べても何も怪しいところは出てこないようだ
そうなると、本当にただ人を救うために戻って来ただけ?
ちなみにラルズラールが戻って来たのに騒がれていない理由は、そもそも顔が知れ渡っていないのと、ラルズラールって名前はこの世界では縁起物の名前として結構ある名前だからだ
そう、どこにでもある名前
でもアマノさんはその教祖が本物の勇者だと言ってた
世界最強がそう言うんだから多分間違いはない
「それでネネコ姫、いずれ私とあなたは盟友となるでしょうから、今のうちにお互いを知っておきましょう。というわけで模擬戦です。構えてください」
「は?え?何を」
「行きます」
突如アマノさんと僕の模擬戦が始まった
お互い武器はなし、拳同士での模擬戦
始まったと同時に、僕は一瞬で意識を失った
目を覚ますとアマノさんが大慌てで謝ってきた
「す、すみません、久しぶりにとんでもなく強い気配を感じたのでつい少しだけ力を解放してしまいまして・・・」
「いえ、こちらこそ油断して申し訳ないです。もう一度お願いします」
「いいですね、父上、鍛えがいがありそうです」
「おおそうだな。ネネコ姫、アマノを師匠と呼ぶといいぞ。こいつなら俺より教えるのが上手い。何せ妹たちを鍛え上げたのはこいつだからな」
僕はその申し出を快く受けて、アマノさんの弟子になった




