鬼の姫様と敵10
「情報も得れましたし、このままアルスランドへ向かいましょう」
「王都にはいかないのですか?」
「ええ、一番欲しかった確証を得れる情報をここで得れたので」
勇者ラルズラールで間違いなさそうな新教祖だが、何を企み教祖となったのか分からない
それに彼は数千年以上前の人物である
いくら異世界とこちらの世界との時間のずれがあるとはいえ、明らかに亡くなっているはずだった
だからこそ、妖怪族王女のクレナイはそれを理解し、帰省したのだ
その話はアマノも聞いている
「そう言えば、クレナイさんを助け出したのは、復興したプラウディアの王女でしたね」
その情報はすでに妖怪族の国から様々な国々を駆け巡っている
アマノは少し考える
なぜラルズラールは今頃になってこの世界に再び現れ、ヴァシュルア教団のトップとなっているのか
それに、なぜクレナイに会わないのか
もし再開しているのであれば、クレナイのことである。言いふらすに決まっているとアマノは考えた
「あの方に会わない、いえ、会えない理由がある?」
「姉様?」
「すみませんハクラ、少し考え事をしていました。では行きましょう、アルスランドの馬車はこちらです」
三人を連れてアマノは馬車の停留所へとやって来た
たくさんの馬車が停留しているため、初めて来た者は迷うだろうが、アマノは何度も訪れている
どの馬車に乗るかも把握していた
その中でアルスランド行きの馬車を見つけ、乗り込んだ
出立まではあと三十分ほどであるが、馬車が時間通りに出ることはほとんどない
理由は乗り遅れた人を待っていたり、シャトルバスのようになっているため、次の馬車が来るまで出立できないとかだ
しかし今回は時間より少し遅れたものの、ほぼ予定通りに出立した
「御者さん、少しお聞きしたいのですが、道中に何か変わったこと、おかしなことはありませんか?」
「おかしなこと、ですか? いやぁ私は特に何も・・・。あ、一つあります。ここから半日ほど行った村で妖魔が出て畑を荒らしているそうです。元は猪だと思うのですが、かなりの被害が出ているそうですね」
「妖魔はよく出るのですか?」
「いえ、本来はそこまで出ないと聞いています。ただ、やっぱりここ最近妖魔の被害が様々な国で増えているようですね」
「やはりそうですか・・・」
アマノは再び考える
国を出る時倒したアヤカシは本来航路には出ない
ごくまれに漁船が襲われることもあるため危険なことには変わりないが、あそこまで航路に近づいてきて襲ってきたのは歴史的にも数えるほどである
「一度妖魔の出現情報をまとめて精査する必要がありますね」
アルスランドでラルズラールを確認した後は国に戻り、妖魔情報をフワイと確認しようと決めるアマノ
「姉様、あそこに」
「何かいるよー」
窓から外を見ていた双子が何かに気づいたようだ
「魔物、いえ、妖魔ですね。やはり妖魔の数がここの所異常です」
大きな蜘蛛の妖魔がこちらに向かって走って来ていた
それも一体ではなく数体が
普通ならばBランクの冒険者数組で当たるような妖魔が数体
「御者さん、馬車を止めてください」
「そうですね、馬車を捨てて逃げるしかない」
「いえ、殲滅します」
「お嬢ちゃんが!? や、やめなさい、死んじまう!」
「こう見えて私、聖女や大英雄と呼ばれていますので」
太陽に照らされてアマノの髪が虹色に光る
「その輝き、まさかあなたは!? 大英雄アマノ様!?」
アマノは向かってきている蜘蛛妖魔をにらむと、刀を抜いてすーっと横に薙いだ
まるで斬るのではなくただ空中をなぞっているかのように
それだけで蜘蛛妖魔はバラバラになって崩れた
「おお、一瞬で!」
「御者さん、これで問題はありませんね?」
「あ、ああ」
他の馬車に乗っていた客もあっけに取られてアマノを見て、喜んでアマノを取り囲んだ
「ありがとうございます聖女様!」
「おお、女神様のお導きだ」
「大英雄様! 握手を」
ファンサービスのあと、馬車は再び走り出した
時間が少し押していることは言うまでもない




