校歌
四月になり、新一年生が入学してきた。
校長先生は考える。
毎年のことだが、彼らには「この学校の校歌」をおぼえてもらう。
とはいえ、ここ数年の傾向として、校歌をおぼえるのに、時間がかかっているような・・・・・・。
そもそも校歌というものは、どこの学校でもだいたい、今風のメロディーではない。だから、最近の子たちが慣れるのに苦労するのはわかる。
けれども、校歌をおぼえることに、あまり時間をかけてもいられない。
今の時代はとにかく、「効率良く」だ。短い時間に集中して、一気に目標を達成したい。
さて、どうしたものか・・・・・・。
しばらくして、校長先生は一つのアイデアを思いつく。
そして、今年の新入生たちを体育館に集めた。
今から校歌の練習をする。
ではさっそく、体育館を暗くして・・・・・・。
ステージ上に昔の映像が流れ始めた。
新入生たちがざわついている。
彼らの多くはたぶん知らないだろうが、この学校は昔、高校野球の全国大会に出場したことがあるのだ。
そして、一回戦で勝利した。その時の映像だ。この学校の野球部が全国大会で勝ったのは、この一試合のみ。
ちょうど試合終了直後の場面で、ベンチ前に選手たちが整列している。
映像の中で校歌が流れ始めた。
それに合わせて、校長先生は指揮棒を取り出すと、
「では、みなさんもご一緒に♪」
映像には歌詞の字幕もついている。
全国大会の映像を見ながら、新入生たちが少しずつ口ずさみ始めた。
指揮棒を優しく振りながら、校長先生は言う。
「私が思うに、今年の野球部はなかなか期待できそうですよ♪」
こうした工夫の結果、今年の新入生たちは例年よりも早く、この学校の校歌をおぼえることに成功した。
次が最終回です。




