表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/22

すごい選手がやってきた

 プロ野球の春季しゅんきキャンプがはじまり、取材陣しゅざいじんあいだで、一人の外国人選手が話題わだいになっていた。


 ある球団が独自どくじ経路ルートで、ものすごい選手を獲得かくとくしたのだ。


 その選手を取材しゅざいしようと、各社の記者たちがあつまってくる。


「あれが、その選手か」


 見ただけでわかる。すごい選手なのはちがいない。


 その選手は今、実戦じっせん形式けいしきのバント練習れんしゅうをしている。


 それをしばらくながめる記者たち。


 そして、おどろいた。この選手、まったくミスをしないのだ。


 きっちりバントをめるか。もしくは、ボールだまとしておくるか。


 記者たちは思う。本当にものすごい選手だ。インドから来た選手らしい。


 うでが六本あって、三本のバットを使っている。バントをしようとよこかせたバットで、ストライクゾーンの大部分がまっていた。


 しかも、選球眼せんきゅうがんもいい。かおが三つあるのと関係しているのだろうか。


 記者の一人がつぶやく。


「アシュラ選手か」


 ついにバッティングピッチャーがおげの仕草しぐさをした。


 これは他球団にとって、かなりの脅威きょういになるだろう。絶対ぜったいにミスをしない「バントマン」の登場とうじょうだ。


 しかし、この予想はあまかった。


 アシュラ選手が今度こんどは、投球とうきゅう練習れんしゅうはじめたのだ。


 六本のうでうち、三本を力強くる。みぎうでが二本、ひだりうでが一本だ。


 みぎのオーバースロー。


 ひだりのサイドスロー。


 みぎのアンダースロー。


 それら三つの動作どうさを同時にこなす。


 で、実際じっさいに野球のボールげてくるのは、その中の一本だ。


 しかも、時速一六〇キロ前後のストレートにくわえて、多彩たさい変化球へんかきゅうあやつる。コントロールもいい。


 さらに、これまで使っていなかった三本のうで、そっちによる投球とうきゅう披露ひろうした。球団の広報こうほうによると、すべてのうでげることが可能できるらしい。


 興味きょうみ本位ほんい打席だせきに立ったチームメイトたちは、目を白黒しろくろさせている。まだだれもヒットせいたりをっていない。アシュラしき投球とうきゅうじゅつに、完全に翻弄ほんろうされていた。


 なんでも、インド政府せいふ大金たいきんんで、この選手の日本行きを交渉こうしょうしてもらったとか。年俸ねんぽうがくもすごいみたいだが、それ以上の価値かちはありそうだ。ものすごい選手である。


 このあと、アシュラ選手への取材しゅざい連日れんじつつづいた。


 その一方で、他球団の首脳陣しゅのうじんは本気であせっていた。あんな選手はずるすぎる!


「こうなったら、うちの球団もインド政府せいふたのんで、ものすごい選手を紹介しょうかいしてもらおう!」


 かねしんではいられない。アシュラ選手の兄でも弟でもいいから、ぜひともが球団へ。






 そのころ、別の場所で、ある団体だんたいあたまかかえていた。


「今の情報じょうほうちがいはないのか?」


「はい。何回も確認かくにんしました。ちがいありません」


 部屋へやの中で、一斉いっせいにためいきがもれる。


 あのアシュラ選手、基本きほんてきにはピッチャーだが、キャッチャーもできるという。


 で、ピッチャーの時とちがって、キャッチャーの時は、野球のボールげる手を一つに固定こてい。それ以外の手にはすべて、キャッチャーミットを着用ちゃくようするそうだ。


 しばらくして、アシュラ選手がキャッチャーの練習れんしゅうをしている映像えいぞうとどく。


 その映像えいぞうを見たあとで、『日本にほん審判しんぱん評議会ひょうぎかい』の面々は大きなためいきをついた。


「もう一度、見せてくれ」


 すぐに同じ映像えいぞう再生さいせいされる。


 マウンドからボールがんできた。「ズバン!」という捕球ほきゅうおん


 部屋へやの中にいる一人がつぶやく。


「これ、うしろから見ていても、どのミットでったのか、よくわからないと思うんだけど・・・・・・」


 なにせ、ミットが五つもあるのだ。しかも、そのうちの二つ以上をかならず、ストライクゾーンにかまえている。


 その上、アシュラ選手のクセなのか、捕球ほきゅう瞬間しゅんかんに五つのミットをすべてじている。わざとじゃないとは思いたいが・・・・・・。


 みじか沈黙ちんもくのあとで、『日本にほん審判しんぱん評議会ひょうぎかい』の面々は口にする。


「ものすごい選手が来日らいにちしてしまった」


 さらに映像えいぞうつづけたが・・・・・・。


「ダメだ。どのミットでったのか、よくわからない!」


 こうなった以上、何か対策たいさくかんがえる必要ひつようがある。


 数日後、今シーズンから急遽きゅうきょ、「ストライクの判定はんてい」を機械コンピューターまかせることがまった。


次回、球場前に雪だるまが出現。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ