悩み
その日、プロ野球の監督は一人で、地元の遊園地に来ていた。
自分の正体がばれないように、少し変装している。
ベンチから立ち上がると、観覧車の方へと歩いていった。
しかし、観覧車には乗らなかった。直前で引き返してくる。
監督は大きなため息をついた。
十日後、プロ野球の試合中だ。
この試合に勝てば、リーグ優勝が決まる。
すでに試合は終盤で、こちらが圧倒的にリードしている展開だ。
もう間違いないだろう。優勝は目前だ。
しばらくして、歓声が弾ける。
優勝だ! グラウンドにいた選手たちが、一緒になって喜び合う。控えの選手たちも、ベンチから飛び出してきて、その輪に加わった。
で、お次は『胴上げ』だ。監督を『胴上げ』しよう。リーグ優勝おめでとー♪
ところが、そこで異変に気づく。
監督が・・・・・・いない?
きょろきょろする選手たちに対して、ヘッドコーチが大きな咳払いをしてから伝える。
「監督は逃げたぞ。今まで秘密にしていたが、あの人、『高所恐怖症』だそうだ」
初めて聞く内容に、選手たちは思う。
そういう事情が監督にあるのなら、この先、日本一になった時のために、『胴上げ』じゃない祝い方を考えておいた方が良いかも。『高所恐怖症』の監督でも、大丈夫そうなやつだ。
そんな心優しい選手たちに対して、ヘッドコーチが言う。
「『胴上げ』をするんだったら、わし、『高所恐怖症』じゃないけど。あと、体重も軽いよ。今まで秘密にしていたけど、先週からダイエットしていたんで」
ヘッドコーチはものすごく目を輝かせていた。
次回は「プラネタリウム」のお話です。




