野球道具の試作品
野球道具メーカーの社内で、極秘のプレゼンテーションが行われていた。
「他のスポーツと比較して、野球は必要な道具が多い。これまでは、そんな風に言われてきました」
他の参加者たちが一斉にうなずく。
「そこで、このような物をつくってみました」
会議室の中に、新商品の試作品が運ばれてくる。キャッチャーのプロテクターだ。
これがなんと、「変形」するという。
「よく見ていてください。こうやって、こうやるとですね」
直前まで「キャッチャーのプロテクター」だった物が分解されて、「バッター用のヘルメット」と「バット」に早変わりした。
「なるほど」
参加者たちは感心する。
キャッチャーのプロテクターは、「守備」の時にしか使わない。
一方で、バッター用のヘルメットやバットは、「攻撃」の時にしか使わない。
つまり、一つのチームでこれらの道具は、同時に使うことがないのだ。
そして、この新商品さえ買ってしまえば、プロテクター、ヘルメット、バットの三つがセットになっている。個別にそろえなくてもいい。
「でも、値段が高すぎるかな。ばらばらに買うよりは安いけど・・・・・・」
参加者たちの表情は硬い。
この問題を解決しない限り、販売した時に、軌道に乗せるのは、非常に難しいだろう。
「この一部でいいから、何か野球以外の目的に使える、そんな風にはできないかな?」
それだったら、このくらいの値段でも、市場で勝負できるかもしれない。
「実は、そっち方面で考えた商品も、用意してありまして」
別の試作品が運ばれてくる。
見た目は「一本のバット」だが、
「こうやって、こうやるとですね」
あっという間に、傘に変形する。なんと、一本のバットが四本の傘に!
「なるほど」
参加者たちは感心する。
「まあ、個人ではなく、チームで購入してもらえば」
「いいんじゃない? 選手は試合中に傘をささないしね」
晴れている時には「バット」、雨が降っている時には「傘」として使用できる。
とはいえ、実際に販売するまでには、まだまだ課題が多そうだ。
「たとえば、急に雨が降った次の日、誰か一人でも、この傘を家に忘れてきたら、大変だね」
次回は「ノーヒットノーラン」のお話です。




