驚異の記録
プロ野球のオープン戦での出来事だ。
両チームの選手たちには、秘密の計画があった。この試合で達成したい目標がある。
球場にいるお客さんたちの中には、すでに気づいている人たちもいるようだ。
この試合はインターネットの「スポーツ専用チャンネル」でも見ることができるので、そっちでも気づいている人たちがいるに違いない。
間もなくして、試合が終わった。
九回まで戦って、引き分けだ。オープン戦なので、延長は行わない。
試合終了直後、両チームの選手たちがベンチから飛び出してきた。双方入り乱れて、笑顔で喜んでいる。
球場の大型画面には、『本日の試合時間』が表示されていた。
プロ野球の公式戦だと、三時間越えが当たり前の時代において、まさかの『五十四分』である。これはすごい!
試合展開に恵まれたのもあるが、試合中に両チームがさまざまな工夫を積み重ねた結果だった。
なお、昨年に行われた高校野球の全国大会、その試合時間は、最速で『一時間十三分』だ。
スポーツ専用チャンネルのカメラに向かって、選手たちが口々に言う。
「どうだ、見たか」
「我々こそが最速」
「高校生よ、お前たちの時代はもう終わりだ」
もちろん冗談である。
ところが、これが全国の高校球児たちに火をつけた。
「見てろよ、プロ野球」
「最速は俺たちだ」
「プロ野球の『五十四分』、絶対に更新してやる!」
そして、今年の全国大会だ。
そこで驚異の記録が出た。
その試合の終了直後、プロ野球選手たちは度肝を抜かれる。
「『三十八分』だと・・・・・・」
さすがにプロ野球の試合で、これを塗り替えるのは無理かも。
インターネットの「スポーツ専用チャンネル」では、高校球児たちがカメラに笑顔を向けている。
「どうだ、見たか」
「俺たちこそが最速」
「プロ野球選手よ、お前たちの時代はもう終わりだ」
次は『野球場の笛吹き男』というお話です。




