ぽち袋
正月に息子にお年玉をあげた。
で、息子は今日、一人で買い物に出かけている。
昼に家を出て、夕方に帰ってきた。
色々と買い物を楽しんできたようだ。良いストレス解消になったらしい。
そして、「おみやげ」があるという。
「お父さん、これ」
ぽち袋だ。お年玉とかを入れる小さな袋。
それが「七つ」だ。
まさか、お年玉の「おかわり」を頼んでいる?
しかも、「七つ」とは。
さすがに欲張りすぎだと、父は思うぞ。
とはいえ、このぽち袋が「おかわり」だと、息子はまだ口にしていない。別の可能性もある。
とりあえず、ぽち袋のデザインでも褒めながら、息子の出方を待つことにした。
ぽち袋の裏側を見て気づく。
文字が書いてあった。これは息子の筆跡だ。
――A選手の安打数 一本につき三百円
――B選手の盗塁数 一回につき八百円
――C投手のセーブ数 一回につき千円
他の四つも、似たような内容がそれぞれ書いてある。ただし、同じ内容のものはない。また、ぽち袋に書いてあるのは、どれも地元球団の選手ばかりだ。
これって、もしかして・・・・・・。
「来年のお年玉は、それでよろしく」
七つの内の二つを選んで、そのどちらか高い方を「来年のお年玉」にして欲しい。そう息子が提案してきた。
金額固定制ではなく、変動制の「お年玉」だ。今年のシーズンの結果が、「来年のお年玉」の金額に反映される仕組み。
裏側を上にしたぽち袋を並べて、急いで頭の中で計算した。
息子が提案してきた条件には、若手選手もいれば、ベテラン選手もいる。彼らを同じように考えてはいけない。「伸びしろ」や「安定感」にかなりの差がある。
また、その選手が怪我でもすれば金額は伸びないが、大活躍した時にはとんでもないことに・・・・・・。
たとえば、盗塁一〇〇回で八万円だ。「それは絶対にない!」と言い切れるだろうか。このB選手はむちゃくちゃ足が速いと、ファンの間で評判になっている。
特に、「チーム全体のファール数」は一回十円とはいえ、一年を通してだと、ものすごいことになる可能性も・・・・・・。
「ちょっと妻と相談してくる」
「ごゆっくり~♪ でも、明日までには決めてね♪」
このあとリビングルームに行き、そこにいた妻に七つのぽち袋を見せて説明した。
「わかった。すぐに調べる」
そう言うと、ノートパソコンを開いて、まずは「プロ野球 一年間 ファール数」と検索し始めた。
「この中から選ぶなら、僕はセーブ数のやつがいいと思うんだけど」
「だめ。現時点でわかっている今年の戦力から考えると、確実に三〇セーブは越えてくると思った方がいい。さすがに四〇セーブはないと思うけど、うーん」
「じゃあ、こっちのやつ。若手選手のホームラン数」
「ばかっ! その若手は去年の二軍のホームラン王。一本二千円をなめすぎ! もしも五〇本以上打ったらどうするの! げっ、今年は狭い地方球場で八試合もあるし!」
妻は息子の提案を受け入れるつもりのようだ。インターネットで調査して、「どれが一番おさいふに優しいのか」を真剣に考えている。
そんな妻が注目したのが、
「乱闘一回につき五万円か」
「それはさすがに、まずいような。乱闘が起こるたびに、我が家のおさいふ事情が・・・・・・」
「でも、去年と一昨年は乱闘ゼロだって」
「その前はどう?」
「今調べてる。乱闘数、乱闘数、あ、あった。・・・・・・やめておきます。子どもの教育上、乱闘は良くないよね」
来年のお年玉、その金額をどうするのか。夫婦による本気の会議はまだ続く。
次は『門外不出の伝統』というお話です。




