談笑の最中に
それなりに談笑するまでの仲になっても朝が来てしまえば、ロサお嬢様とはさよならだ。
日本語の勉強は結局小学校三年生で習う所までで終わり、絶対新たな日本人の派遣社員を呼ぶぞ! とロサお嬢様はジイヤに言ったそうだ。
「眷属を作らないのも東京に行く為ですか?」
「そうだ! ボクは本当に行ってみたいと思っているからな! それが日本人の派遣社員や何かしらの理由でこの世界に来ている日本人を眷属にしてしまった場合、どんなに釈明しようと一歩たりとも小さな可能性さえなくしてしまう。だから、そうしているんだ。まあ、一回のチュッは平気だ。だから」
「ご休憩中、申し訳ございません! 大変です! エトウ様! 女神様がいらっしゃらないと!」
「え? クレアが?」
楽しい時間はそこで終わってしまった。ジイヤの報告により、残りの最後の日の仕事時間はそれに費やすことになった。
業務内容で言えば、ロサお嬢様に日本語を教えるが、いなくなった女神の捜索……最後の最後に! あの浴衣姿の女神は何をしてくれたんだ?!
探している途中で、この時間ならいつも寝ているはずの魔法使いの女の子に出会った。
「ティノ! 起きてたのか?!」
「はい! 今日は起きてようと思ってまして……父さんが帰って来る、父さんが帰って来ると暗示をかけていたので起きれてたんですが」
ああ、この魔法使いの女の子のお姉さんだったら、今日まで俺が楽ちんでいれたんだろうな……と思いながら、屋敷の中にある風呂場が気になるの……なんて言っていたと聞けば、そこを探したし、トイレか? この物置小屋か? と聞けばそこを探したし……。
居ない。
どこを探しても居ない。
よくある派遣社員の逃げ出しだろうか……こんな日まで良く頑張った……そう言ってやろう。ぞわぞわがそこまでだったとは知らなかった! と会えることがあったら言ってやろう。まあ、そうなると絶対会えないんだが……。
「あと探せてないのはどこだ?」
「どこでしょうねぇ……」
俺とティノが探す前から探してくださっていたラミア家の使用人さん達はもう庭には居ないと居るとは思えない屋敷の中を探し始めていた。
「うーん、困ったなぁ……」
「ねえ、何に困ってるの?」
「お前がいないことにだよ! って、お前! いつの間に出て来た!?」
「え? 今なんだけど。魔法陣出してテレポートして来たんだけど! 背後だったから気付かなかったの?! ねえ、それで、何を騒いでいるの?」
「それはですね、う……とっても酒臭いですよ、クレアさん」
「それに何か……この匂い……お前……温泉にでも入った?」
「当ったりぃ!! ちょくちょくね、皆には内緒で、このぞわぞわを鎮める為にもテレポートで王都の方や神殿のある所に行ったりしてて、神様しか入れない温泉ってのを探し出して入ったりしてたの!!」
そんな風呂があったとは驚きだ。
「でも、見つかっちゃったんだぁ……とうとう……」
けど、こいつは今、酔っ払い。全てを信じちゃダメだ!!
「じゃあ、あたしは見つかったことを皆さんに伝えて来ますね!」
すたこらさっさとティノは行ってしまう。どうして……。
は! っと気付いてしまった。こいつは……。
「ヨシキチ! おんぶ!! その広い背中を使わせなさい!! 私、もう歩けそうにないから!!!」
「はあ……、はいはい……」
出来上がった女神には誰も近付かないと言う。
厄介だもんな……、こんな酔い潰れ方して……。
「よいしょっ」
俺は背中にクレアを背負い、ゆっくり歩き出す。
「んー……、ヨシキチの背中って、やっぱ気持ち良い……」
体の向きを変えながらクレアに言われた。
まったく……、そんなことを酔われながら言われてもあまり嬉しくない。けれど、それがこの女神の本音だろう。
「今夜で終わりなんだから、迷惑かけるなよな! お前のせいでちょっと稼げなかったわ!」
「え~、何よ!! それ!!」
自分がした事を覚えていれば、その理由は自ずと分かる! と言い、俺は無事にあのテントの中にクレアを置き、もうちょっとで朝になってしまうから、自分の部屋に行こう。今日はもう終わりだ……と歩き出したのだが、何か見られている気がする。何故だ……空を見れば月が雲に隠れ、また見えるようになった。




