ヴァンパイアお嬢様を知るには
志多さんにお願いしてから四週間が過ぎた頃、角2の茶封筒の中に入ったそれは無事にこのラミア家へと届いた。
仕事が繁忙期で、とても時間が掛かってしまい、申し訳ありません!! というメモが貼られていたが、それはとても良いイラストだった。
焼き芋屋さんの車近くでホクホクのとても黄色く甘そうな焼き芋をアツアツ! と美味しそうに頬張って食べる制服姿の中学生くらいの日本人の女の子とそれを羨ましそうに見ているジャージ姿の女の子。
食欲の秋!! という感じだ。
それを見たロサお嬢様は良く描いてくれた!! と言って、喜んでいたし、俺のスーツ脱ぐ問題も脱がない方向で解決した。
良い感じに仕事は後半戦に入って、終わりを迎えようとしている。
ロサお嬢様の日本語の勉強はテキストが良いのか、スラスラと進みに進み、小学二年生が覚える漢字まで来た。残りの日数でどこまで教えられるか分からないが、俺がいなくなったとしても、また新たな日本人の派遣社員をこのラミア家に呼ぶだけだ! と言い、そんなに心配しなくて良い、もっと気楽でいろ! と、俺を気軽な気持ちにさせてくれる。
そんなロサお嬢様の事についてあまり聞いてはいけないと思っていたのだが、少し勇気を出して聞いてみることにした。
「ロサお嬢様は確か人間だったとかって言ってませんでしたっけ?」
「ん? そうだな……」
勉強疲れか、やけに素直にそう言う。
今日もまた俺とロサお嬢様の二人っきりの時間が続いている。
漢字は難しいのか、なかなか進まない。
「ラミア伯爵に会った二年後、ボクは人間からヴァンパイアになった。キミは聞いたはずだ。ここに来るまでの間に村が一つ消えている。それはラミア伯爵の仕業なのだが、ボクはその村に住んでいたんだ。生まれはそこではないのだが、父や母だっていた。だが、死んでしまった。あの村に来てから。人間だったボクを見たラミア伯爵はそれはそれは美味しそうに村人の血を吸っていた。人間が干からびても関係なく、その血が一滴も残らないように。それがマナーだと。ボクは怖くなった。伯爵は凍るほど美しい女性だったから。男ならイチコロで、女はそんな彼女に恐れを成して逃げようとし、捕まる。今日もまた一人、また一人……といなくなる。あの村は誰かが心配するような者が集ってはいなかった。何故、父と母がそこに住んだのかは分からないが、そんな狂気に誰が耐えられる? それにラミア伯爵は貴族。その日暮らしだったボクが助かる方法はただ一つ。彼女の眷属になること。一応、身元確認をされたよ。そして分かったんだ、父と母が駆け落ちし、ボクが生まれたと。父は良い家柄だったみたいだ。母の美しさに父が惹かれたと言われているが、本当かは知らない。キミにはどうやってヴァンパイアになったかの話をしてあるだろう。そういう理由でボクは伯爵令嬢となったんだ。養女だよ、ボクは。けど、ボクは血で繋がっている。もう切れない縁がある。あの村が消える前、ボクは十四の時にラミア伯爵令嬢となったんだ。それはもう年を取らないって意味をしていた。何もない庭に居続けている女神とは違うかもしれないけれど、ボクもそんな一人さ。こんな姿でかれこれ百年? だけどね」
「そりゃぁ~、すごい人生送ってますね……」
そう言うのがやっとだった。
「キミ、ジイヤだって長生きな方なんだぞ。あれで六十年近く生きている。前の執事は五十年くらい、平均寿命以上は生きた。この血を捧げます……と死に際に言ったみたいだが、ラミア伯爵はもっと元気なのが良いと言って断っていた。あれはきっと遠回しな思いやりだろう。そういえば、キミは最初、ジイヤを見た時に驚いていたそうじゃないか。普段は普通の人間色なジイヤもあの時ばかりは慌てただろうな。連絡することなどないと思っていた人物から連絡が来て、ボクが重ねて、新しい人間の血を感じる。確認して来いと言ってしまったから、テレポートで急にそこへ飛び、貧血になってしまったらしい」
ジイヤの顔色が悪かった原因はそれか!! 納得した。
そして、ロサお嬢様は静かに俺を見た。
「光だけがボクを殺す。それだけは覚えておいてくれ」
真面目な話に俺は「はい」としか言えなかった。




