【イマジナリーSIDE】第一章最終話 銀の揺籃の語り
「いやー。すげえな。まさかSSランク冒険者の器だったとは」
ギフトネストのとある建物の屋上。
そこでは、イマジナリーが新聞を手に、椅子に座っていた。
黒いフードで身を包んでいるが、傍のテーブルにはチーズケーキと紅茶が置かれており、なかなか『洒落たこと』をしている。
「俺と戦ったときはそこまでじゃなかったような……いや、おそらく元からそのスペックはあったのか。単に『何かに気が付いた』か、『何かを思いついた』かのどっちかだろうな。あぶねぇ」
新聞をたたんでテーブルに置いたイマジナリー。
もしも戦ったときにSSランク冒険者の実力だったらと思うと、確かに『危ない』と思うのだろう。
「まっ、『任務』は果たしたし、いいとしますか」
そういいながら、懐から綺麗にカットされた緑色の宝石を取り出すと、手の上で転がす。
「すげえ力だよなぁ。こいつ本来の力じゃなくて魔力を流しただけなのに、SSランクモンスターが『封印から解かれる』なんて……ん?」
気配を感じて振り向く。
すると、イマジナリーがいる屋上に、誰かが上がってきたところだった。
イマジナリーと比較するとそう高い身長ではない。
ただ、彼と同じくフードを被っており、フードを被っている以外は素顔を晒しているイマジナリーと違って、マスクをつけており、フードを深くかぶっていることもあって、より素顔が分かりにくいものになっている。
「トラブルじゃねえか。元気にしてたか?」
仲間に声をかけるように声を出すイマジナリー。
トラブル、と呼ばれた人物は、それには答えず、イマジナリーが座る反対側の椅子に座った。
「……最近は少し、つまらなくなってきました」
イマジナリーの問いに対する返答のつもりなのだろう。
フードの奥から少年のくぐもった声が聞こえた。
「ハッハッハ!そうかい。まっ、俺はこれで任務は済ませたし、さっさと『本国』でダラダラしてるぜ。お前はまだこの国にいるんだろ?」
「まだ、愛想が尽きているわけではないですし」
「そうかい。まあ、俺からすれば、お前のそれは単なる惰性みたいなもんだがな」
「否定はしません」
反応の少ないトラブルにイマジナリーは鼻を鳴らした。
ただ、良い笑みを浮かべており、これくらいのやり取りはよくあるのだろう。
「んじゃ、俺は本国に帰るわ。フェルノには背格好も声もバレてるし、あれほどの達人なら俺の視線すらバレかねない。ウロウロするのは危険だからな」
「……確かにそうですね」
「お前も風邪ひくなよ」
「余計なお世話ですよ」
「まあまあ、お前昔は相当無茶してたじゃねえか」
「……」
「ククク、否定できないって顔に書かれてるぜ。んじゃ、そろそろ本当に帰るわ。じゃあな」
「ええ、また本国で会いましょう」
次の瞬間、椅子に座っていたはずのイマジナリーは、その姿を忽然と消した。
残されたトラブルは、ふうっと息を吐いて、呟く。
「愛想が尽きていないのは事実ですが……そろそろ潮時だと思ってるのは事実なんですよね。そして、その判断を下すきっかけとなったのも、イマジナリーが任務を達成することになった原因も、彼がかかわっている……」
ここ数週間のことを振り返るトラブル。
「私たちの中で残された任務は、あと一人……私自身、無関係とは言えませんか。最低限のことはしましょう」
イマジナリーが残したチーズケーキと紅茶を片付けると、トラブルもまた、屋上を後にした。




