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90話 祭りのあと

 

 翌日清々しい天気に深呼吸も心地よい。



「ハァァ。いい天気だ」


 そう言うと日課である剣の型を始めた。続けて格闘術、魔法系を鍛錬を積む。


 一通り終え風呂で汗を流しているとアイシャから念話が来る。



 アイシャ:ユウ様、ガルドさんが挨拶したいと来ておりますが、いかがされますか?


 ユウ:ガルドが俺に?


 アイシャ:いえ、勇者様にと申しております。


 ユウ:あ、そういうことか。分かったそちらへ行く


 アイシャ:お待ちしてます。


 そう言って念話を切るとすぐに着替えを済ませアイシャの家へと転移した。



「お待たせしまして申し訳ありません」


 そう言いながら応接室へと入っていった。



「いえ、こちらこそ急に呼び出したりして申し訳ない。この町では楽しませてもらったので挨拶をしてから帰ろうと思いましてな」


「お気遣い感謝します。またお待ちしております」


「ところで貴方が勇者様ですか?」


「いや、私はただの使いで勇者様は今この町にはおりません」


「そうですか。こんな楽しい大会があったのに参加されないとは勿体ない」


「次回は参加するよう伝えておきます」


「いやいや、これは差し出がましい事を。また遊びに来ます。それでは」


「はい、ありがとうございました」



 そう言うとガルドはレスタとラスタと共に部屋から出ていった。



 大会を盛り上げてくれた3人だったので、礼の意味も込めて丁寧に対応をさせてもらった。


 彼らが帰った後に獣人国の話を聞けばよかった、と気付いたが時既に遅しであった。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「さて挨拶も済ませたし、我が国へと帰るとするか」


「しかし勇者に会えなかったのは残念でしたね」


 3週間かけて着いたこの町はとても新鮮でとても心躍る町であった。勇者の作った町だと町のみんなから教えてもらえた。教えてもらったというよりみんなこの町を自慢するかのように聞かせてくれたのだった。


 そんな勇者には一度も出会えず帰ることが唯一の心残り。


 もう少し滞在できれば会えるかもしれないが、ラスタがそれを許してくれなかったのだった。



「我儘の時間はもう終わりです。国に帰って今度はしっかり国王の仕事をしてくださいね」


 真面目なラスタにこう言われてしまっては反論しようもない。


 この大会に出るために約2カ月の空白を作ってしまうのだ。これ以上政治的空白を作ってしまえば、それこそ国が混乱してしまうだろう。


「分かってるさ。勇者に会えたなら俺達の国へも転移の門をつなげてくれるように頼みたかったんだがな」


 ラスタとそんな話をしていたら豹の獣人・レスタが割り込んできた。


「ガルド様~、なんで伝言で頼まなかったんですか~?」


「直接勇者をこの目で見て確かめたかったってのが一番の理由だな。転移の門を置いたら攻められましたなんて想像したくないだろ?」


「確かに! 獣人をどう思っているか話してみないと分からないもんねー」


「そういう事だ。その話はまた次の機会だな。さて帰るぞ」


「了解!!ちょ、水くらい用意してから出発しましょうよ!」


「おう!じゃあ先行ってるから用意して追いついてくれ」



 そう言うとガルドはスタスタと転移の塔へと歩いて行ってしまった。


「まったく、こっちの苦労も知らないで!」


「国内では負け知らずのガルド様が2回も負けたんだ。目標が出来て嬉しいんだろうよ。あの様子だと一段落したらまたここに来るつもりだぞ」


「まったく、楽しみ見つけると周りが見えなくなるんだから~」


「あれは一生治らない。間違いない。諦めろ」


 二人はここニューベガスに来る時と同じような会話を交わすのだった。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 ガルド達がニューベガスを後にした頃俺はエルさんに捕まっていた。


 何故かって?対戦中に約束した発勁を教えろと言ってきたのだ。



「早く教えろよ。約束だろ?」


「確かに言った覚えはあるんだが……」


 ここでゴネたところで納得してくれるはずがない。仕方なく教えることにしたのだが……。


 自分が死に物狂いで1ヶ月かかった技だったのにエルさんは1時間もかからすに習得してしまった。



 ま、まぁ、俺の教え方が上手だったという事だな!


 俺は誰にも教わらずに頭の中の情報だけで体得したんだし!



「次お前と戦うのが楽しみになってきたぜ。今日のバトル出るんだろ?」


「出ないよ」


「は?出ろよ。勝ち逃げかよ」


「いやいや、昨日言っただろ。今日はムサシが訪ねてくるんだよ」


「あいつも出れば問題ないじゃねーか」



 もう何なのさ、この人の思考。


「戦いしか頭にねーのかよ!」


「おう、ねぇぞ。女も抱けないし、飯も食わなくていい体だし。他の楽しみが見つからねぇ」



 認めちゃったよ……。確かに他の楽しみを見つけるって難しいけどさ。



「ここが出来てから俺は楽しくて仕方ねぇんだ。(お前がいるってのが一番の理由だがな)」


「それは見てれば分かる。でも今日は出ない。これは変わらん」


「つまんねぇな。じゃあ俺だけでも参加してくるわ」



 なんでそんなに元気なんだよ!まったく!


「そういやエルさん、最後の技は聞かなくていいのか?」


 発勁については約束なので教えたが、最後の無拍子については聞かれもしていない。



「……ああ。どうせ聞いても教えないだろうが、最初から聞く気もなかった。いずれあの技を俺が破ってやるよ」


 なるほど。エルさんのあの技同様、相手の必殺技を破って勝つ。エルさんもそれが目標みたいなわけか。



「その前に俺がエルさんの技を見切って破ってみせるさ」


「わははは、いいねいいね。俺は技を一度見たからな。俺の方が有利だぜ」


 くっそ天狗。痛いところを突きやがる。


 確かにエルさんは俺の技を正面から(・・・・)くらって死んだ。


 対する俺はあの技を食らった時には反転している最中、背後から(・・・・)くらったわけだ。技の全貌どころか一端すら見えていない。


 対戦中その技を見るチャンスがあったが、躱し切れず負ける可能性もおおいにあった。



 いつかバトルロイヤルで見せてもらうしかないだろうなぁ……。


 いかんいかん!これではエルさんと同じバトル脳になってしまう!





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇





 ユウに発勁というものを教えてもらった。


 ただ正直に言ってしまうと、――俺はこの技を知っていた。



 長年戦ってきた間にいつしか覚えていたのだ。


 しかし今日ユウに教えてもらった発勁の方が威力的には大きかったのだが。


 この発勁の劣化版がユウを殺した技だとは信じてくれないだろうなぁ。



 ――空斬波。


 その技は鞭のように(しな)らせた全身のパワーを衝撃波として相手に叩き込む。


 その衝撃波は拳を当てた瞬間に相手の体を内側まで壊していく。その代償に使用後は腕や拳が激しく損傷してしまうのが傷なんだが。



 たぶん発勁も同じような原理だろう。ただ発動自体は発勁の方がきわめて速い。


 今までの空斬波はある程度の溜めを必要とした。しかし発勁においてその溜めは極めて少ない。


 発勁の体得により一撃一撃が空斬波になった、いやそれ以上と言っても過言ではないかもしれん。


 あとはその攻撃に拳や腕が耐えられるように鍛えればいいだけだ。





 これが楽しみでなくて何と言う。


 これだからユウと遊ぶのは止められないんだよな。



 ――お前もそうだろ、ユウ?





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― 新着の感想 ―
[一言] 国王だったのかあのライオン(もしかしたらもっと前に書いてたかも)ただのSランク冒険者だと思ってた。 Sランク冒険者をただのという時点で感覚狂ってきたな〜
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