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78話 予選終了からの抽選会

 

 ようやく一部の騒動が収まって予選が再開された。



 クラウスは俺の近くにはいたくないとどこかに行ってしまった。


「なぁ、エルさん。あの人は同じ派閥とか同盟なのかい?」


「んー。同盟とか派閥とかは作ってないが、俺を慕ってくれてるのは確かだな」



 そうだよな。それは少し会話しただけでも伝わってきた。


「そうだろうね。何だか俺は嫌われたみたいだな」


「わははは、なんだユウ。珍しく落ち込んでるじゃないか」


「そうだな、俺にどうこう出来るわけじゃないし考えても仕方ないか」



 こっちから下手(したて)に出てもいいのだが、結局エルさんに対する態度で文句を言われるだろう。


 文句を言われたからって態度を改め、エルさんと敬語で話す気にも今更なれないし。よし、棚上げしよう。



 舞台上では続々と予選が進んでいく。


 一人一人見てるのも飽きてきたので数値が大きかった奴だけを覚えるように見ている。





 目立ったのは江戸時代の侍の格好(袴?着流し?)の奴。こいつが11700。


 他の探索者よりもいい恰好をした人族の男。11400。


 そしてなんと国王軍代表としてサイファー将軍も参加。4980。


 登場と同時に大観衆が湧きおこったスマートな男。8800。

 

 珍しいライオンの獣人。9450.



 こんなところが目立っていた奴らだろうか。


 予選も滞りなく終わり上位32人が発表され、そのまま舞台上に集められる。


 一番最後にやり直すと言っていた奴らはやり直しもせず退場していったのだった。




 舞台へと集結が終わると今度は抽選会の始まりである。


 方法は至って簡単、箱の中から数字の書いてある紙を引くという昔ながらの抽選方法だ。



 順番は予選通過順にしてある。1番はエルさん。



「では抽選をお願いします!」


 アナウンサーに促され紙を引くエルさん(天狗仮面)。折られた紙を広げると数字が書いてある。



「天狗仮面選手!1番です!」


 引いた数字も1のようだ。本当に1が好きなんですね。



「続きまして予選2位・ベイダー選手!抽選をお願いします!」



 少しドキドキしながら紙を引いてくる。頼む、2だけはやめてくれ!!


「ベイダー選手!12番です!」



 ほぉぉぉ。安堵のため息が体全体の力を弛緩させる。これでエルさんと戦うのは準決勝までなくなったわけだ。まぁ他にも強いのがいそうなのでそこまで行けるかわからないのだが。



 続いてクラウス・14番。ムサシ・25番。


 ここでムサシという名に違和感を覚える。もしかして日本出身のダンマスだろうか?日本出身のダンマスの配下だろうか?



「エルさん。あのムサシって人を知ってる?」


「いや、知らんな。初めて見る顔だ」


「なんか名前が俺と同郷っぽいんだよね」


「ほう。ってことはお前同様面白い戦い方をするのかもしれんな」


 エルさんの興味は戦いにしかなかった。なんでも戦闘につなげるその頭を一度覗いてみたわ。



「鑑定使えばすぐわかるんだろうけどさ……」


「それの答えも含めて使わないのが楽しいんじゃないか」


「ま、それも一理あるか。後々の楽しみにしておくよ」


「それでいい。楽しみはゆっくり味わえばさらに美味くなるぞ」



 エルさんが勝ち誇ったような顔で言ってるが、分からないでもないので頷いておいた。



 次々と決まっていく対戦表。



 パドメ(ルーリ)・19番。ラセツ・31番………。



 こうしてすべての対戦が決まった。



挿絵(By みてみん)




 まず注目するのは開幕戦であるエルウィンvsサイファーだろう。



 サイファー将軍が決勝に残ったのは流石と言えるが、いきなりのこ こ(エルウィン戦)はくじ運的には最悪である。万に一つの勝ち目もないだろうなぁ。


 王国の将軍が負ける姿を晒すのは国にとっては許し難いだろうが、ここは受け入れてもらうしかない。



 他にも楽しそうな対戦が目白押しだが、俺の場合は2回戦であたるアグリルという男だ。


 予選会ではクラウス、ムサシに次いで4番目のスコアをたたき出した。結果は11400だ。1ヶ月前の俺よりも数値が高い。


 予選の方法を伝えていたといっても攻略方法までは伝えていない。なのでもしその攻略法を知ったら、もしかすると俺より高い数字を出すかもしれない。



 まぁ、その数字が高いから強いとか弱いとか決めることはできないのだがな。この数字によって分かるのはその人の持つ攻撃力のみだ。


 DPSだけでは測りきれない戦闘の技術、駆け引き、防御力etc……。すべてが絡み合いその結果が強さとなって表れるのだ。



 剣道や柔道においてもそうだろう。あまりの実力差がある場合を除いて、同じくらいのレベル同士で戦うならば駆け引きや戦術で上手い方が勝つ。ガムシャラに攻めれば勝てる訳ではないのだ。


 攻撃は最大の防御ならぬ、『攻撃は最大の攻撃』と言ってるルーリやエルさんみたいなのも偶にいるんだけどさ。



 そのルーリはくじ運に恵まれた格好である。まぁ1回戦の相手は知らない人だが計測結果を覚えていないという事はそれほど強くもないだろう。


 2回戦もジョーとキップ(Dランク若手探索者・予選32位)の勝者となった。ジョーには負けたことはなかったし今回も問題ないだろう。


 問題となりそうなのがナティさんとの対戦が実現しそうな3回戦だ。鞭の師匠であるナティさんと本来の姿のルーリ。楽しみな対戦であることは間違いない。



 そのほか隠れた実力者がどれだけいるだろうか?トーナメント表を見てるだけワクワクしっぱなしだった。





 ――夜になり俺達は自宅で寛いでいた。


 寛いで入るのだが皆明日からの本選を前にどこか気を張っていた。



 それと言うのもこいつのせいだ。



「貴様明日私にあたるまで負けるでないぞ」


 そう、エルさん信奉者のクラウスだ。抽選が終わってからずっとこの調子なのだ。


 そのせいでうちの配下達がピリピリしている。今戦ったらルールにどう抵触するか分からないから止めているがな。



「はいはい。お互い頑張りましょうね」と気持ちのこもってない返事をしておく。


「貴様のその余裕ぶった顔が屈辱に塗れるのが楽しみだ」


「はいはい。お互い頑張りましょうね」と壊れた人形のように繰り返す。



「貴様!私が勝った暁にはエルウィン様と呼び、気安く話しかけないと誓え」


「はいはい。お互い頑張りましょうね」と(略


「おい、それは俺が許さん。ユウは今まで通りでいい」


 エルさんから突っ込みが入る。



「――っ!わかりましたエルウィン様」


 エルさんに対しては逆らわない様子。



「っていうかクラウスさんは何でいるのさ?俺呼んだ覚えないんだけど?」


「なんだと貴様!ダンジョンマスターとして先輩である私をもてなすのは後輩の役目であろうが」


「エルさんはそんなこと言わなかったけど?威張り散らしてばかりいる先輩ほど嫌われる存在はないよな」


 見る見る顔が赤くなり怒気を強めるクラウス。


「貴様ーー!!」


 その後もしばらく俺とクラウスはじゃれあいは続くのであった。



 そんな騒動を尻目にルーリとナティさんはいつも通りスイーツ談義に花を咲かせていた。







 ――――そして決勝トーナメント開幕!!









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