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78話 予選開始

 

 朝からニューベガスの町は賑わいを見せていた。


 なにしろ今日から武闘会という大イベントが開催されるからだ。正確には明日が開会式なのだが、今日は前日祭のようなもので予選会を公開して行う。


 開始1時間前の今、闘技場には大勢の観客が詰め掛けており、場内は既に満席となっていた。


 会場に入れなかった観客達はホテルのモニタールームに押し寄せ、そちらも既に満席状態。溢れた客は仕方なくホテル脇に新設されたビューイング会場で見ることになった。





「おいおい、ユウ。大成功と言っていいんじゃないか?」


「ここまではね。俺にとっての大成功はエルさんを倒した時だけどね」



 ニッと笑顔を浮かべたエルさん。


「じゃあ大成功は難しいかもしれないなぁ」


「いーや、絶対させてやるから」


 そんなやり取りをしている間に予選の開会時間となる。



 参加者全員が闘技場内に入場してくる。それだけでも場内は大歓声だ。有名な天狗仮面もいるしな。



 その後ガーシュからザックリとした日程の説明がされる。


 今日は予選の説明、その後予選会(測定人形)で上位32人選出、くじ引き


 明日は開会式の後に1回戦16試合、2回戦8試合 


 明後日ベスト8の4試合 ベスト4の2試合


 最終日は3位決定戦と優勝戦



 日程の説明の後ガーシュから賞金、予選会のルールについての説明を受ける。


 この辺は宣伝ビラに書いてあったので混乱なく理解してもらえただろう。


 それが終われば早速予選会の開始である。



 最終的な参加者は161名になった。



 10秒の計測時間に約7~8秒の計算、そしてアナウンサーによる発表で一人にかかる時間は多めに見て約1分だろう。交代の時間も考えて1分半としても160人なら4時間。


 さすがに4時間も集中が続かないってことで舞台上に3体のダメージ計測人形を用意した。


 ただし計測するのは1人ずつだ。1人が計測中に次の順番の者は人形の前で待機。計測結果の発表後すぐさま計測開始させる。で、次の者はすでに準備しておくというように流れを作った。



 こうすれば余計な移動時間を待たずに済むだろう。同時に計測してもいいのだがそれでは盛り上がりに欠けると思ったのだ。時間にしても1時間半程度で終わる予定だし、ちょうどいいと思われる。



 早速予選会が始まる。まずは3人が呼び出される。呼び出されるのは登録順である。なので最初は俺からだ。



 1番目は嫌なのでルーリを一番にしようとしたのだが、


「私はパドメで出るんだから一番はおかしいわよ。ベイダーが一番にやるのが一番自然よ」


 などとまともな意見を述べたので仕方なく一番でやることにした。



「ではエントリーナンバー1!ベイダー選手、自分のタイミングでいつでも始めてください!ただし開始までは10秒以内でお願いします」



 剣を抜き開始ボタンを押してから人形に斬りかかる。攻撃しっぱなしの10秒って意外と長いものなのだ。スタミナもかなり重要な要素になる。だが剣道で打ち込み続けていた俺にしたら慣れたものだ。


 しかもこの1ヶ月はこの10秒トレーニングを重点的にやったのだ。もちろん他の鍛錬も疎かにはしていない。



「3.2.1.終~~了~~!お疲れ様でした!続けて計測に入ります」


 結構力を入れたし緊張と言うものもあって息が切れた。息が整う間もなく


「発表します!ベイダー選手の結果は………15300です!!皆様まずはこの数値を基準として考えてくださいませ」



 いや、待て……。確か1ヶ月前に俺は1万までもう少しだったはず。で、確かエルさんに5000も差があるって笑われたのを覚えている。


 って、ことはこれを参考?基準?にしちゃまずいんじゃないか?




 ――で、出てしまったものは仕方ない!己の成長を褒めようではないか!




「エントリーナンバー2!パドメ選手、いつでもどうぞ!」


 内心で焦っている間にルーリの…いやパドメの計測がスタートした。


 無詠唱魔法と鞭をうまく織り交ぜ攻撃を繰り返す。中々様になってるんじゃないかな?



「3.2.1.終~~了~~!お疲れ様でした!続けて計測に入ります」



 やはりルーリも肩で息をしている。がそれ以上に観客のざわめきが大きい。どうやら翼と角の生えた魔族に戸惑っているらしい。


 ガーシュに念話を送りアナウンスをさせた。



「エー、皆様。出場者全員に誓約書のサインをもらっております。何もご心配はございませんのでご安心ください。


 何よりニューベガスの理念の一つである種族差別に抵触します。もしそういった場合はニューベガスからの退出、及び再入国の禁止とさせていただきます。どうぞ我々の国作り、及び大会の運営にご協力をお願いします」



 念話で送ったのは誓約書のサインだけだったのに、ガーシュが独自でアナウンスしたようだ。しかもサラッと国作り発言してるし。


 一応ガーシュには「いい仕事だった」と褒めておいた。



 さてルーリの計測は


「結果は………10500です!!」



 うむ、ルーリも1ヶ月前の俺と同等か強くなっている。


 発表を聞いたルーリはふんぞり返るほど胸を張って帰ってきた。


 ルーリ:ふふん。ユウ見た?見た?


 ユウ:ああ。鞭がよく似合ってたぞ


 ルーリ:違うわ!私の成長のことよ!


 ユウ:ああ、背が大きくなったな。あと胸も大きくなったぞ。


 ルーリ:違うわ!結果よ!結果!



 周りに順番待ちをしている参加者がいるため声を出して会話ができなかったが、俺達が無言で睨みあってると思ったのか周りに人がいなくなっていった。面頬(めんぽお)をしてるけど目は見えているから、そう勘違いしたんだろう。




 その後は順番でどんどん計測されていく。



 ラセツ………7500

 リュウイチ…6900

 ブラッド……7400

 エルウィン…16200

 ナティ………6410


 ここからは一般参加者になるのだが心配事が的中する。




「ヴォル選手!結果は………2550です!!」



 そう、ダンジョン関係者と中級探索者では雲泥の差があるのだ。これは普段のバトルロイヤルでも分かっていたことだが、改めて数値にされるとその差が如実に表れる。


「ウソだろ、その人形壊れてるんだ!やり直させろ!」



 アナウンサーに「それなら一番最後にやり直してもらう」と事前に決めていた対応をさせる。


 男は納得しないながらもやり直させてもらえるならと引っ込んだ。


 他の人の結果を見て、改めて自分と比べたら納得するだろう。最初の奴らが飛び抜けていただけだとな。



 案の定、続く参加者も2300~高くて3000が続く。


 俺たちの一団は闘技場内に設けられた待機スペースに椅子を並べて座っている。


 もうその周りに人が寄りつくことはなく、ぽっかりと俺達だけが座るスペースだけが空いている。




「なかなか面白そうな奴がいねぇな」


 エルさんが流れ作業のように表示されていく計測結果を見ながら呟く。


「今回は呼び餌のようなもんだよ。今回派手に開催して次の大会には強者が集まるためのね」


「ふーむ。次まで諦めるしかねぇか。まぁユウと本気でやればいいか」



 本気って。やめろよあんた。


「まぁ、結構残ってるんだ。まったり少し待とうぜエルさん」




「…選手!結果は……12900です!!」



 ――――12900!?



 舞台から降りてくるのは魔族の男だった。まっすぐ俺達の方に向かってきて目の前で止まると、あからさまに俺を睨む。


 何かしたかな?と思ってたらその男はエルさんの方を向き頭を下げた。



「エルウィン様、お久しぶりでございます」


 エルさんの知り合いってことは……ダンマスか?


「誰かと思ったらクラウスかぁ。こりゃ面白くなってきたな。それと俺の名前は天狗仮面だからな」



 あんた紹介しろよ。なんで俺睨まれてるか分かんないんだからさ。


「天狗さん、こちらの方は?」



 そう言った途端にクラウスと呼ばれた男は俺の襟元を掴もうと凄い速度で寄ってきたが俺はその手首を逆につかんだ。


「何するのかな?挨拶ならちゃんとやろうぜ?」


「貴様!?放せ!誰の手を掴んでやがる」


「あんたが先に来たから防いだだけだよ」



 俺は手首を掴んでいた手を離すと、クラウスは距離をとる。


「貴様、この方(エルウィン様)を天狗さんなどと気安く呼びおって……。貴様などが口を利くのも恐れ多いのだぞ、分かっておるのか!!」



 なんだよタダのエルさん信者かよ。ちゃんと首輪付けておけよ。


 そうエルさんに視線を送ると


「クラウス。俺とユ……その仮面のベイダーは同盟を組んだんだ。それで好きなように呼ばせてるし、口調も崩してかまわないと俺が言ったんだ。お前にもそうやって言ってあるはずなんだがな」


「な??同盟ですと?」


 あからさまに驚愕の顔を浮かべるクラウス。



「ああ、だからお前もその辺にしておけ」


「ぐっ……畏まりました」



 そう言うとクラウスは戦闘態勢を解いたのだった。


「ユ……ベイダー、悪かったな。こいつは昔からの知り合いでお前と"同業"だ」



 俺達の争いを周りの観客や参加者も見ていたからかエルさんはダンマスではなく同業と言ったのだった。





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