77話 開幕前々日
明後日に迫ったガナドール開幕に俺達は出場選手の確認を行っていた。
あ、その前に2週間前に捕縛されていったハンとアンだが、お互い利益だけで結ばれていたようでそれが見込めないとなるとあっさり口を割った。
自分の悪事については不利になると分かっているからか口にしなかったが、下請けの職人や悪事仲間を兵に密発してしまったので、裏切られた下請職人達から手口を明らかにされる反撃を食らったという。
その内容は悪辣の一言であったが殺人などは犯していない為極刑までは至らず、ハン夫妻は奴隷送りになった。もちろん俺たちに買うつもりはない。
下請職人の奴らも無理やり従わされた者以外は重い罰を受けるということだった。
職人達が受ける罰の線引は帳簿や証言で分かれるらしいが、俺にしてみたらそこはもうお任せだ。
被害を受けたガーシュやジョシュがいいと言ってるからな。
さてそれよりも今は出場受け付けの方だ。現在集まった人数は100人くらいだがまだあと50人ほどは並んでいるらしい。1ヶ月も受け付け期間があったのだから事前に登録すればいいものを……。
受け付けには名前(偽名も可能)・性別だけ提出してもらっている。
本当はレベルなど聞いておきたいところだったがセバスに止められたのでやめておいた。理由を聞くとレベルやステータスは秘匿するのが普通なんだとか。
俺にしてみたら稼げるDPを計算したかっただけだから別にどちらでもいい。なんたって明日からの予選を含めて4日間は闘技場を使ってしまう為にバトルロイヤルが開かれない。1日約1300万DPの稼ぎがなくなるのだ。少しでも補填したいじゃないか。
まぁ、これをきっかけにレベルの高いやつが集まって毎日バトルしてくれたら嬉しい、ってかそこが狙いなんだけどな。
今まではSランク探索者が戦っている姿を見れる者は少なかった。見られるとしたらその場に居合わせた探索者くらいだろう。
そのSランク探索者の戦いが目の前やモニターで見られる、すると一般の観客はその凄さに改めて驚き、敬い、憧れることになるだろう。そうされて嫌がる探索者はいない。
もし嫌がるならこのガナドールに出てくることはないだろう。目立ちたくないだろうからな。
さて、開幕前日の明日は予選会だ。
昼の鐘の時間に集まってもらいルールの説明、そしてそのまま予選会を始める。
まずはダメージ計測人形の説明から始まる。出場受付の時に、どうやって攻撃すればダメージ効率がいいか考えてきてくれと話しておいたのでここら辺はスムーズだろう。
ただ自分が一番だとかあいつに負けるはずがないと思ってる奴らがダメージを出せずに難癖付けてくるかもしれないので、ここはいつもの実演で分からせる。
計測時間は10秒と短いのでいくら凄いスキルでも1撃で稼ぐのは難しいだろう。よほど飛び抜けているなら別だがな。
発動後に硬直時間があるのならフィニッシュに持ってきたり、強武器を使い手数でダメージを稼ぐなどもあるだろう。そこは各々工夫してほしい。
そんなことを大会の運営であるガーシュとエブリンダに説明しておいた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
夜になりエルさんとナティさんが遊びに来た。あんたらホントいつも遊んでるけど大丈夫なの?
「よお、ユウ!いよいよ始まるねぇ!この1ヶ月は手の内を見せないためにバトル参加しなかったからウズウズしてるぜ!」
そうなのだ。エルさん最初の大会で優勝したいからって、毎日遊びに来てるくせにバトルに参加しないで、自分の手の内を見せない作戦に出たのだ。ずるい、実にずるい天狗なのだ。
あ、エルさんは天狗仮面で出ることに決めたようだ。やはりカジノや屋上風呂などゆっくり楽しみたいようだ。素顔がバレてると中々ゆっくりできないからな。特に男の子たちはヒーローでも見るかのような目で集まってくる。
そんなエルさんに近づこうとする子供を親は必死に止めるんだけどな。背中に『殺』のヒーローなんて嫌過ぎるわ。多分現地の人は読めてないはずだけどなんとなく伝わってるんだろう。
「ようお二人さん。こっちは万端だけど、そっちは大丈夫だろうね?」
「ははは、今夜ユウに毒でも盛られない限り体調はいいぜ」
何言ってんだこの人は。どうせ状態異常無効ついてるでしょ?
「ユウさん無事迎えられてよかったわね。私も楽しみにしてたから」
「ああ、多分大変なのはこれからだろうけどな」
「そうね、手伝えることがあったら言ってちょうだい」
「ああ、そうさせてもらうよ」
「俺は忙しいから無理だぞ」
「嘘言うな!面倒なだけだろうが!」
エルさんには何も期待していない。ただ大会の注目を集めてもらうことには期待している。適材適所ということだ。
それとナティさんだが素顔で出るそうだ。そんなに勝ち残る自信も、つもりもないとのこと。
それでも顔を晒して戦ったら絶対ファン出来ると思うんだけどな。鞭使ってるんだし蝶の仮面でもプレゼントしておこう。
そして俺とルーリだが俺はいつものベイダー仕様で、ルーリはついにパドメのお披露目である。
鞭もそれなりに使えるようになってきたので、メインが魔法で近距離は鞭で戦うと言っていた。
俺は対エルさん用としてライトソードではなくアキの作った打刀と脇差を使うつもりだ。
ライトソードは裏表がなく扱いやすいのだが魔法耐性で効果が薄いと感じた。まぁ物理耐性も持ってるだろうから刀も同じかもしれないが、試してみたい技があった。通用するかどうかは賭けだがな。
それに俺もこの1ヶ月でレベルアップもしている。
【NAME】ユウ
【CLASS】人族
【LV】74/100
【HP】69683/69683
【MP】74002/74002
【STR】8017
【VIT】5920
【INT】8880
【AGI】6660
【DEX】8140
【LUC】740
前回エルさんと戦った時よりもLvは13も上がっている。
エルさんのステータスをすっかり忘れてしまっているので比べることはできないのだが大分近付いたはずだ。
AGIも上がったはずだから追い抜くまではいかなくても互角の速度は出せるはず。この1ヶ月なるべく手札を隠しながらレベルアップしてきた。あとはお互いの技量の差だけだ。
そんなことを考えているとエルさんが話しかけてきた。
「なあ、ユウ。どんな奴が参加してくるか分かっているのか?」
「うん?まぁ今のところ名前と性別だけは分かってるよ。何か問題あった?」
そう言うとニヤリと笑ったエルさんは
「それだけか。じゃあよ、明日からお互い鑑定を使うことは禁止にしようぜ。事前に相手のステータスやスキルが分かってたらつまらないだろ?」
「そんなこと言ってエルさんは相手のこと知ってるんじゃないの?」
「まあ、長いことこの世界にいるからな。知ってる奴がいるかもしれないな」
「それって俺が不利じゃないか?」
「そんな事ないだろ。知ってるだけで俺と直接戦った事がある奴は大体死んでるぞ」
「ああ、そうか。ここに来るまではリバイブもないから戦えば全員殺してるってことね?」
「その通り。運良く逃げた奴もいるかもしれないがな」
そうだな。一度死にかけた奴が再びリベンジってこともあるだろうが、大概は救われた命を大事に生きているだろう。俺ならそうするだろうな。こんな化け物と戦って生き延びたのだから。
鑑定なしか……。楽しそうだからのってやるか。
「分かった。じゃあ鑑定なしで戦うってことにしよう」
「いいねー。さすがユウだ。さてさてどんな奴が来るかなぁ?」
そう言うとエルさんはニマニマと妄想の世界へ飛び込んで行った。
確かに相手は俺達のステータスを鑑定することはできないだろう。偽装Lv10にしてあるしな。
そして俺達はほぼ確実にステータスを覗ける。一般的に言うと各スキルをLv10にするのは容易なことではないからだ。
これでは確かに不公平といえるだろう。しかもスキルまで分かっていたら対処もできてしまう。圧倒的な不公平だ。
エルさんがなかなか鑑定を使わないってのもこの辺りから来てるんだろうな。俺も今後はそうしていこうと心に決める。
さてエルさんはどこか行ったし、ルーリとナティさんは女子トーク(鞭ネタ)で盛り上がってるし、俺も明日に備えて今日は寝るとするか。
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