↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
65/68

Re-Build 01

「なんでここにいるのよ?」

 俺の右手を両手でがっちり握ったまま彼女は下を俯いた。

「えっ?あ…あのなんでと言われても…」

 間違いなく俺は彼女の事など知らない。正確に言えば、世間で言う一般人並には知っていた。

 それというのも彼女は今が絶頂期であるアイドルであり、週に何度もテレビやネットで話題となっている人物だからだ。そんな彼女が凡庸な俺の事を知っているわけがなかった。

 当然のことながら俺はこう言わざるを得ない。

「人違い…ですよね?」


 新作アルバム発売記念のサイン&握手会。世界でも知名度の高いアイドルだけに、今回のイベントは注目の的となっており、会場となった電気店には徹夜で順番待ちをしていた彼女の熱狂的なファンや、マスコミ関係者が殺到し混雑を極めていた。


「どれだけ…どれだけ私が心配したと思ってるのよ…」

 泣いているのか、彼女の震えが手から伝わってきた。

 列に並んだ俺と目が合った瞬間、彼女の顔色が変わったような気がしていたのだが、やがて俺の番となり、彼女の正面に立ったときにそれは起こった。

 彼女の行動に会場全体が凍りつき、誰もがその場の成り行きをただ見守っていた。

「失礼ですが…お知り合いの方ですか?」

 情報番組のレポーターが空気の流れを変えた。

 その一言をきっかけに、会場全体が騒然となった。

「二人はどういう関係ですか?」

「失礼ですが、君の名前を教えてくれませんか?」

「泣いてますよね彼女、正直に話してもらえませんか?その理由を」

「彼氏だって?」

「うそだろ、マジか!?」

 遠巻きに陣取っていたマスコミの取材陣が詰め寄り、止め処ない質問の雨を降らせてくる。ファンからは罵声や怒号が発せられ、収集のつかない状況となっていた。

「すいません、本当に俺何も知らないんです。あの、妹に頼まれてですね」

 誰も俺の言葉など聞いてはくれなかった。

 人の波にもみくちゃにされ、足を踏みつけられたり蹴られるような痛みを感じた。

 彼女は俺の手を握ったまま俯いたままだった。

「はい、そこまで!」

 拡声器を持った女性の大声で、水を打ったかのように辺りは静まり返った。

「ご協力感謝致します。今回、新曲のプロモーションビデオ撮影を極秘に行わせて頂きました。臨場感を重視したため、事前の告知なしに敢行してしまい、ご迷惑をおかけした事をお詫び致します」

 会場内からはどよめきが起こった。

 発言者である女性に対して苦情を訴えるマスコミ達、安堵の声を漏らすファンの一群。

「こっちへ」

 いつの間にか隣に立っていた背の低い別の女性に、耳元でそう囁かれた俺は素直にその言葉に従った。俺の手を握っていた彼女は、そのまま付いてくる格好になった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。