SEVEN 05
「結論から言うとね。マグナスキルオンラインの消失…それが私の目的だった」
広人とSEVENは再び白い空間の中にいた。
「だった。…ってどういうことですか?」
「君達に会って考えが変わった、というのかな。……人間って面白いよね」
床から不意に現れた白いキューブにSEVENは腰を下ろした。
「何でも人に押し付ける、責任を転嫁する、言い逃れをする…自らを守るために他人を犠牲とすることを時に厭わない。またそれとは対照的に進んで自らを犠牲とする者もいる、不平不満を持ちながらもね」
「何の話ですか?」
ふふっとSEVENは笑った。
「君に二つの選択肢を与えよう。ここを去るか残るか、君はどちらを選ぶ?」
「去れば…俺が此処を去れば、マグナは消えてしまうんですよね?」
「愚問だったね、君は察しが良すぎて困る」
「あの教えてもらえませんか?俺にはあなたが悪い人には思えないんですが」
SEVENは眉をひそめると、しばらく広人を見つめていた。
「残るにはそれ相応の代償が必要になるけど、本当にいいの?」
代償…そう言われ広人の心は揺らいだ。
「マグナを存続させるには君の手を借りなければならない。でも危険すぎる方法だから私はあまり勧めたくはない。むしろマグナを諦めてほしいくらい」
「確かに他に色々VRゲームはありますけど、…どうしてかな、マグナを続けたいんですよ」
「君が今からすることは、誰にも褒められることもなければ讃えられる事もない、私と言う存在の記憶に残るだけになるけどそれでもいいの?」
「世界には何億もの人がいます。その中に俺みたいなのが一人くらいいてもおかしくないですよね」
SEVENは自分の膝を叩き大きな声で笑った。
「時間をあげるね。…20分以内に戻ってきたら君に真実を教えてあげるわ。ここへは再起動するだけで戻って来られるようにしたから」
SEVENの姿が次第に薄れていった。
薫の顔が目の前にあった。
「近いよ」
「ばか」
起き上がった広人の体に薫はしがみついた。
「心配したんだから。…でもよかった、目を覚まさないのかと思った」
「それはないよ、俺の親父が作ったDORSだし」
「そうか」
階下からは談笑する声が聞こえてきた。
「あのさ…俺、ちょっとやる事が出来ちゃってさ」
口ごもるような広人の言葉から、薫は不穏な空気を読み取った。
「だめだよ。絶対だめ」
「何勝手に想像してるの?大丈夫だって」
「よく分からないけど、広人君あの黒マリモと何かあったんだよね?」
広人は息を吸い込んで答えた。
「冷静に考えてみてよ、ゲーム世界に行くだけだから別に命に関わる事じゃないし」
「それはそうだけど。何だか嫌な予感がするし」
「大丈夫だよ、それより早く帰ったほうがいいよ。今日はもう遅いし」
「じゃあ泊まる」
薫はあくまで頑なな態度を崩しそうになかった。
「無茶する気みえみえだもん」
「しないよ」
「約束して、はい指きり」
薫が突き出した右手の小指に、広人は渋々自分の指を絡めた。
「喉が乾いちゃったな」
「私、飲み物とってくるね。待っててね…と」
部屋を出るかと思いきや、薫は広人の方を向いて釘を刺した。
「そのまま動かないでね、じっとしてるんだよ」
「わかりました」
階段を駆け下りる薫の足音が小さくなった辺りで、広人はベットに体を横たえDORSを起動させた。




