SEVEN 04
「えっ?何ですか?ちょ、ちょっとよく聞こえないんですけど!」
爆音のためにSEVENの声が聞き取りにくかった。
悪路を走る車に乗っているかのように小刻みに体は揺れ、時折舌を噛みそうになるほど大きな衝撃が体を襲った。
迷彩服を着込んだSEVENは指で広人に指示を出した。
「出来ませんよ、いくらなんでもこれは無理ですって!」
笑顔を見せながらSEVENは広人に近寄ると、彼の体を固定していたシートベルトを外し、無理やり立ち上がらせた。
「飛び降りた後はプログラムが全部やってくれるから心配ない。良い空の旅を!」
そう言いながらSEVENは広人を扉口に立たせたかと思うと、彼の背中を思い切り蹴り飛ばした。
「ふざけんなよ!」
軍用セスナの扉から広人は空中へと突き落とされた。
高度はどれくらいあるのだろうか、地平線の両端が弧を描いている様子がはっきりと見て取れた。
風圧でゴーグルがめり込み、鈍い痛みが広人の顔面を襲う。
気づけばSEVENが目の前にいて、自分と同じ態勢をとるように広人に合図を送っていた。
空中をもがいていた広人は見よう見まねで体を大の字に広げた。
「気持ちいいでしょ。仮想でこの再現力、病み付きになるよね」
イヤホンから雑音が入り混じったSEVENの声が聞こえてきた。
「〇◇@#〇〇△◎◇!」
自分でも理解できない叫び声を上げた途端、広人は背中に大きな衝撃を感じた。
背中に付けていたパラシュートが開き、全身を襲っていた風圧が急に収まっていた。
「どう?これ軍用の訓練シュミレーターなんだけど、リアルでしょ」
そう言われてみても広人は過去にパラシュート体験をしたこともなければする予定もなかった。
高すぎたおかげで高所恐怖症であることを忘れていた広人だったが、地面が近づくにつれてその事実を思い出したにもかかわらず、緊張は全く感じなかった。
衝撃と降下の速度に逆らうことなく、地に足がつくと体は自然と受身を取った。
着地と同時にプログラムが終了したのか、地面に横たわった広人はしばらく動けなくなった。
数メートル先に着地したSEVENが走り寄ってきて広人のそばで膝をついた。
「もう一回飛んでみる?」
「い、いいです…もう、遠慮しておきます…」
反論する気力はとうに失せていた。
恐竜を狩る手伝いをさせられたあとに無重力体験、ゾンビ軍団に追いかけられた後は高速道路でのカーチェイス。現実世界では絶対に遭遇することのない体験を広人は詰め込まされていた。
「すごいよね」
SEVENはそう言いながら、遠くを見つめていた。
「いつか現実と仮想の境界が消えてしまうんだろうか…なんて事をね、考えたりするのさ」
彼女は腰を上げると、広人に手を差し出し彼を立ち上がらせた。
「仮想世界にはね、夢や希望もあれば闇と絶望もある…君にはそれを知ってもらいたい」
SEVENの顔から笑顔が消えた。




