IMMORTALS 07
「改めまして、私マグナスキルオンラインの開発主任をしております、柏原と申します」
広人達を前にしてドワーフ姿の柏原は深々と頭を下げた。
萌木は慌てて柏原の元に向かった。
「先輩が来る必要はないと思うのです」
なだめるように萌木を手で制すると、柏原は話し始めた。
「お手伝いをお願いする以上、本当の事を話しておかなければなりません。時間がないので簡単にですが…」
柏原と萌木は大学時代に自立思考型プログラムの研究開発を行っていたという。いわゆる人工知能プログラムと呼ばれるものである。ゲームは元より企業や公共機関の管理システムをサポートする目的で研究が進められ、大幅な人件費削減につながるものとして各方面から注目を浴びていた。極秘裡に開発が進められていたのだが、人工知能には膨大な情報量が必要となった。人間は成長過程において様々な経験や知識を得ていくのだが、それと同様の知識情報を積ませるために世界規模のグローバルネットワークに接続をさせたことがそもそもの発端となった。
もちろん本体そのものをネットワークに接続してしまえば数多くの脅威に晒されることになる。その為に小型の人工知能プログラムを作成し情報収集を行わせることになった。
「ミツバチみたいなものです。色んな所に飛んでいって必要量の情報を集めてから、元の巣である本体に戻るという仕組みです」
ここで問題が起きた。仮想ネットワークでの試験では、情報収集の後に問題もなく本体へと戻った小型AIプログラムだったが、現実のグローバルネットワークに放たれたうちの1割が戻ってこなかったのである。
「初めはセキュリティプログラムによって破壊もしくは消滅させられたと思っていたのですが、実際は“捕獲”されていたんです」
急遽計画は中止となり、情報収集の手段は別策へと移行することになった。
「捕獲、ってそんなことが出来るんですか?」
「隔離と言ったほうが正しいですね。上級プログラムに携わる者以外には単なる不正プログラムにしか見えないものです」
「隔離した人間が“IMMORTALS”というわけですか」
広人の言葉に柏原は否定することなく頷いた。
「小型AIは人間ではありません。目標となるプログラムへは擬態化を行い侵入していくため、IPアドレスといったものが不要になるのです。無論情報収集が目的でしたから、侵入した先のプログラムに何の危害も加えることはありませんでした。もちろん侵入とはいっても、普通の人が公開されたウェブサイトの情報を見る程度のものと私達は予想していたのです。しかし小型AIは順応という形を取り、我々が思うよりも深い情報の海へと潜って行ったのです」
広人の隣では薫とリナが目を白黒させていた。
「IMMORTALSが情報収集プログラムを入手しているとの話は、直接彼等から聞かされたものです」
「内部分裂による密告ですか?」
大きく首を縦に振った柏原に代わり、萌木が説明を続けた。
「穏健派と革命派と言ったほうがよいかもなのです。革命派は私達のプログラムをさらに進化させ、悪用し始めたのです。穏健派はそんな彼らの行動を見過ごすことが出来なかったため、元々の作成者である私達に連絡を取ってきたのですよ」
「して私達は何をすれば良いのだ?」
しびれを切らしたカナは結論を問いただした。
「情報収集プログラムの基盤には“帰巣本能”があります。今回のアップデートでその帰巣本能を刺激されたプログラムは必ずここにやって来ます。それを追跡し捕獲するために皆さんのお力を貸して頂きたいのです」




