IMMORTALS 06
遠くの方で微かに戦闘のような物音が聞こえ始めた。
地下迷宮入口で一度引き返した後に装備を整え戻ってきた人々か、スタート地点にいたプレイヤー達がパーティーを組み迷宮探索に乗り出したものと思われた。
いずれにせよこの場での長居は無用だった。一般プレイヤーに先んじてIMMORTALSに圧力をかけ、牽制しておく必要があった。混乱と被害を防ぐ為である。とは言え広人達も一般のプレイヤーと何ら変わりはない。萌木がIMMORTALSと関わりを持っていて、その身内である広人達を頼りにすることは当然の成り行きとは思えたが、よく考えれば自分達も被害者となる可能性も大きい。
広人はシステムメニューを開き装備やアイテムの確認をしたあと、ステータスやスキルリストなどアップデートによって変化したものがないかを確認し始めた。それに習うように亜紀や薫たちもメニューを開き始めた。
明らかに異常があったのはマップ画面だったが他にも無いとは限らない。
「特に変わったところはないよね」
自分のメニューウインドウを閉じながら亜紀が言った。
「ログアウト出来るからひと安心!」
この世界からの逃走手段が無事であることから、最悪の事態が起こったとして脱することは出来た。
「あれ?」
疑問の声を上げた薫に広人は視線を向けた。
「カンストって50じゃなかったっけ?」
その言葉を確認すべく広人は再度ステータス画面を開いてみた。
現在のレベルは60になっていた。
「わっ!なにコレ!?」
広人と同様にメニュー画面を開いた亜紀は驚きの声を上げた。
「アイテムリストがすごいことになってる…」
その言葉の根拠を探るべく、広人とリナ、薫はそれぞれのアイテムリストに目を向けた。
「神話級って何?」
アイテムリストには、獲得した覚えのないアイテムが追加されていた。広人はアイテムの一つを選択し詳細を確認してみた。片手剣の説明にはグレード表記が神話級と書かれてあった。ノーマルをクラス「1」とした場合、広人が所有していた武器でグレードが最も高いのは、ユニークと呼ばれるクラス「4」に属するものである。神話級のクラスは「6」に相当していた。
「お着替えしてみるなり!」
リナはそう言うと装備を交換し始めた。
全身の各部が光の輝きに包まれたあと、紫がかった防具がリナの体を覆っていた。
「これってチート…だよね…」
複雑な顔で亜紀は言った。装備集めがゲームの楽しみの一つである亜紀にとって、意図的に与えられたアイテムは好ましいものとは言えなかった。
「というより…戦えってことだよね…これ」
血の気の引いた顔色を見せながら薫はため息をついた。
「そういうことになる…」
「GM総出でやっつけちゃえばいいのに」
面倒になったのか薫は不満を漏らした。日常生活での疲労が蓄積しているのか、彼女がそう言い出すのも無理はなかった。
「そう出来ない理由があるんだと思う」
広人の言葉に薫はがっくりとうな垂れた。
「いやホント申し訳ない」
聞き慣れた人物の声と共に、広人の隣に背の低いアバターが姿を現した。
ドワーフ族の外見をした彼は、萌木の大学の先輩でありマグナスキルオンラインの開発主任である。




